ssh1020 無関係で無責任で無知である者が一番声高になれる [社会]
<2017>
<ssh598再録>*初出は2013年ころです。
今回は、クレーマーの心理について考えてみたいと思います。
モンスターペアレントとか、ネット界あるいは政財界に生息するやたらと他人を口汚くののしる人々も、クレーマーと同種とお考えください。
なぜクレーマーはクレームに走るのか、という考察は省かせて頂きます。
私がここで考えてみたいのは、
クレーマーがクレームをつけるためには、どういう条件があった方が有利であるか
であります。
例えば、私が座っていた椅子が突然壊れて、私がケガをしたとします。
私は誰にクレームをつけられるでしょうか。
この椅子の素性によって、相手は違ってきます。
自分で設計して自分で組み立てた椅子の場合・・・これはどうしようもないです。自業自得。
自分で設計して他人に組み立ててもらった椅子の場合・・・設計に問題がなければ、組み立てた相手に文句が言えます。しかし設計に問題があれば、組み立てた人の責任とは言いにくい。クレームをつけられるかどうかは、慎重に考えた方が良さそうです。
他人が設計して自分が組み立てた椅子の場合・・・上記と同じような慎重さが必要でしょう。
設計も組み立ても他人の場合・・・これはかなり気楽にクレームがつけられます。
つまり、その椅子の政策に自分が関わっていると、クレームはつけにくくなります。関わりが少ないほどクレームはつけやすい。自分が関わると、自分の責任が発生します。
加えて言えば、自分が使った時間が長くなると、使い方の問題で寿命が縮んだという可能性が出てきます。ここでも自分との関わりが強くなるほど、クレームはつけにくくなる。
さらに言えば、使い方の難しいものと、そうでないものでは、また様子が違ってくる。デリケートな素材を使っているのに、そのへんの「使用上の注意」があまりきちんと伝えられなかったら、客としては怒りたくなります。
見ず知らずの業者が設計製作して一見の客として店で買った新品の椅子が壊れたら、たぶん100人が100人クレームをつけるでしょう。何せその椅子と自分の関わりはほぼゼロですから。
すると、クレーマーにとって有利な条件とは、次のようなものでしょう。
その件となるべく関係がないこと。
その件になるべく責任がないこと。
その件についての知識がなるべくないこと。
つまり、無関係で無責任で無知であるほど、クレーマーは有利だということです。
ただ、ここには大きな落とし穴があります。
クレーマーがクレームをつけるのは、自分の利益のためです。
しかし、利益の絡むことに対して、関係も責任も知識もないということは、まずありません。
前述の椅子の例にしても、見ず知らずの業者が設計して一見の客として買った椅子だとしても、その椅子を選んで買ったのは自分です。全く無関係で無責任で無知とは言えません。
「アナタねえ、こんなすぐに壊れる椅子を売ってどういうつもりなの?こんな粗悪品作って、責任どう取ってくれるのよ。使い方が悪い?そんなことわかるわけないでしょ。説明書に書いてある?こんな小さい字で書いてあって気がつく訳ないでしょ。そもそも椅子に座る前に説明書を読む人なんかいるの?説明書をよく読んでから座って下さいなんて、ワタシ聞いてないわよ。こっちは客なんだから、難しいことまでわかるわけないでしょ。・・・」
クレーマーは、クレームを成功させるために、自分をなるべく無関係で無責任で無知な人間であると主張します。
そして、これがクセになると、なるべく無関係で無責任で無知な人間になろうと努めます。ひとことで言えば、なるべくバカになろうとするのです。
無関係で無責任で無知な人間は、短期的にはクレームで利益を上げることができます。
しかし、長期的には、人間がどんどん腐って行きます。当然です。なるべくバカになろうと努めるんですから。
クレーマーは、自ら堕落に努め、不可避的に自滅するのです。アーメン。
クレーマーとはちょっと違いますが、世の中にあふれる他責的な言説も、みんなこれです。
学校教育に関して無関係で無責任で無知が人間(例えば財界の人)が、これでもかと学校を叩きます。スポーツでも外交でも芸術でも政治でもなんでも、もっとも声高に威勢良く非難をする人間は、その件に対して関係も責任も知識もない人間です。
当然、そういう人たちも、不可避的に自滅します。南無阿弥陀仏、チーン。
ものごとに対して、いささかなりとも関係を持ち、いささかなりとも責任を引き受け、わからないことは調べる。そういう姿勢を持つと、やたらとクレームをつけたり、声高に他者を罵ったり、バッサリ斬るような言い回しはできなくなります。
で、そういう人の方が、共感してもらえるし、信頼もされるしで、自分の求めていることを実現できる。その方が、クレームで目先の利益を奪うより、結局はいいことが多いのですよ。
2017-10-29 21:13
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