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ssh1026 中耳炎と抗生物質と「みんな同じ」幻想(1) [三題噺]

<2017>
<ssh181〜4の連続記事加筆&再録>
*初出2008年

 みなさん、カゼをひいた時、余計な症状を併発しませんか?
 私の場合、わりとよく中耳炎か副鼻腔炎になります。
 そうなると、抗生剤(抗生物質)で治療することになります。

 中耳炎とか副鼻腔炎(ちくのう)とか聞いて、「わ〜怖い!」と思う人は少数でしょうね。どちらも現代の先進国に暮らしている分には、大した病気じゃありません。町医者にかかってクスリをもらえば数日で回復します。
 しかし、かつては本当に怖い病気でした。 この日本でも、戦前は年間十万人以上の人が中耳炎で命を失っていました。中耳の炎症が悪化して、脳炎を起こしてしまって。
 当時、中耳炎を確実に治療する方法はありませんでした。中耳炎に限らず、体内に細菌が入って起こす炎症というのは、お手上げだったのです。

 体外なら、細菌を殺すことは難しくありません。加熱なり乾燥なり消毒薬なり、いろんな手があります。しかし、体内ではそうはいかない。当時の医療では、患者を痛めることなく体内の細菌を殺す方法はありませんでした。栄養を取って静養して、自然回復を祈るくらいしかできなかったわけです。
 ったって、貧しい人なら栄養も静養もムリでしょうし、ましてや子どもだったら、もうお祈りするくらいしかなかったでしょう。

 カゼは万病のもと、とよく言われます。カゼをこじらせて命を落とすというとき、すぐに思い浮かぶのは肺炎です。これは今でも怖い。特に乳幼児。
 しかし、それ以外にも、かなりの人が中耳炎のような感染症で亡くなっていたものと思われます。副鼻腔炎についてはよく調べてないのですが、たぶん悪化すれば命に関わったものと思われます。何せ首から上の感染症ですから。
 細菌による感染症である中耳炎や副鼻腔炎があまり怖くなくなったのは、もちろん、抗生物質のおかげです。(お医者さんは「抗生剤」と呼びます。)
 私のような中年以上の年代なら、ペニシリンが青カビから発見されたエピソードはたぶん誰でも知ってます。
 抗生物質は、患者の体内を痛めずに細菌を殺してくれます。これは本当に画期的な発明でした。

 よく医学の進歩と言われますが、そのかなりの部分はクスリの進歩です。現代の医師は、おびただしい種類のクスリについて、効能・副作用・使用上の問題点その他色々、事細かな知識が膨大に頭にインプットされています。
 私のような、さほど丈夫でもなくて、ちょいちょい中耳炎だの副鼻腔炎だのを患う弱っちいヤツが一応フツーに社会生活をしていられるのも抗生物質を始めとする進歩したクスリのおかげであります。
 もし私が戦前に生まれていたとしても、たぶんあの戦争では役に立たなかったでしょうね。兵隊さんになる前にカゼひいて脳炎であの世行きですわ。ホント、戦後に生まれて良かった。

 ところが、その後、現代医療の革命ともいうべき抗生物質の効能を脅かすものが登場します。
 耐性菌です。
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