ssh1028 中耳炎と抗生物質と「みんな同じ」幻想(3) [三題噺]
<2017>
<初出2008>
除菌というと洗剤か消臭剤みたいですが、体内の菌を除菌するというのはそんな生易しいものじゃありません。1匹でも残っていれば、菌は再び増殖します。
除菌するには、皆殺しあるのみ。中途半端な攻撃は禁物、集中砲火を切れ目なく立て続けに浴びせて、1匹残らず確実にトドメをさします。
ランサップ800が2種類の抗生剤を用いるのは、全滅させるための集中砲火です。1種類では死なないしぶとい菌も、2種類同時攻撃には耐えられません。1週間連続服用するのは、切れ目なく立て続けに攻撃して、息を吹き返すヒマを与えないためでしょう。
私の除菌治療にあたって、担当医が私に注意したのが、絶対に勝手に服用をやめたり回数や量を減らしたりしないということでした。
抗生物質の服用を中途半端に止めると、非常にマズいことが起こります。
例えば、菌が90%死滅したところで、勝手に服用をやめたとします。90%も減れば、症状はかなり治まっているはずです。
しかし、残った10%というのは、それまでの抗生物質攻撃に耐え切った菌です。こいつらは、死んだ菌よりもタフです。今度はそのタフな菌が増殖します。こうなると、症状がぶり返したところで再び同じ抗生物質を飲んでも、もう効きません。もっと強いクスリを、もっと長期間服用しなければならなくなります。
抗生物質の服用を中途半端に止めるのは、一番タフな菌だけを選んで残す行為です。
かつて日本人の最大の死因であった結核菌も、現在は抗生剤で治療できます。
ただし、強力抗生剤を4種類、長期に渡って服用し続けるという、抗生剤の総力戦のような非常に大変な治療です。
4種類同時攻撃を長期継続すれば、結核菌を制圧できます。しかし、これが例えばある1種類だけをしばらく服用したりすると、菌がその抗生剤に耐性を持ちます。そうなると、その後4種類で総攻撃をしかけても、そのうちの1種類には耐性ができてますから、3種類で攻撃しているのと同等の効果しか発揮できず、制圧に失敗してしまう可能性が大です。
抗生剤による治療というのは、菌を全滅させてこそ成功です。
処方されたクスリは、きっちり飲み切るのか基本です。
中途半端に止めると、もっと強いクスリのお世話になるハメになります。悪くすると治らなくなります。
昨今、医療への不信感・不安感をあおる情報が多く流れています。
しかし、ほとんどの医療従事者は誠実です。
一部の問題行動だけで誠実な医療人まで疑うのは愚かなことです。
例えば、カゼくらいで抗生物質を処方するのは問題だという指摘があります。確かに抗生剤はカゼを治す力はありません。カゼそのものを治療するなら、抗生剤は不要です。
しかし、カゼは細菌による感染症を併発しがちです。私のように、過去に中耳炎や副鼻腔炎を何度も併発した人間がカゼで受診したら、たいていの医師は抗生剤を処方するでしょう。その方が結果として、より弱い抗生剤の服用だけで済む可能性が大です。
医師の処方は、非常に様々な要因を総合的に判断して行われています。シロウトがかじりかけの知識であれこれやるのは危険です。どうしても納得いかないなら、直に医師と話し合うべきでしょう。
ところで。
中耳炎は耳の病気ですから、音の聞こえにも影響を及ぼし得ます。音が聞こえにくいとか。
それは当たり前ですが、私の場合、その影響の出方が実に妙というか、ヘンテコというか、実に不快極まりないんです。
何でなのかよくわかりませんし、他にもこういう人がいるのかどうかもわかりませんが、私は中耳炎になると、あらゆる音の音程が低く聞こえるようになってしまうんです。
2017-10-29 21:17
nice!(4)
トラックバック(0)