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ssh1046 同質化・同調圧力〜小論キーワード [小論キーワード]

<2017>
<ssh426再録>

 今回の小論キーワードは「同質化」と「同調圧力」。
 この2つは、特に若い世代が社会生活(学校生活を含む)で感じているストレスを考察するのに非常に有効です。

  実はどちらの言葉も、手元の辞書には載ってません。
 同質というのは、文字通り「質が同じ」ということ。
 「これらは同質の問題だ。」と言えば、これらの問題は何らかの違いがあるように見えても、実質的には同じような問題であるということです。学校だと「学習面の問題と生活面の問題は得てして同質だ。」なんて言い方があります。どちらも根は同じ、ということです。

 同質化というのは、言葉とおりに捉えれば、同じようなものになるという意味です。
 ただし。
 小論文のテキストでは、この言葉は大半が批判的な意味で使われます。つまり好ましくない同質化。

 例としては、
 ・グローバル化は、文化の同質化を伴う。
 ・画一的なカリキュラムは、生徒の個性を奪い、多様であるはずの生徒に同質化を促す危険がある。
 ・どの地方都市へ行っても全国チェーン企業の看板が立ち並び、風景が同質化している。  
などなど。
 小論テキスト的には、同質化というのは、没個性とか、多様性の衰退とか、オンリーワンを認めないという感じの文脈で用いられることが多いようです。

 教育関係だと、学校というのは生徒を同質化させやすいという指摘がよく行われます。
 同じ地区の同じ年齢の人間が集まる場である以上、どうしても同質化されやすい。
 しかも学校は、一定のカリキュラムに従って、1人の教員が40人かそこらの生徒に向かっている。どうしても「みんな同じ」にやろうとしがちです。
 みんなと同じようにするというのは、社会で生きていく上で大切なことでもありますが、度を超すとただのone of themとしてしか生きていけなくなります。
 学校のクラスは同質集団である、などとよく言われます。
 一方、「同調圧力」というのは、同質集団へ溶け込むことを強く求めるプレッシャーと考えて下さい。

 クラスが同質集団であれば、クラスへの同調圧力とは、クラスの中に溶け込まなければならないという圧力のことです。
 もちろん、クラスに溶け込んでいること自体は何ら悪いことではありません。仲良きことは美しき哉。
 ところが、これも度を超すと問題です。

 本当は嵐なんか好きじゃないのに、クラスの女子がみんな「嵐ってサイコー!」と盛り上がっていると、自分だけ「え〜あんなのどこがいいの?」とは言い出しにくい。ヘタするとシカトされる危険もある。だから本当はキライだけど、一応好きなフリをして付き合っている。
 こういうのは、同調圧力に負けていると言えます。恐らくこの人は相当なストレスを感じているはずです。そのうち何かトラブルが発生するかもしれません。
 悪くすると、イジメに発展する可能性もある。

 同調圧力が厄介なのは、単純に善悪や白黒をつけにくい関係から発生していることが多いことが一因です。
 「嵐サイコー!」と盛り上がっている子たちには、何の悪意もないのでしょう。で、あんなステキなアイドルをキライな人間なんて信じられない、そりゃ世の中は広いからどっかにそういうヘンな女もいるかもしれないけど、まさか自分の身近にそんなヘンな女がいるはずないと、しごくinnocentに思っているだけなのかもしれない。
 それなのに、というか、そうであるからこそ、「え〜?」と思っている人間は、壮絶なプレッシャーを感じる。屈託なく信じている人間に「え〜?」とは言い出せない。
 プレッシャーをかけている側には、自分たちの無垢で当たり前の言動行動が、他者に負担を強いているなんて想像もつかない。

 ではプレッシャーを受ける側は一方的に被害者なのかと言えば、そう言えるとも限らない。
 屈託ない人たちには、屈託なく「え〜?」と言えば、多少の軋轢はあっても、大したトラブルにはならないのかもしれない。受け取る側が過剰に警戒しているだけなのかもしれない。
 実際、プレッシャーを感じやすい人と、そうでない人というのはいます。

 だから、どっちが悪いとか、何が悪いとか、そう簡単には言えないわけです。

 こういうことがスタート地点にあると、いじめ問題はものすごく対応が厄介になります。
 というより、いじめのきっかけは、大体が断罪しにくいものです。それがこじれて問題になる。
 加害者に厳罰を、とinnocentに主張するのは学校教育の部外者ばかりです。当然でしょう。学校の実態を少しでも見ていれば、そんな屈託ない物言いが絶対できません。


 同質化と同調圧力についてのポピュラーな指摘を紹介しておきます。(事実という意味ではありません。こういう指摘をよく目にするという意味です。)

 ・同質集団は、同調圧力をかけやすい。
 ・学校は、同質集団を作りやすい。
 ・日本は同質化を好む傾向がある。
 ・日本社会は同調圧力が強いと言われている。
 ・同質集団においては、細かい差異が目立ちやすい。
 ・同質集団は、異質なものを受け入れる寛容さが乏しい。
 ・得てして男性よりも女性の方が同調圧力をかけがちである。
 ・女子生徒のグループでは同調圧力による仲間はずれやいじめが起きやすい。
 ・同質化された集団では、個性や創造性は生まれにくい。
 ・経済発展は同質化を招きやすい。
 ・国際化は個別の国や地域の固有の文化を滅ぼして世界全体を同質化する懸念がある。
 ・同質化された集団は一般的に脆弱(ぜいじゃく)であり、変化に弱い。
 ・上の裏返しで、社会や環境が安定している時は、同質集団は働きが効率的で発展が速い。
 ・自然界の種は実はあまり同質化されておらず、一定数の変種や変わり者が存在している。これらのヘンな個体は、一般の個体が全滅するような環境変化でも生き残る可能性が高く、これによって種の絶滅が防がれている。
 ・過度の同調圧力はいじめなどの深刻な問題を発生させる。
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