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ssh82 「、」のいらない語順にする〜作文技術(3) [作文技術]

<2007>

 ssh80の続きです。
 今回は、「、」つまり読点(いわゆる「てん」)のお話です。

 いきなり結論から言ってしまうと、「、」は、できるだけ少ない方が文として上出来です

 次の文は小学校低学年のころに見た某学習雑誌の練習問題の例題。
 設定は、どこぞの警察から、指名手配のギャングとその子分の特徴を記した手紙を読み、その内容を理解するというもの。(よくこんなもん、いまだに正確に覚えているもんです。人間の記憶はヘンテコだ。そういう引用ですので、身体障害ネタになっているのはお許しください。)

 文面は、こう。
 「ジムは片目で、片足の子分を連れている。」
 で、その横に、2枚の絵が書いてある。
 ①は、隻眼の男性と、足が一本の男性のコンビ。
 ②は、健常者の親分と、隻眼&足が一本の男性のコンビ。

 問題そのものは「正しいのは①」と選べばそれでおしまい。この問題は、「、」の重要性を学ぶ問題なんでしょう。

 もし、この文が 「ジムは、片目で片足の子分を連れている。」なら、今度は②の意味になる、と。

 で、ここからが本題なんですが、そう考えると、この問題の文、「、」の位置だけで意味がガラリと変わってしまう。キツい言い方をすると、この文は「、」頼み。

 もし、何かのトラブルで「、」が消えて「ジムは片目で片足の子分を連れている。」という文面で送信されたら、①か②かを選ぶことは完全に不可能。そう考えると、この文は、少々ヒヨワです。

 ところで、日本語という言語は、語順(正確に言うと文節の順序)に割合と大らかです。
 I love you. にはこの語順以外ないけれど、「僕はあなたを愛している。」でも「あなたを僕は愛している。」でも「僕は愛している、あなたを。」でも、意味は同じ。

 先ほどの例で言うと、次のようにいかえることもできます。
 「ジムは片目だ。彼は片足の子分を連れている。」
 「片足の子分を連れているジムは片目だ。」
 「ジムは子分を連れている。ジムは片目で、子分は片足だ。」
 「片目のジムは片足の子分を連れている。」
 以上の文は、仮に「、」や「。」が消えたとしても、
 誤解される可能性はほとんどありません。
 語順を工夫すると、「、」はかなり減らすことができます。
 
 冒頭で、「、」は少ない方がいいと言いました。
 これはなぜかと言うと、
 どんなに語順を工夫しても
 どうしても「、」に頼らないといけない時があります。
 そういう「、」は、すごく重大です。
 しかし、文全体あっちこっちに「、」がバラまかれていると、そういう決定的に重大な「、」が影の薄いものになってしまうんです。

 で、そう思ってssh79の教育再生会議の文を見て下さい。
 やたらと「、」が多いのにお気付きでしょうか?
 あの文が不正確になったもう一つの理由は、これです。

<ご注意>
 ここまで「、」の話を延々として参りました。それにしてはこのブログの文章もあちこち「、」だらけであります。しかしこれは意図的なものです。
 ネットやメールでは「高速読解」向きの文面が求められます。一般の書籍や原稿用紙に書く文章とは求められる文体がまったく異なります。
 私はブログ上ではあえて以下の2点を意図的に多用しています。

 ①「、」をマメに打つ。
 ②段落をマメに変える。

 ブログやメールの文体は小論文の文体とはまったく性格の異なるものです。
 その辺は誤解のないようにお願いいたします。
 (以上ここまで「、」を一つも打たずに書いてみました。)

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