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ssh85 修飾語句を減らす〜作文技術(6) [作文技術]

<2007>

 不正確な文の例としてあげた、例の教育再生会議の報告文。
 私はこの文の決定的な問題点は、修飾語句が不明確であることだと指摘しました。
 つまり、どこからどこまでが「必要とされる力」を修飾しているのかが、まったく不明であると。

 ただ、似たような例は、かなりよくあります。
 その理由は、恐らく、日本語の修飾−被修飾の語順にあるのだと思います。

 日本語では、修飾語句は、被修飾語句の前に置きます。
 これが英語などのヨーロッパの言語だと、逆向きもあります。有名な例をあげますと、

 「これはジャックの立てた家に寝かせた麹を食べたネズミを殺した猫をいじめた犬を突き上げたねじれた角の雌牛の乳を絞った独りぼっちの娘にキスしたボロをまとった男を結婚させたツルツル頭の坊さんを起こした早起きの雄鶏を飼ってる麦の種まくお百姓」

 って、なんじゃこりゃ?

 すみません、これはわざと、読点も区切れもない状態で書いてあります。(ついでに言うと、出典元はひらがな表記です。)
 が、それにしても、この句の主役は、最後の「お百姓」です。そこまでは、ぜーんぶ、修飾語句。
 ま、これは元来が言葉遊び歌たるマザーグースの訳文ですから、必要以上にグチャグチャしてるわけですが、それにしても、主役は最後まで登場しません。

 原文は、これです。(不公平ではありますが、何せ外国語なんで、こちらは段落分けして書きます。)

 This is the farmer sowing his corn
 that kept the cock
 that crowed in the morn
 that waked the priest all shaven and shorn
 that married the man all tattered and torn
 that kissed the maiden all forlorn
 that milked the cow with the crumpled horn
 that tossed the dog
 that worried the cat
 that killed the rat
 that ate the malt
 that lay in the house
 that Jack built.

 それぞれの先頭のthatは、例の「関係代名詞」です。語順は日本語と正反対。
 主役のお百姓=farmerは、先頭に登場します。あとの残りが、修飾語句。

 断っておきますが、私は日本語が論述に向かない言語だとか、英語は優れているとか、そんなことを言うつもりはサラサラありません。
 ただ、日本語の修飾−被修飾の語順がこうである以上、言い換えると、どうしても主役たる被修飾語句が脇役たる修飾語句の後ろに来る以上、修飾語句をあまり長くするのは得策ではありません。
 主役の前にあんまりたくさんの脇役を並べてしまっては、主役はかすんでしまいます。

 仮に、先ほどの「お百姓さん」に対して、私が手紙を書いたとしましょう。
 すると、こういう文になります。

 「私は、ジャックの立てた家に寝かせた麹を食べたネズミを殺した猫をいじめた犬を突き上げたねじれた角の雌牛の乳を絞った独りぼっちの娘にキスしたボロをまとった男を結婚させたツルツル頭の坊さんを起こした早起きの雄鶏を飼ってる麦の種まくお百姓に、手紙を書きました。」

 手紙を書いた相手が誰なのか、いつまでたっても分かりません。

 これが英語なら、
 I wrote a letter to the farmer sowing his corn
 that kept the cock
 that crowed in the morn
 that waked the priest all shaven and shorn(以下メンド臭いので略)

 とにもかくにも、私が手紙を出した相手が誰なのかは、すぐにわかります。

 修飾語句を欲張るのは、日本語の作文では避けた方が無難です。
 

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