ssh200 NPO POSSE 紹介 [おすすめサイト]
<2008>
先日、某社の小論文研究会に参加してきました。
昨年の大学入試小論文で非常に目立ったのは、格差と貧困に関するテーマだそうです。
これは難儀なことです。
小論文とはいえ入試は入試です。テストです。
テストというのは、あらかじめ正解を想定しています。
小論文入試にしても、「こういう答案を書いてくれれば合格」というようなテーマを通常は出します。
しかし、格差や貧困は現在進行形の、まさにリアルな社会問題です。模範解答なんて、まず想定できません。
どうやら大学入試小論文の世界は、そこまで行ってしまったようです。つまり、ホンモノの社会問題に真正面から立ち向かえ、と。
格差・貧困問題を学ぶ上で、格好のサイトがあります。
NPO POSSE
労働相談を中心に、若者の「働くこと」に関する様々な問題に取り組むNPO
というのがPOSSEの自己紹介です。
労働問題に取り組みのは、本来は労働組合の使命です。しかし、既存の労働組合は現組合員=正社員の問題に走りがちで、非正規雇用者やフリーターは軽視されています。
POSSEが一番重視しているのは、非正規雇用やフリーター・ニートなどの問題です。それは、この問題でもっとも煮え湯を飲まされている若者達を支援するということです。
私がPOSSEの活動を評価する一つの理由は、彼らの活動が割と肩ひじを張らずに行われているからです。
この種の活動は、ヘンに力むとかえって反感を買うし、第一疲れます。疲れる活動は長続きしません。
特に評価しているのが、このフリーターの有給休暇獲得です。長いけど引用します。
◆◆ ある日、下北沢の駅前でカフェイベントの宣伝をしていたときのこと。ドレッドヘアの男性がのそのそとスタッフに近づいてきました。騒音の苦情かな?と身構えていると、彼は開口一番、「有給休暇ってバイトでも取れるんスか?」とひとこと。実は労働相談だったのでした。スタッフの「フリーターでも有給休暇はとれます」という宣伝文句を聞いて、「バイトで有休?マジで?」と気になって声をかけてくれたということでした。
彼は、都内の飲食チェーンで働いているという20代のアルバイト。事務所でゆっくり彼のバイト先の状況を聞きながら、法律に基づいて、有給休暇の取り方をアドバイスしました。
アルバイトでももちろん有給休暇を取ることはできます。有給休暇は休日以外に休んでも、バイト代が全額支払われるという仕組みです。半年以上週1日働いていれば1日、週2日で3日、週5日では10日間取れます。1年ほど週6日間働いている彼が取れるのは、ざっと10日です。「10日か~」「全額もらえるんすか。」「これ知ってるとおトクじゃないっすか。」「早速明日言いに行くっす。」 新鮮な驚きの声を連発しながら、彼は足取りも軽く帰って行きました。
その翌日、彼は「バイトでも取れるんすよ。有給取らしてください」と店長に直談判を始めました。ところが店長は、「そんなことできないよ。」の一点張り。彼がしつこく粘っても、応じるそぶりを見せません。
しかし、ここまでは既に「想定内」でした。打ち合わせ通り、次に彼は店長の上のマネージャーに連絡しました。 「有給取りたいんすけど、法律で決まってるんすよね。店でダメって言われたんすけど、ここのチェーンは法律守らないことなんてないっすよね?もしムリなら、もっと本店の方にも連絡しますけど…」
有名なチェーン店であれば、社会的な評判を気にします。そのため、このような働きかけが効果を持つことは少なくありません。
それから、マネージャーの返事待ちが続きます。
ちなみに、使用者には一応、時季変更権という権利があります。労働者の指定した日が都合が悪い場合、他の日に有給を与えるという権利です。ただし、ちゃんといつ頃なら取って大丈夫なのかを、指定しなければいけません。それに、あまりに不当な理由で、上司が勝手に変更してしまうこともあります。そもそも、有給休暇自体がうやむやにされてしまうケースも少なくありません。もちろん、そのときにはそれなりの対応の仕方はあります。
さて、その間は、彼のがんばりどころでした。いつもどおり働きながら、店長に会うときは強気の態度で通し、 「オレ道端で労働問題のNPO見て、話したんすよ。」「法律の本も読んだっす。(注:POSSEで、自治体発行の労働法の無料解説本を差し上げていました。)もし何だったら、持ってくるっす。」と言い続けました。
そして2週間後、会社から連絡が。答えは「取って良いです。」とのことでした ◆◆
私は、これは実に知的な労働闘争だと思います。
この彼は、職場と大きな波風を立てる事なく、法的正義を実行させました。
既存の労組も、少し見習った方がいいかも。