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ssh388 字数調整のテクニック〜作文技術(8) [作文技術]

<2010>

 

 小論文に限らず、記述式のテストには字数の制限された問題がよく出ます。「下線部はどういうことか。30字以内で説明せよ。」なんて具合に。

 字数が少ない時はあまり問題ないんですよ。そういう時は相手も正解を想定しています。英語だったら、本文中に正解にあたる英文があって、それを訳すとだいたいその字数になる。

 ところがこれが100字とか200字とかいうことになると、想定される正解もなくて、なかなか面倒な話になってきます。

 

 字数が増えると、解答欄もただの罫線や枠じゃなくて、原稿用紙みたいになっています。中にはご親切に字数がわかるように数字をふってあるものもあります。いや~ありがたい。ありがたいんですけど、これが時々困るんです。

 

 字数制限のある原稿用紙形式の問題で、答案がある程度出来上がってから「あ、ここの句読点がおかしい」とか「いけね、送り仮名が違ってる」とか「ん~、この言葉遣いはよくない」とか、細かい修正をしたくなる時って、ありませんか?

 こういう時に、原稿用紙形式はすごく困るんですよ。

 文章を修正したら、修正前と字数が変わるのがフツーです。なのに、原稿用紙だとそれができない。

 答案の中途の5文字を修正したいと思っても、それが4文字や6文字になるように修正するわけにはいかない。そんなことしたら空欄か重複が出来てしまう。原稿用紙の使い方が守られていない答案はマイナス評価です。

 PCやケータイなら自動的に詰めるなりずらすなりしてくれますけど、原稿用紙はそういうことをしてくれません。

 だからって、大量に書いてある後半部分を全部書き直すような時間があるはずもない。

 

 後半部分を書き直す事なく、必要な部分だけを、ピタリと同じ字数になるように修正したい。

 そういう経験、アナタないですか?私はもう、頻繁にありました。


 さらに。字数制限がある問題の場合、答案は制限字数の90100%に納めるのが基本です。

 何とか終盤に進んだら、字数がちょっと足りないとか、オーバーしそうだとか、そういう経験、アナタ絶対あるでしょ?

 不足も困るけど、オーバーはもっと困る。字数オーバーは基本的に0点ですから。あ~あと4文字削れば完璧なのに~・・・てな苦悩を経験したこと、ありませんか?私はもう山ほど経験しました。

 

 今回の作文技術記事は、字数の微調整テクニックのお話です。


 

 説明のために、サンプルを1つ用意しましょう。著作権云々とかケチつけられるのはイヤなので(訴訟だの法的手続きだのに訴えられるのはお金持ちか企業ばっかですな、まー不公平な)私の書いたもので。

 

◆◆ 高校の教員というのは、受験生を送り出す側であると同時に、受験生を受け入れる側でもある。もちろん、送り出すのは大学受験生で、受け入れるのは高校受験生だ。だから、受験生の選考という仕事も、ある。

 高校大学入試も、多様化の傾向という点では似ている。一般入試、AO入試、推薦入試、自己推薦入試、地域枠、特別枠、などなど。小泉内閣以降、学校間にも競争原理が強く求められるようになって、高校も大学も生き残りに躍起になっている。私立だけではない。公立も競争を求められている。(LHR3「選考することの難しさ」よ)◆◆

 

 <字数の増減双方に使えるテクニック>
1 字数の異なる同義語と入れ換える
 「受験生を送り出す側であると同時に」の「同時に」を「共に」にすれば1文字マイナス。
 「もちろん」を「当然」にすれば2文字マイナス。

 「多様化」を「多種多様化」とすれば2文字プラス。

 「似ている」を「類似している」にすれば1文字プラス。 「生き残り」を「サバイバル」にすれば1文字プラス。 

 

2 あってもなくても大差ない助詞や句読点で調整する

 「高校教員というのは、受験生を送り出す側であると同時に、受験生を受け入れる側でもある。」の1文に打たれた2つの読点は、なくても特に問題はない。1文字減らしたかったらどちらか片方を削除。2文字減らしたかったら両方とも削除。他にもカットできる読点はたくさんある。

 「高校の教員」の「の」は削除可能。

 「学校間」は「学校の間」と1文字入れる事が可能。

 

3 同じ意味内容の別の表現に変える

 「受験生を送り出す側」という名詞的な表現を「受験生を送り出す立場にある」と主述的な表現にすれば4文字プラス。「生徒を受験に行かせる側」とすれば2文字プラス。

 「受験生の選考」を「受験生の合否を決める」にすれば4文字プラス。

 「競争原理が強く求められるようになって」を「競争原理への強い要求が起こり」とすると4文字マイナス。

 「多様化の傾向」という名詞表現を「多様化する傾向にある」と主述的な表現に変えると4文字プラス。

 「高校も大学も」を「高校大学ともに」とすれば1文字プラス。

 「生き残りに躍起になっている」という主述的な表現を「生存競争の真っ最中である」とすれば1文字マイナス。

 

4 略称とフルネームの入れ替えをする

 「高校」は「高等学校」とすれば2文字プラス。

 「入試」は「入学試験」とすれば2文字プラス。

 「一般入試、AO入試、推薦入試、自己推薦入試」は「一般、AO、推薦、自己推薦」とすべて「入試」を省略することが可能。

 「小泉内閣」は「小泉純一郎内閣」とすれば3文字プラス。

 上記以外の例としては、「パソコン/コンピューター/PC」「テレビ/TV」「携帯電話/携帯」など。字数調整で都合の良い方を選ぶ。

 

5 漢字とひらがなを交換する

 日本語の文章では、漢字で書いてもひらがなで書いても構わない言葉がある。

 「などなど」は「等々」でもよい。2文字減らせる。

 例文以外では、「所謂/いわゆる」「所詮/しょせん」「解る/わかる」「子供/こどもor子ども」「大人/おとな」「~の為/~のため」「~という事/~ということ」などは、漢字でもひらがなでも問題ない。

 ただし常識的に漢字で書くべきものまでひらがなにしてはいけない。減点対象となる。

 

6 2種類以上の送り仮名や表記法が許されている場合は、都合の良い字数の方を選ぶ

 「受け入れる」は「受入れる」でもいい。1文字カットできる。

 その他の例としては「借り入れ/借入れ/借入」「取り出し/取出し」「立て替え/立替え/立替」など。

 カタカナ語としては、「コンピューター/コンピュータ」「プロセッサー/プロセッサ」「レクレーション/レクリエーション」「ディスカッション/ディスカション」「ファックス/ファクス」など。

 

7 能動と受動の入れ替え

 受動(受け身)表現と能動(受け身じゃない)表現は、通常同じ内容を表す文章を作れる。概して受動表現は能動表現より字数が多い。相互入れ替えをすれば字数の調整ができる。 

 「学校間にも競争原理が強く求められるようになって」という受動表現を「学校間に競争原理を強く求めるようになって」と能動表現にすれば1文字マイナス。

 

 

<字数を増やすためのテクニック>

1 動詞表現を、名詞+「~する」に変える

 「受験生を送り出す」を「受験生の送り出しをする」にすれば2文字プラス。

 「受け入れる」は「受け入れをする」にすれば2文字プラス。

 他にも、「求める」→「要求する」(1文字プラス) 「調べる」→「調査する」(1文字プラス)

 応用編としては、「回す」→「回転を与える」(4文字プラス) 「修理する」→「修理を行う」(1文字プラス)

 

2 「~という」「~というもの」を挿入する

 「~という」「~というもの」は、あってもなくても表す意味は変化しない。少々ニュアンスに変化があるだけ。字数を増やしたいときは好適。

 「愛の反対は憎しみではない。」という文は、「愛というのものの反対は憎しみではない。」としても意味は同じ。字数は5文字プラス。

 

3 例示を増やす

 「◯◯のように」という文面では、◯◯は具体例である。この具体例を増やして「◯◯や△△のように」とやれば字数は増える。

 前述の例文であれば「一般入試、推薦入試、・・・」の部分は、他の例を入れれば字数が増やせる。

 

4 譲歩や但し書きを入れる

 これは大技。400字以上の小論向き。

 譲歩というのは「確かに~ではあるが」「~という意見もあるが」「~と言えば言い過ぎではあろうが」というような文面。

 但し書きというのは「ただしこれが100%正しいということではない。」というような文面。

 これらは断り書きのようなものであって、意見そのものを変える事は無い。かなりの字数を増やさねばならない時は使える。

 例文であれば、第1段落に「中高一貫教育校であれば高校受験性を受け入れるわけではないけれど、そうでない多くの高校の場合」という1文を入れれば字数は大幅に増える。

 

5 説明を増やす

 これも大技。文中の用語や文面に説明を付け加えれば、意味を変えずに字数は増える。

 例文であれば「競争原理」を「競争原理、すなわちダメな学校は潰すべしという原理」とすれば字数はかなり増える。

 

6 同じ内容の別の文章を書く

 これまた大技。上の5番と似ているけれど、前の文章と同じ内容を表す別の表現の文章を加えるという作戦。

 例文であれば、「私立だけではない。」と「公立も競争を求められている。」は、実は全く同じ内容。この2つの文は、実はどちらか片方だけでも意味は十分に伝わる。2つ並べたことによって字数は増えている。

 他に例を挙げると、

 「これは奇跡だ。」→「これは奇跡だ。こんなことは滅多に起きるものではない。」

 「事故には必ず原因がある。」→「事故には必ず原因がある。原因のない事故はあり得ない。」

 

7 文を切る

 文の数を増やすと、字数は増える。ついでに接続詞をいじくればさらに増える。

 「彼は優秀だが、私は好きになれない。」→「彼は優秀だ。しかし、私は好きになれない。」

 「結果が良ければ、それでいいというものではない。」→「結果が良かった。だからそれでいいというものではない。」(「だから」を「だからと言って」にすればさらに増える。)

 「10時に札幌を出発して、12時に仙台に着いた。」→「10時に札幌を出発した。そして12時に仙台に着いた。」

 

 *ただし、以上は内容を変えずに字数を増やすだけの、いわば文章を水増しするためのテクニックです。やり過ぎると字数の割に中身のない文章になりますので、ほどほどに。

 

 

<字数を減らすテクニック>

 字数を減らすテクニックは「増減どちらにも使えるテクニック」中にもかなりありますし、「字数を増やすテクニック」を逆手に取れば字数は減ります。例えば「増やすテク」の7番は、文の切れ目をつないでしまえば字数を減らせます。

 それ以外のものとしては、

 

1 名詞表現を多用する

 「景気が悪くなっているので」→「景気後退のため」

 「学校へ向かう途中で」→「通学途中で」

 「一人一人と話をしなければならない。」→「個別()対話が必要だ。」

 

2 読点のいらない語順にする

 「彼は学校で昨日、彼の母親が倒れたと言った。」(読点がないと母親が昨日学校で倒れたことになってしまう。)「彼の母親が倒れたと彼は昨日学校で言った。」

 

3 漢語を多用する

 「わかりあう事」→「相互理解」

 「ポテンシャルが高い」→「潜在力が高い」

 「サービス」→「提供」「供与」

 「モチベーション」→「動機付け」

 

4 繰り返しを避ける表現を覚えておく

 次のような言葉はしっかり身につけておくと、余計な字数を食わずに済む。

 ・「前者/後者」: 2つの例を挙げた後で、その双方について論じる時の常用道具。

 ・「~のそれ」:「彼が友人と連絡を取るのに主に使うのはメールだが、私のそれは電話である。」

 ・「前述のように」「既述のように」: すでに述べたことを受ける常用語句

 

5 3つ以上の例を論じる場合は番号か記号を振っておく

 番号を振っておくと、後で論じる際にかなりラクになる。

 例: 「最近の入試は多様化しており、推薦入試だけでも(1)指定校推薦(2)一般公募推薦(3)自己推薦などがある。(1)は高校を指定するもの、(2)は基準を満たせば誰でも出願できる制度、(3)は学校の推薦がいらない制度である。」

 

6 重複表現をカットする。特に「なぜなら」をカットする

 同じ意味を表す表現を重複して使うのは字数のムダ。例としては

 「私はこの意見に賛成である。なぜなら、私にも似たような経験があるからだ。」→「なぜなら」は不要。

 しかしどういうわけだか、中高生に論述を書かせると、すぐに「なぜなら」って書くんですよ。英語でもすぐbecauseを使う。

 指導経験上、中高生が使う「なぜなら」とbecauseは、9割がた要らないものです。


 

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