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ssh551 横幅たそがれ〜クルマの幅が広すぎる [科学と技術]

<2012>

 

 ホントにまー、どーしてこうも横幅がブクブクと太るんでしょうかねえ。

 特にここ67年の太り方はひどい。いくらなんでも、あれじゃ太り過ぎです。

 いえ、どこぞのタレントの話でも、みなさんの近親者の腹回りのことでもありません。

 クルマの話です。

 

 私が初めて買ったクルマ(1987)は当時のベストセラー、マツダ・ファミリアでした。

 サイズは全長×全幅×全高が3990mmx1645mmx1405mm。スリーサイズが今でもスラで出てきますよ。舐めるように可愛がった初めてのクルマですから。もちろん5ナンバー車(小型乗用車)でした。

 ファミリアは数回のモデルチェンジを経て、現在はアクセラの名で売られています。

 そのアクセラのスリーサイズは、4460mmx1755mmx1465mm25年の時を経て、ずいぶん成長しております。メーカーのマツダは今もってアクセラを「コンパクト」と主張していますが、日本では立派な3ナンバー車(普通乗用車)です。3ナンバーのコンパクトなんてアリかよ。

 

 ま、これはマツダだけじゃありません。

 海外市場でのアクセラの一番のケンカ相手はフォルクスワーゲン・ゴルフです。ゴルフは1974年に発売されて以来、小型ハッチバックの大ベストセラーとして君臨。世界中のメーカーがゴルフの牙城に挑戦してきましたが、今もってゴルフはNo.1ベストセラーカーです。ヨーロッパでのゴルフの強さは、アジアでのトヨタ・カローラに匹敵します。

 そのゴルフが、モデルチェンジごとにブクブク太っているんです。

 初代ゴルフは3725mmx1610mmx1410mmでした。私のファミリアよりまだ小さい。

 それが2代目(1984年~)には3985x1665x1415mmとなり、4代目(1997年~)にはついに3ナンバー車の仲間入り(4155x1735x1455mm)、現在販売されている6代目(2009年~)に至っては、4210x1790x1485mmという堂々たる体付きです。全幅1790mmと言えば、トヨタ・クラウンとほとんど同じ(1795mm)

 競争市場では、後を追う側が何かウリを持たせないと勝負になりません。クルマの場合、得てして2番手以降は1番手よりもサイズを大きくするか、装備を増やすか、値段を安くするかという作戦に出ます。

 ゴルフがデカくなったのなら、ライバルはそれと同じかそれ以上にデカくするというのが常套手段です。アクセラがデカくなったのはゴルフがデカくなったからです。全長は長過ぎの感がありますが。

 

 

 実は、昨今クルマの幅をどんどん太らせているのは、日本でもアメリカでもなく、ヨーロッパのメーカーです。


 

 20年近く前に、かなり本気でBMW3シリーズ(3代目)を買おうと思ったことがあります。理由は安全性。

 当時の日本車には今では当たり前の安全装備—ABS、エアバッグ、シートベルトプリテンショナー、衝突安全ボディ、ドアビームなどがまったく不備でした。元凶はトヨタ。

 トヨタは輸出車のみ現地の安全基準を満たす装備を施し、国内仕様はそういうものをすべてコストダウンのために省いていました。日本の他のメーカーは取材に対して「トヨタさんがやらないことにはウチだけやっても出費がかさむだけで販売につながらない」と嘆いていました。私が商談をしたBMWディーラーの担当者が「トヨタはダメですよ。日本車で1社だけ挙げるならスバルです。」と言っていましたっけ。

 その3代目BMW3シリーズは、全長が4500mm少々で全幅が1695mm5ナンバーサイズセダンでした。

 2005年にデビューした5代目BMW3シリーズ全幅はなんと1817mm。クラウンより20mm広い立派な大型車です。この全幅はさすがに日本では不評だったらしく、その後日本仕様だけ1800mmに縮めたようです。2012年登場の6代目も日本仕様は1800mmになってますが、ヨーロッパ仕様は1811mmあります。(全長は4624mm、こちらも結構成長してます。)

 今のBMW3シリーズを見ると、かつて憧れた女性に久しぶりに再会したらでっぷり太っていて落胆したような気分になります。

 

 

 太りたいヨーロッパ車はは勝手に太ればいいじゃん、とクールに突き放せればいいんですけど、そうも行かないのが国際競争。敵が太れば、こっちも対抗せざるを得ない。

 ヨーロッパの高級車とガチ勝負している日本車と言えばトヨタのレクサス。レクサスブランドのクルマはどれもこれもかなりの「おデブ」です。

 一番高いLS(元セルシオ)1875mmGS(元アリスト)1840mmIS(元アルテッツァ)1795mmSUVRX(元ハリアー)なんか1885mmと、ひと世代前のランドクルーザー並の幅です。

 トヨタだけじゃありません。国内の他メーカーも、大陸向けのクルマはどれも相当に横幅がついています。

 

 

 さて、くだんの3代目ビーエム3ですが、結局私は購入を見送りました。最大の理由はドライビングポジションが気に入らなかったこと。安いクルマならともかく、大枚はたいて買ったクルマに気に入らない部分があるというのはつまらないですから。

 で、私はマツダ・センティアという当時としてもかなり大振りなセダンを購入しました。スリーサイズは4915mmx1795mmx1380mm。滑らかな曲面デザインがカッコよくて気に入っていました。

 ただ、この全幅1795mmはさすがに田舎道では難物でした。センティアは4WS(四輪操舵)機能があったので回転半径は小型車並だったのですけど、狭い道での行き違いや狭い駐車場での乗り降りはかなり苦労しました。

 

 一昨年、義弟がマツダのMPVを買いました。広くて快適でよく走るいいミニバンですけど、全幅は1830mm

 帰省の折、彼の奥さんが取り回しに失敗して立ち往生してしまいました。やっぱ幅が広すぎて。

 

 

 日本メーカーが羽振りがよかった1990年くらいまでは、国内向けと輸出・海外生産向けでボディを変えるという贅沢なことをやっていました。日本国内で売られるモデルと海外で売られるモデルではボディが違う。もちろん海外向けの方が大きい。

 そんな時代もあったよね。今そんなマネができるのはトヨタくらい。

 トヨタ・クラウンは代々日本国内だけに向けて生産販売される純ドメスティックカーです。クラウンの全幅は常に狭めに設計されていて、一番大きい最新型でも1795mmに抑えられいます。

 

 

 設計する側からすると、サイズはデカい方がやりやすいんです。

 横幅は、室内空間を抜きにしても、走行安定性(特に曲がりの安定性)の上でも、側面衝突の安全面でも、少しでも広くしたいのが作る側の気持ちです。特に衝突安全性能は年々規制が厳しくなっていて、少しでも「つぶれしろ」が大きい方がありがたい。前後方向と違って左右は衝撃吸収が難しいんでなおさらです。

 そういう事情はクルマ好きゆえよく理解してますけど、身銭を切ってクルマを買って毎日使うのはこちらですからね。

 

 今の状況だと、幅の狭いクルマを望めば、全長も短いコンパクトカーにならざるを得ません。

 ま、その方が安いし燃費もいいしなんですけど。

 私の現用者は先代のマツダ・デミオです。全幅は1680mm。軽自動車には負けますけど、取り回しはラクですよ。

 

 

 なお、クルマの全幅は純粋にボディの端から端までの長さで、サイドミラーは含まれていません。ミラーまで含めると幅はもっとあります。今のクルマのドアミラーは割と大きいのでかなり出っ張ってます。しかもミラーには角度調整や折り畳みのためのモーターが複数ついているし、ちょっといいヤツだとウインカーやヒーターが付いていたりする。

 幅の広いクルマのドアミラーは、ぶつけやすい上に、ぶつけて壊したら交換は高いでしょうね。

 個人的には、あのミラーのウインカーはいらないと思いますが。


 

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