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ssh626 モノの寿命は何で決まる? [科学と技術]

<2013>

 

 学生時代に読んでいた「FMファン」という雑誌のQ&Aコーナーに、こんな質問が載っていました。

 「オーディオ機器の寿命は、どのくらいですか?それは何によって決まりますか?」

 投稿者が知りたかったのは、何年くらい動くのかということだったようです。しかしプロによる回答は意外なものでした。

 その回答の正体は後回しということにして。

 

 

 生き物に寿命があるように、モノにも寿命があります。オーディオ機器に限りません。家でもパソコンでも衣類でも食器でも楽器でもクルマでも道具でも家具でも本でも何でも、未来永劫現役というわけにはいきません。いずれは他人の手に渡ったり捨てられたりします。

 今回は、いろんなモノの寿命が、何によって決まるのかというお話です。


 

 モノの寿命というと、すぐに思い浮かぶのは、壊れるかどうかということ。壊れない頑丈なモノはありがたいものです。

 テレビとかラジオとかアンプなど電気回路ばかりの製品は割と壊れません。電灯類もタマが切れない限り大丈夫です。対して、ビデオデッキやCDプレーヤーやモーターやエンジンなどの機械類は割と不調になりやすいです。

 では、壊れたら、そこで寿命はおしまいか?そうとも言い切れません。

 壊れても、直せるのであれば、モノの寿命は続きます。

 機械の場合、どこかの部品がトラブルを起こすと、その機械全体が動かなくなります。そういう場合、部品を交換すれば、機械全体は息を吹き返します。

 機械にはベルトやゴムのような消耗品の部品もあります。こういう部品の交換は必要なメインテナンスであって、機械そのものの寿命ではありません。

 

 では、直せる限りは、寿命ではないのか?

 これまた、そうとも言い切れません。

 修理可能なモノであっても、捨てられたり処分されることはあります。

 私が以前乗っていたマツダ・センティアというクルマは、15kmほど乗ったところで、足回りの大きなトラブルに見舞われました。修理は可能でしたが、見積もり金額は6ケタ。すでにあちこちガタの出ていた査定額ゼロのクルマにこれ以上の修理費をかけて乗り続けるのは合理的でなく、私はセンティアを手放しました。

 逆に、修理したくても、できない場合があります。

 機械の修理というのは、たいていは部品の交換です。部品がなければ修理はできません。その部品がどこにもなければ修理はできません。家電品は製造終了から6~8年すると部品の保有義務がなくなってもう部品が手に入らないということが起きます。

 

 モノを直すという行為は、合理性やら打算やら部品調達やら、いろんな要素が絡んで判断されます。

 そのいろんな要素の中で一番重要なものは、恐らくそのモノに対する執着でしょう。

 

 

 例えば1000万円のクルマの修理代が50万円だったらたいてい修理するでしょうけど、私のデミオ(100万円)だったら50万円かけて修理するくらいなら別の安いクルマを探すでしょう。

 金額だけじゃありません。大切な人からもらったモノとか、形見のモノとか、苦労してやっと手に入れたレアなモノとか、思い入れの強いモノの場合は、修理に相当なお金がかかるとしても、やはり修理するでしょう。

 

 

 ところで、壊れていなくても、機能的にまったく問題がなくても、寿命を迎えるモノもあります。

 一つは外的な要因。モノは壊れていないのに、使えなくなってしまう場合。

 子どもの衣類は子どもが大きくなれば着られなくなります。(大人の衣類も体形が大きく変化すると寿命を迎えます。)

 地上デジタル放送への完全以降によって、アナログTVは寿命を迎えました。我が家にも29型のソニー・トリニトロンがあります。完動品ですが、まったく出番がありません。邪魔だから早く捨てろと嫁サンが言ってます。

 学生時代、原付バイクに乗っていたころにかぶっていたヘルメットが実家にまだあります。ちゃんと使えますが、バイクそのものがないのだから出番はありません。自宅にある子どもたちの自転車用ヘルメットも壊れてはいないけれど無用の長物と化しています。

 外的要因で寿命が来るという点では、パソコンくらい寿命が短いものはないでしょう。ソフトも動作条件もどんどん新しくなります。マシンが完動品でも、ソフトやネットに対応できなければ働きようがありません。

 

 もう一つの要因にして、恐らくもっとも大きな要因。それは「飽きる」こと。

 衣類や装身具の寿命は、流行とか好みによって決まります。流行から外れたり、持ち主の好みが変化したりして、「これはもう着たくないなあ」と思ったら、それが寿命です。

 クルマやパソコンやスマホも、新しいモデルが登場すると、今使っているモノが急に色あせて見える。そうなるともう寿命です。

 

 加えて、モノには「くたびれる」とか「ヘタる」ということがあります。

 洋服がくたびれてくると、シルエットがどうもシャキッとしない。オーディオ機器でも、長く使っていると、何となく音が冴えなくなってくる。故障とまでいかなくても、調子が落ちてくる。私が以前使っていたアンプ、ソニーTA-F333ESXIIも、20年ほど使っていたら、何となく音がスカッとしなくなってきました。で、結局マランツPM-14SA2に買い替えた。

 「くたびれる」と「飽きる」は相乗効果があります。くたびれてくると、飽きも加速します。

 

 モノの寿命は、外的な要因の方が大きいように思えます。

 だから、ある人にとっては寿命でも、別の人にはそうでないということがちょくちょく起きる。

 クルマの場合だと、実は一番長生きするのはスポーツカーです。あるオーナーが手放したスポーツカーが、中古市場で別のオーナーへと渡る。かなり古くなっても、カネのないクルマ好きの若者が待っている。一般のクルマならとっくに廃車となるような古い年式のモノがまだまだ現役で走っています。

 

 

 さて、冒頭の「FMfan」の投稿への回答。

 「オーディオ機器に寿命はありません。あなたが飽きたときが寿命です。」

 ま、そういうことなんでしょうね。

 

 というわけで、モノの寿命は、主に外的要因、特に持ち主の気持ちに最も左右される、というのが今回のまとめであります。


 

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