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ssh605 競争主義者は競争がキライ [競争と共生]

<2013>

 

 久しぶりに競争主義について考えてみます。

 今回の眼目は、競争主義を主張する人たちは、実は競争というものを愛していないのではないか?ということです。

 

 

 「努力・友情・勝利」を基本方針に1980年代に圧倒的なシェアを誇った少年ジャンプ。「キン肉マン」「ドラゴンボール」「聖闘士星矢」「スラムダンク」など数多くのメガヒットを生み出しました。今はさすがに往時の勢いはありませんが、それでも「Bleach」はじめ多くのヒットを生んでいます。

 努力・友情・勝利を具現化するには、戦いが不可欠です。ジャンプの人気マンガのほとんどはスポーツなり戦闘なりの「戦い」のストーリーです。ストーリーの中で、ヒーロー達は血と汗と涙の努力をし、仲間との友情を糧に、最後は必ず勝利する。

 そういう展開なので、連載が長引くにつれ敵がどんどん強くなって、しまいにゃバケモノみたいなのが出てきて収拾がつかなくなってという形で連載終了と相成るというのがこの方針の呪われた宿命です。

 まあそれでも、「努力・友情・勝利」の物語はやはり楽しいものです。

 

 「努力・友情・勝利」の物語は、言わば、みんなで頑張って競争してレベルアップしていく話です。競争主義の物語と言えないこともない。

 

 ただ、ジャンプのヒーローたちは、案外と勝利そのものにこだわっていません。勝利そのものよりも、その過程にこだわっている。間違っても卑怯な手は使わない。フェアな戦いで勝つことを求めている。

 さらに、ここが面白いところですが、ヒーローたちは、戦うこと自体を愛しているのですね。

 ドラゴンボールの孫悟空にしても、Bleachの死神たちにしても、強い相手と戦うことが大好きです。戦いを「楽しかった」と平気で言ってみせる。勝って当たり前の戦いなど、バカバカしくてやってられない。戦わないことなど退屈で仕方ない。

 ヒーローたちは、勝ち負け以前に、「いい戦い」がしたいのです。

 

 

 一方、リアルワールドでも、そういう人がいます。


 

 松井秀喜やイチローがMLBに渡った時、応援した人もいた反面、懐疑的な人も多くいました。

 特に松井の場合、東京読売巨人軍の4番打者という野球人にとって一番の成功を手にしていた。球団も彼を最大限に評価していた。にもかかわらず、破格の好条件での契約を振り切って、彼はMLBへ渡った。

 恐らく彼らにとって、NPB(日本プロ野球)の花形選手であり続けることは、MLBで一から頑張ることほどの魅力がなかったんでしょう。今ある成功よりも、心魅かれる世界があった。

 彼らは、成功者であることよりも、戦うことが好きだったんでしょう。

 

 

 ビジネスの世界にも、戦うこと競うこと自体が楽しいという人がいます。

 一から起業して、苦労して業績を上げ、誰もが認める大きな会社に成長させるこれが起業の一番の目的のはずです。

 なのに、事業が成功して会社が大きく成長した途端に、社長の座をさっさと後進に譲ってしまうという人がいます。せっかく成功したのに。なぜ?

 起業するためです。

 もう一度、一から起業して、会社を作って成長させる。

 こういう起業家は、起業そのものが好きなのです。起業して、苦労して戦って勝って行くことが一番楽しい。今ある成功に安住することには、それ以上の魅力がない。

 

 

 ここで話は昨今の競争主義者に移ります。

 日頃競争競争と主張している方々の中で、本当に競争というものを愛している人って、いるんでしょうか?

 自分は競争を愛している。競うことが好きだ。競うことで自分を磨きたい。厳しい環境下で競い続けたい。そういう愛競争心に満ちた人って、どのくらいいるんでしょうか。

 あんまりいないと思うんです。

 

 「何を言う、私は今も厳しい国際競争を戦っているではないか。」という反論が聞こえてきました。

 はいはい、想定内の反論です。では再反論。

 アナタの競争って、勝ち組が勝ち組でい続けるための戦いですよね。で、その競争は、孤立無援の本当に厳しい戦いですか?

 じゃないでしょ。アナタ、政治にも社会にもいっぱい注文つけられる立場じゃないですか。法人税を上げたら日本から出て行くぞとか何とか脅かして法人税を低く抑えてもらってるし、この円安で業績が向上しても賃上げだってしてないし。第一、雇用の流動化とやらで、大量の非正規雇用者を単なる「コスト」として使ってるじゃないですか。飛車角を余計にもらって戦ってるようなもんですよ。

 こんなの、競争ですか?

 ハンデをもらって勝って、プライドは傷つきませんか?

 

 

 結局、競争主義を主張する人って、今の自分の成功の正当性を主張するのに競争って言ってるだけなんじゃないかって気がします。

 「現在の地位・財産をご破算にして心行くまで競争してもらうか、それとも競争を一切禁止する代わりに今の地位・財産を保証するか。」そう問われたら、競争主義者の皆様の中に、前者を選ぶ人はいますかねえ。

 

 

 それと。

 競争が善きものだと心底思うのなら、競争のあり方そのものに一家言持っているはずです。

 特に競争のルール、競争の公正さに対しては、絶対に意見があるはずです。全体のレベルを上げるような競争でなければ、競争主義の意味はないと。

 然るに、競争主義者の方々は、競争のあり方には無頓着ですね。「国際競争」だの「競争なくして進歩なし」とか言うけれど、競争で社会全体をレベルアップしていくにはどんな競争でなければならないのかということは語らない。今ある競争を無批判に前提にしている。これも妙なもんです。

 

 

 競争こそ進歩の源である。と、ホントにそう思うなら、今の地位は後進に譲って、また一から競争を始めたらいかがですか?競争で自己のスキルアップをしてくださいな。応援だけならいくらでもしてあげますよ


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