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ssh669 「安近短」とは言うけれど [教育問題]

<2014>

 

 大学入試に関わっている高校や予備校の職員にとって、5月から6月は分析会のシーズンです。

 分析会というのは、前年度の入試を振り返って、その傾向やら何やらを分析して今後の指導に役立てるもの。

 単なるデータの分析だけだったらさして意味もないのですけど、受験の傾向はやはり掴んでおかないと指導上困ります。

 

 昨今の大学入試の傾向としては、

  1. 理系人気(ついでに資格系統人気)
  2. 国公立人気
  3. 地元志向
  4. 早く決めたがる

 これを観光業界風に言うと、理系人気プラス「安近短」ということになるようです。

 

 理系人気というのは、このご時世ゆえ、就職に有利な理系を選ぶということ。中央メディアはアベノミクスのおかげで景気が上とか何とか言ってますけど、こと高校生の文理選択にアベノミクスとやらは何の影響も及ぼしておりません。おかげで、本来理系向きじゃない生徒が保護者や塾の先生のアドバイスで理系を選択して苦労するケースがままあります。

 

 国公立人気とは、つまりが学費が安い方がいいということ。

 なにせ大学生の半分近くが奨学金を申請するご時世です。現在の国公立大学の学費は、入学金282,000円、授業料が1年間で535,800円と決して安くはないのですが、これでも私大よりはマシ。私大は入学金こそ平均250,000円ほどですが、授業料が文系でも750,000円前後、理系だと1,000,000円以上、医療系はもっと高い。どこに行っても絶対的に高いのであれば、せめて相対的に安いところをと願うのは当然のことでしょう。

 地元志向とは、遠方への進学を敬遠するということ。できれば近くで、それもできれば自宅から通えるところへ行きたいということですか。まあこれもゼニの問題です。仮に東京でアパートを借りて通学するとなれば、家賃プラス通学費用で、あっと言う間に毎月何万円も消えてしまいます。

 早く決めたがるというのは、納得できる大学の合格が出たら、最後まで受験を続けることをしないということ。例えば割といい私大に受かったら、もう国公立後期の受験はやめるということです。一件すると2.と矛盾しますが、遠方の国公立に後期出願していた人が近隣の私大に合格が出たら、わざわざ遠方の受験に行くのはどーかなという話にはなり得ます。


 

 さて、受験産業の方々も、それを伝え聞いてあれこれ語る方々も、この理系人気の「安近短」を、あまり肯定的に捉えていません。むしろ批判的。

 受験産業的には、こういう状況下だからこそ、あえて文系を選び、遠方でも怖じ気づかず、最後まで頑張り続けることで活路が拓けるとおっしゃいます。

 それを伝え聞いてあれこれ語る方々は、勇気がないだの、これだからゆとり世代はだの(すでにゆとり世代はあらかた卒業しちゃってるんですが、そーゆーことは調べないのですね)、安直だの批判してきます。

 

 いや、確かに正論ですよ。

 私だって、受験生にはとことん頑張って欲しい。出口の打算じゃなくて、自分の志向や能力に合わせた進路選択をして欲しい。ゼニを理由に進路選択を狭めて欲しくない。


 でもねえ。現実は、甘くないのですよ。


 一口に入試と言いますけど、遠方の受験に行けば、受験料プラス移動費プラス宿泊費プラスアルファで、あっと言う間に5万円も10万円もかかってしまいます。

 そんな端金(はしたがね)は屁でも無いという人はいいですけど、受験生の親の90%くらいにとっては相当キツい出費でしょう。

 

 安近短に走らざるを得ない状況は、厳然としてあります。

 そしてそれは、保護者の責任じゃありません。

 

 もし安近短がけしからんというのであれば、教育費の低減や、賃金のさらなる上昇を主張すべきでしょう。それを全然せずにあれこれ言うのは愚の骨頂です。

 オンナは子どもを持ったら働かずに家庭にいるべしと声高に主張するアンチフェミニズムの方々がおりますが(女性にもおります)、もし本当にそう信ずるのであれば、賃金の大幅アップと扶養手当の拡充まで主張しなければ筋は通りますまい。多くの「働く女性」は自己実現とか何とか言う前に、働かなければゼニが足りないのですよ。

 

 私も自分の子どもが大学進学するにあたって、大真面目に必要なお金と必要な支出を計算しました。その結果、何とかなりそうだという結論になったのですけど、計算している最中はホントに暗ーーーーーーーーーーーい気分になりました。

 

 安近短、当然じゃないですか。そうでもしなきゃ、生活と教育の両立は不可能ですよ。

 文句があるなら、政治に対して言って下さい。個々の受験生やその保護者に責はないです。


 

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