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ssh677 内部進学 [教育問題]

<2014>

 

 先日、私の地元で進学相談会が開かれました。

 こういう会があると、それに併せて高校訪問をしてくれる大学がたくさんあります。せっかくイナカに足を運ぶのだからと、縁のある高校にも顔を出して頂けるということでしょう。ありがたいことです。


 ところで、私は「馴染みの薄い」大学の方のお話を聞くのが大好きです。自分がよく知らない大学の関係者に直に話を聞けるというのは大チャンス。ここぞとばかりに、自分の知らないこと・知りたいことをあれこれ聞かせてもらいます。

 今回、いくつかの私立大学の方をお話をするチャンスがありまして、そこで私がいままでほとんど意識していなかったことについて聞くことができました。

 いわゆる「内部進学」のお話です。

 

 内部進学というは、大学の付属高校から(推薦枠で)進学することです。ウチの長女が大ファンである櫻井翔は慶應義塾高校から慶應義塾大学に進んでますけど、その種のケースのことです。

 名門と呼ばれる大学の付属初等中等学校に我が子を通わせるというのは、都市部の富裕層(およびそれに憧れる人たち)にとって極めて重要な意味があるようです。順調に成長してあわよくば東大、それがダメなら内部進学というのが、たぶん極上のサクセスストーリーなんでしょう。

 酒井順子は、自らも立教女学院から立教大学に進んだ内部進学生だったのですけど、そのエッセイの中で、ある種の母親たちにとって名門私立小学校に通う我が子というのは最上のアクセサリーだと指摘しています。サクセスストーリーが約束された(ように見える)幼な子を連れて歩くアタシというのは、えも言われぬ幸福感があるのかも。

 

 その内部進学ですが、大学としては、必ずしも「いいこと」でもないようなんです。


 

 今回、同じ地区に立地する2つの大学が偶然立て続けに来校しました。片や小学校から付属校を持つ女子大、片や付属校を一切持たない共学校。

 その双方から、内部進学に対する否定的な話が出ました。

 

 前者の女子大の付属校は地元では「お嬢様学校」的に受け止められているようです。それは地元でも高く評価されているということの証なんですが、その付属高校からの内部進学を、大学としては減らして行く方針でいるのだそうです。担当の方の話によると、内部進学者は旧知の間柄ゆえ、どうしてもグループにまとまってしまう。そういうグループが大きくなると、外部進学者にとってあまり居心地がよくなくなってしまう。いきおい外部生は外部生だけと交流してしまい、いろんな人たちとの交流を持てるはずなのに、そういう交流が鈍くなってしまう、と。

 この点について、後者の大学は実にキッパリしていました。

 説明用のレジュメの一番最初のページが「付属校はありません」。内部進学ゼロゆえ、さまざまな学生との出会い・交流が期待できると。

 

 なるほどねえ。

 まったく別の地区の私大では、センター試験7科目受験者のための新しい特別枠(学費減免)を設けたそうです。

 狙いはイナカの学生を集めること。学生が地元都市部出身者ばかりに偏るのは、大学の活力を削ぐのだと。


 小学校から中学校・高校と進むにつれて、通学区は大きくなり、いろんな地区の生徒と出会えます。

 この広がりは大学になると一気に全国に広がります。大学に行けば、文字通り日本中のいろいろな人と仲間になれる。私の母親は、それだけでも大学に進む価値はあるとよく言っていました。

 

 ところが最近、東京の大学で東京出身者のシェアがずいぶんと大きくなってしまっています。特に私大はその傾向が強い。早稲田大学でさえ、今や過半数が東京の学生です。

 原因は東京と地方の格差(経済面やインフラ面)とかいろいろあるでしょうけど、内部進学者というのも一因かも知れません。

 

 こういうことを書くとカドが立つのですけど、イナカから都市部の私大に進んだ友人や教え子に話を聞くと、10人が10人、内部進学者はえらく勉強ができないと言います。

 恐らく、ギリギリまで受験勉強に邁進してきたイナカモンからすると、早くに内部進学が決まってゆったりしていた人たちの「ゆるさ」が許し難いのでしょう。あくまで想像ですが。

 そうやって小馬鹿にしていた内部進学生たちが、いざ就職となると地の利(自宅が東京など大都市にある)や育ちの良さ(私立の付属校に送れるだけの経済力を有する親御さんを持つ)を活かしてイナカモンを出し抜くことになるのですけど、そのことにイナカモンが気付くのは後の話。

 

 まあでも、内部進学でなくても、推薦入試やAO入試で合格が早く決まってしまったために、その後の学習が不十分になるというケースはよくあります。

 私の勤務してきた学校では、そういう情けないことにならないよう、推薦合格者であってもセンター試験を受験するなどの学力保証指導をしていました。内部と違って「外部」はいつ切られるかわかりませんので。


 進学先を選ぶときにはいろんな要素が絡んで来ます。学部学科やら設備やらネームヴァリューやら立地条件やら学費やら就職率やら校風やらイメージやらエトセトラエトセトラ。

 しかし私はこれまで、内部進学者の多寡というのは全然考えたことがありませんでした。

 

 極端な話、内部進学者が半分以上という大学があったら、ちょっと遠慮したくなるかも知れません。

 イナカモンの大半は地元を離れて大学に赴きます。せっかく家から離れるのなら、なるべくいろんな人と出会えた方がいいに決まってます。特定の人たちばかりの「アウェー」な環境では楽しくないでしょう。


 もっとも、私自身が内部進学のいない大学に通っていましたんで、リクツの上ではあれこれ考えられても、実感としてはピンと来ないです。

 ここいらへん、経験者のお話を詳しく聞いてみたいところです。


 

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