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ssh679 思ったことを書くのと、考えたことを書くのは全然違う [小論文]

<2014>

 

 10月です。推薦・AOの出願ハイシーズンです。

 現任校でも多くの生徒たちが先生たちの指導の下、志望理由書やら小論文やら自己PRやらレポートやらの指導を受けています。時にベソをかきながら頑張る高校生の姿は、いつでもどこでも同じです。

 

 志望理由書にしても小論文にしても自己PRにしてもレポートにしても、ホントに書くのは大変です。

 それに比べりゃ、ツイッターだのコメントだの書くのは楽チンです。ブログだってただの日記なら苦労はありません。

 

 ssh561 作文上手の子が小論文で苦労する は、中学まで作文が達者だった生徒が小論文で案外苦労するというお話です。義務教育の作文でもっとも評価されるのは「字がきれいで学校で習ったことを遵守していて表現が工夫された成長物語」であり、そういう作文を書くことを骨肉化してしまった生徒はそこからなかなか抜け出せないのではないかという私の考察を書きました。


 ツイッターやらコメントやらが簡単なのは、思ったことを書くだけだからです。

 小論やら志望理由書やらを書くのが大変なのは、考えたことを書かなきゃいけないからです。

 思ったことを書くのは、ラクです。

 考えたことを書くのは、すごーく面倒です。

 最大の差は、考えたことを書く場合、調べて確認するという作業が必要であることです。


 

 先日、読売新聞と産経新聞に「子どもを狙った犯罪が増えている」という旨のニュースが出ました。警察庁によると13歳未満の子どもが連れ去られる事件が平成20年に比べ増加傾向であると。

 この記事に対して、思ったことを書くのはとても簡単です。

 今や日本は安全な国とは言えないとか、きっと在日外国人の仕業だとか、自己中が増えたせいだとか戦後教育の歪みが原因だとか。反対の場合であっても、ホントかなあとか、警察がちゃんと調べてないんじゃないのとか、マスゴミの言うことはアテにならないとか。とにかく、思ったことをただ書けばいい。

 

 一方、この記事に対して「考えたこと」を書こうと思ったら、ひと仕事やらないといけません。

 もし私が「いやそんなはずはない、国内の犯罪は軒並み減少傾向のはずだ」と考え、それを文章にしようとするとします。

 私は、「子どもを狙った犯罪は増えていない」という証拠となる資料を探し、それを示してみせる必要があります。現実的には、警察庁のデータを調べることになるでしょう。これは時間も手間もかかります。

 

 実はこの件についてはパオロ・マッツァリーノがブログで検証済みでして、案の定、平成20年は例外的にこの種の事件が少なかった年であっただけ。全体としてはやはり減少傾向です。

 (マッツァリーノはその後、中央紙の報道を確認し、警察庁の発表を鵜呑みにして増加傾向と報じたのは読売と産経だけで、朝日は平成16年から減少傾向と報じ、毎日はさらに詳細に調べて、面識のない他人によって連れ去られる事件はこの10年で半減し、子どもの連れ去り事件の大半は顔見知り、つまり離婚した親などによるものであると指摘していることを明らかにしています。)


 思ったことを書くだけなら、何も調べなくていい。(だからネットのコメント欄はウソ八百の戯れ言が大量にあふれています)

 考えたことを書こうと思ったら、調べないといけない。(だから量産できません、手間がかかるので)

 志望理由書や小論文の練習で、デキの悪い文章が「これじゃただの感想文だ」と怒られるのは、「思ったこと」しか書いてなくて、「考えたこと」が書かれていないからです。

 手間隙かけて、調べること。それをやらなければ、考えたことは書けません。


 じゃあ、小論文入試では、どうしたらいいのか?当然、入試会場では「調べる」ことはできません。

 いえ、やれることはあります。取れる作戦は2つ。

 1つは、知識を増やしておくこと。知識があればあるほど、調べなくても確信を持って書けることは増えます。

 もう1つは、大所高所から述べることをせず、「それでもせめてこれだけは言える」という「小さな主張」をすること。今の自分にはエラそうなことは言えないけれど、それでも今これだけは言えるという意見を書く。

 さしあたり今は、何本も書いて、知識と経験を増やすことですね。


 

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