LHR92 LHR91の余白〜カセットデッキ再調整 [DIY記]
<2015>
LHR91で高らかにTC-K222ESG復活、と書いたのですが、甘かった。古いキカイを舐めていました。
ベルト交換終了で浮かれて、さっそくとっておきのバージンテープに録音をしようとしたところ、大トラブル発生。テープがガイドから外れてグチャグチャの傷だらけになってしまったのです。
トラブルに見舞われたテープ、TDK MA46。テープと並行に傷が走っています。せっかくバージンテープ(しかもメタルテープ)を下ろしたのに、もったいない。
調べてみると、他にもいくつかのテープで同じトラブルが出る。
ところが妙なことに、このトラブルが起きるのは特定のテープのみ。他のテープではトラブルにはならない。しかも、特定の面でのみトラブルが起きる。B面がダメでもA面は何ともない。
トラブルを観察してみたところ、送り側のキャプスタンから異音が出て、そのうちテープが手前側にズレる。この時に消去ヘッとの角にテープが当たって傷がつく。さらに放っておくとテープはキャプスタンから完全に外れてしまい、テープは湯戻しする前の「ふえるわかめ」のごとき惨状となる。
さらにチェックしていくと、トラブルに至らないテープでも、少々の異音は出ていて、トラブルの一歩手前にある感じ。
捨て置くわけにはいかないようです。
困った時はとにかく調べる。ネットでそれっぽいトラブルに関する情報を手当たり次第に検索。原因としては以下のものが考えられるようです。
- カセットが悪い。カセットハーフの変形。これはどうしようもない。
- ゴムベルトの劣化。ベルトが滑ってキャプスタンに十分なテンションがかからない。対策はベルト交換。
- ピンチローラーやキャプスタンの汚れ。滑りやすくなり送りがうまくいかない。対策はクリーニング。
- ピンチローラーの劣化。ゴムが硬化してローラーが滑る。対策はピンチローラーの研磨か交換。
- テープガイドのズレ。本来の位置でないためテープが外れやすい。対策はガイドの位置調整。
最初は1.を疑いました。しかし同じカセットをTC-FX66にかけると問題なく動きます。2.は考えられません。ベルトは交換したばかりです。なれば、3.~5.の対策にトライです。
まずはキャプスタンとピンチローラーのクリーニング。無水エタノールを綿棒につけて念入りにクリーニングします。
写真の無水アルコールは一瓶1600円となかなか高価。なんでこんなに高いのかと思ったら、酒税が課税されてるのだそうで。
対策の結果。ダメでした。効果なし。3.ではなかったようです。
なれば次は4.の対策として、ピンチローラーの研磨。目の細かい耐水サンドペーパーで表面を磨きます。
雑にやって形が狂うとマズいので、慎重に少しずつ研磨。ピンチローラー表面がゴムローラーらしいツヤのない状態になりました。これは期待できるかも。削りカスをアルコールで拭き取ってテスト。
結果。残念。改善せず。4.もハズレです。
残るは5.のみ。テープガイドの位置調整を試みるしかありません。
ただしこれは、いささかの勇気が必要なトライです。
テープレコーダーの調整でもっとも微妙にして影響が大きいのはアジマスの調整です。
アジマスというのはテープのトラックとヘッドの位置関係(角度)と考えてもらえばいいです。アジマスがわずかにズレるだけで途端に音がおかしくなる。特に高音が全然出なくなってしまう。
テープガイドをいじくれば、アジマスが狂う可能性があります。
シロウトとしては、そういうデリケートな部分にはできれば触りたくなかったのですよ。
ネット情報によると、テープパス(テープの通り道)の正しい調整方法はこんな感じらしい。
まず、ミラーカセットという道具を使って、テープガイドの位置調整ネジを回してガイドを正しく調整する。
次に、テストテープとオシロスコープを使い、ヘッドの位置調整ネジを回してアジマスを調整する。
って、3つも道具がいるのかいな。ミラーカセットはともかく、古デッキ1台いじくるのにオシロスコープなんか買いたかないです。
TC-K222ESGのテープパス部分。左側のゴムローラーが送り側のピンチローラー。ローラーの左側から上部にかけて位置している馬の首みたいな黒い部品が今回のターゲットであるテープガイド。ローラーのアーム根元のネジを回すと位置調整ができるらしい。ボンネットを開けなくても調整できるのは助かります。
躊躇すること数日。ようやく覚悟を決め、少しずつ動かしてみることに決めました。
シロウトの作法に則り、元の位置をマーキングしてから作業開始です。
まずガイドが奥に行くようにネジを回してみました。何となくこっちが正解のような気がして。
ドライバーでほんの少し回して問題のテープをかける。改善がなければさらにまた少し回してかける。これを繰り返すこと数回。しかしこれはまったくのハズレ。
方向転換180度、ネジを元に戻して、今度は手前側に動くようにネジを逆回転させます。先ほどと同様、少し回してはテストを繰り返す。
すると、少しずつ外れにくくなってきました。
ネジを3分の1ほど回したところで、テープが外れなくなりました。
トラブルの原因は5.のテープガイドのズレだったということです。
でもここで喜んではいけません。アジマスが狂って音が悪くなっている可能性がある。音を出して確認です。
音を出してみたら、やはり調整前と音が変わっていました。しかしこれが、意外な展開。
調整前よりも高音がよく出るんです。一言で言うと音が良くなった。
ガイドを調整したら、ついでにアジマスも元に戻ったのか。
こうなると、もう少し細かくチェックしてみたくなります。
と言っても、テストテープもオシロスコープもありませんし、やっぱりヘッド位置をいじくるのは怖い。
何かいい方法はないかな、と考えているうちに、手持ちのCDをダビングしたテープが見つかりました。このテープと元のCDと比較試聴しながらテープガイド部分の微調整をしてみます。
結果、満足できるレベルに収まりました。これなら十分リスニングに耐えられます。
現状がベストかどうかはわかりませんが、ガイドの調整作業はごく簡単なものですから、また気が向いた時にやればいいやということで、今回の調整は一段落です。
調整後のK222ESGは快調です。とにかくテープが痛む心配がないから安心して使用できます。
ここ数日はカセットばかり聴いています。学生時代にFMから録音した古い(30年前!)テープも、意外とちゃんと鳴ります。20年以内のテープだとかなり「いい音」と言えるレベルです。嬉しいなあ。