ssh729 実践トレーニング解答編〜「押しつけは歴史的事実」は適切な見出しか [小論実戦トレーニング]
<2015>
では、ssh728の解答編。
今回の実践トレーニングは、小論文ではなく、読解トレーニングです。
小論文には正解はありませんが、読解には正解があります。
見出しというのは、記事の内容を要約したものであれば文句ありません。
このトレーニングは、見出しをつけた人間の読解の適否を問うものです。
正解。
「押し付け憲法は歴史的事実」云々というこの見出しは、不適当です。
この見出しは、どのような弁護もしようのない不適切見出しです。これ書いた人は完全に記者失格。記者どころか高校1年生レベルの読解力もありません。
しごく常識的なことから指摘すると、6月4日の憲法審査会における最大のトピックは、参考人全員が集団的自制権行使を違憲と断じたこと。日本国憲法の成立経緯に関するやりとりは枝葉に過ぎません。
実際、参考資料とした読売の記事では、憲法成立経緯についての部分はまったく触れられていません。読売のみならず、中央紙も地方紙もおしなべて「違憲」の部分に焦点を当てています。
意図的なものでないとすれば、この判断は極めてヘタクソと言えましょう。意図的なら断罪対象です。
ただ、ニュースのどこに焦点を当てるかは、価値判断の問題と弁護することは可能ではあります。
私は与しませんが、仮に産経の今回の判断に理があるとして、小林節の「押し付け」云々の発言を重点的に報じようとしたと受け止めてみます。
そうだとしても、やはり、この見出しは失格です。
記事によると、小林は以下のような発言をしています。(太字はshira)
◆◆
「日本が占領されていたのだから押し付けられたのは歴史的事実だ」
「この憲法のもとで素晴らしい発展をとげたことは間違いない事実。恨み節を言うよりも今どうするかにエネルギーを使っていただきたい」◆◆
太字部分は、前半があまり重要でないことを示しています。
憲法が押し付けられたのは事実だが、その憲法下で発展したのも事実であり、過去の経緯より未来の展望に注力すべし、と小林は述べたのです。小林の発言の要点は、後半にあります。
もし、この発言こそがニュース価値があると記者なりデスクなりが判断したのなら、その見出しは「憲法のもとで発展した」とか「恨み節よりも未来にエネルギーを」とか、後半部分に焦点を当てた見出しにしなくてはならないのです。
ニュース価値の判断を誤ったばかりか、基本的な読解も誤っている。
この記事は最近の中央紙の記事でも図抜けた出来損ないです。
なんでここまでひでえ見出しが採用されちゃったんでしょうかね。
私としては格好の餌食が見つかって有り難かったですが。