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ssh730 社説の読み方〜違憲だ、いや違憲じゃない編(1) [社説の読み方]

<2015>

 

 弱っちい野党、頼もしいネトウヨ、アンダーコントロールのマスメディアと、向かうところ敵なし、素っ裸で歩いても「総理、素敵なお召し物ですね」と言ってもらえそうなくらいな様相だった人間のクズ安倍晋三とその一味の足下がにわかに怪しくなってきました。

 原因はもちろん、例の安保関係11法案。反対派が「戦争法案」と語気を強めるアレです。衆議院憲法審査会で3人の参考人が揃って集団的自衛権行使を「違憲」と断じました。日本国憲法は我が国の最高法規、この憲法に反するあらゆる法規は効力を持ちません。

 国会の論戦がこんなに緊迫するのも久しぶりな感じです。こんなにexcitingな論戦に限ってNHKが中継しないってのは、どういう了見なんでしょうか。籾井の差し金ですかね。

 

 

 さて、久々の緊迫した国会論戦を中央紙も社説展開で取り上げています。

 今回はまず、安保法制に批判的な2紙の社説を紹介します。(太字はshiraによります)

 トップバッターは、ここのところ立て続けにこの件を社説展開する、もっともリキの入った毎日クン。

 

◆◆社説:安保転換を問う 「違憲」の波紋(2015.6.9.)

 ◇逆立ちした政府の理屈

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法案は憲法違反だと、国会で憲法学者3人が指摘したことの波紋が広がっている。政府・自民党が違憲ではないと強弁すればするほど、論理の苦しさが浮かび上がる。

 菅義偉官房長官、自民党の高村正彦副総裁、谷垣禎一幹事長らは、憲法の最終的な解釈権が最高裁にあり、憲法解釈変更は、砂川事件の最高裁判決(1959年)の法理論の範囲内だと主張している。

 この判決は、最高裁が自衛権について憲法判断をした唯一の判決だ。憲法9条のもと、日本の自衛権を認め「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」とした。

 菅氏は、記者会見で、判決のこの部分を読み上げ「違憲との指摘は当たらない。憲法の番人である最高裁が決定することだ」と述べた。

 だが、判決が認めたのは個別的自衛権であって、集団的自衛権ではない。昨年、憲法解釈を変更する過程で、公明党もそう主張した。そこで政府・自民党は、判決の一部を引用した72年の政府見解を根拠にする方針に切り替え、「自衛の措置」には集団的自衛権の行使が含まれると強引に結論づけた。

 今回、72年見解に基づく憲法解釈変更を憲法学者から「説明がつかない」と批判され、また最高裁判決に戻って反論を試みたわけだ。憲法の最終的な解釈権は憲法学者ではなく最高裁にあると言うためだろう。

 政府・自民党は、砂川事件の最高裁判決にはこだわるのに、衆参両院の「1票の格差」訴訟では、最高裁で「違憲状態」判決を受けても迅速に対処せず、判決を軽視するような態度をとっている。憲法に対して、ご都合主義と言わざるを得ない。

 日本の裁判所は、抽象的な違憲審査は行わず、具体的な争いが起きて初めて訴訟として認められる。政府や国会は、立法過程で法律が憲法に適合するかどうか、憲法学者らの意見にも耳を傾けながら、慎重な判断を求められるはずだ。

 政府・自民党の反論が苦しいのは、憲法違反の集団的自衛権の行使を無理に認めさせようとするからだ。

 中谷元防衛相は衆院の特別委員会で「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいのかという議論を踏まえて閣議決定を行った」と述べた。憲法に適合するように法律を制定するのではなく、政府が制定したい法律に適合するように憲法の解釈を変えたということだ。

 憲法98条は、憲法に反する法律は無効と定めている。政府の論理は逆立ちしている。◆◆


 

 毎日クンが政府の主張に反論する論拠は以下の通り。

  1. 砂川判決は個別的自衛権のみを認めたものである
  2. 最高裁の判断こそ重要と主張するに足りる姿勢をこれまで見せていない
  3. 日本の司法は違憲審査だけを判断するシステムを持っていない

 1.については次回以降触れようと思います。

 2.については的確な指摘でしょう。最高裁の判断が一番重要だというなら、その最高裁にダメ出しされた選挙区の問題を放置しているのは言い訳が効かないでしょう。

 3.は非常にいい指摘です。実は我が国では、ある行為や法規が違憲か否かだけを司法に判断してもらうことは不可能です。憲法判断が注目される裁判は小泉純一郎の靖国参拝に関するものとか過去にもいろいろありましたが、これらはすべて損害賠償請求等に付随して行われたものです。仮に安保11法案が可決されたとしても、それが違憲か否かを司法が判断するのは、この法案に関係して不利益を被った者が国を相手に訴えを起こす、例えば派遣先で亡くなった自衛官の遺族が、不当な派遣によって損害を被ったというような裁判を起こしたときに初めて可能性があります。それすらも、裁判所が判断を避ければそれっきりです。事実、自衛隊が合憲か違憲かという判断は、日本の司法はただの一度も踏み込んだことがありません。

 

 

 2本目は朝日クン。

 

◆◆安保法制違憲の疑いは深まった(2015.6.12.)

 違憲の疑いは晴れるどころか、ますます深まった。

 衆院特別委で審議中の安全保障関連法案は憲法に適合するか否か。きのうの衆院憲法審査会で、与野党が正面から意見をぶつけ合った。先週の参考人質疑で憲法学者3人が「違憲」と断じたのを受けてのことだ。

 法案決定までの与党協議を主導した自民党の高村正彦副総裁らは正当性を主張したが、説得力があったとは言い難い。

 高村氏は1959年の砂川事件判決を取り上げ、「憲法の番人である最高裁は必要な自衛の措置はとりうると言っている。何が必要かは時代によって変化していくのは当然だ」と憲法解釈の変更を正当化した。

 また、「54年に自衛隊をつくった時にも、ほとんどの憲法学者は憲法違反だと主張していた。(自衛隊をつくった)先達の常識のおかげで平和と安全を維持してきた」と述べた。

 自民党の平沢勝栄氏も「学者の意見に従って戦後の行政、政治が行われていたら、日本はとんでもないことになっていた。憲法栄えて国滅ぶの愚を犯してはならない」と語った。

 これに対し、民主党の枝野幸男幹事長は「自衛隊違憲論は、9条の解釈が確立する前の白地での議論。参考人の意見は定着した政府の憲法解釈を前提として集団的自衛権の容認は憲法違反だと論理的に指摘したものだ」と反論。砂川判決についても「判決から集団的自衛権の行使容認を導きうるのなら、判決後も政府が一貫して行使は許されないとしてきたことをどう説明するのか」と問うた。

 一連の自民党議員の主張からうかがえるのは、法案を違憲と断じた憲法学者の指摘をおとしめようという意図だ。平沢氏の発言にいたっては「学者の言うことなど聞く必要はない」と言わんばかりの、専門家に対する侮辱であり、国民に対する脅しでもある。

 最高裁について高村氏らは「憲法の番人」と持ち上げてはいるが、一票の格差是正を迫る最高裁の指摘をのらりくらりとかわしてきたのはだれか。

 与党側が慌てて乱暴な説明をしなければならないのは、集団的自衛権の行使はできないとした72年の政府見解の論理はそのままに、結論だけを「できる」と百八十度変えた閣議決定があまりに無理筋だったからだ。

 政府は「これまでの憲法解釈との論理的整合性及び法的安定性は保たれている」と繰り返すが、とても納得はできない。

 深まるばかりの疑義に、安倍首相はどう答えるか。◆◆

 

 朝日クンの立場は毎日クンとほぼ同じです。論拠も良く似ています。意見文としては毎日クンの方が上手ですが。朝日クン、ちょっと感情が先走っていて、論点の整理が雑な感じがします。

 まあでも、例の慰安婦問題報道でのバッシングで元気のなくなっていた朝日クンのテンションが上がっているのは、sshとしては歓迎ですね。議論は多様な違憲、じゃなくて意見が戦わされてこそ深まります。

 朝日クンにあって毎日クンにないのは枝野幸男の指摘です。私は別に民主党のシンパじゃないですが、この枝野の指摘はけっこう鋭いです。昨今の憲法学者は、自衛隊の違憲性にはあまり触れません。実際、今回承知された参考人も自衛隊を違憲とは主張していません。政権側の反論はかなり苦しいな、と思います。

 

 

 一方、政権の主張を擁護する中央紙も2紙あります。その違憲、じゃなくて意見は、次回以降ご紹介します。


 

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