LHR102 冬の中規模企画〜CF-1480再稼働プロジェクト(1) [DIY記]
<2015>
最近、本業や小論文に関する記事がめっきり減って、代わりに趣味の話ばっかり書いているsshです。
今回も趣味ネタです。
ssh473で紹介した我が家のカセットテレコの黒船、ソニーCF-1480のレストアに挑戦しました。
CF-1480は「スタジオ1480」の愛称で1974年の発売。兄と私の大切なオーディオマシンとして大活躍しました。その後ステレオやカセットプレーヤーに役目を譲ってからも、母がタイマーにつないで目覚まし時計代わりにラジオを鳴らすという使い方を思いつき、10年ほど前まで現役で働いていました。
母が養護施設暮らしになって完全に出番のなくなったCF-1480、別に使い道があるわけでもないのですが、このまま家電ゴミにするのも忍びなく、再稼働してみようと思い立ちました。原発と違ってこちらの再稼働は無害有益、誰に遠慮する必要もありません。
さて、自宅に持ち帰ってチェック。すると、問題多数。
- 電源コードがない。とりあえずの動作確認は電池で行う。
- FMロッドアンテナの先端が折れている。
- 電池ケースのスポンジがボロボロ。
- キャリングハンドルのストッパーが破損。直立で止まらず前に倒れてしまう。
- AMラジオはちゃんと入る。チューニングインジケーターのLEDも点灯する。
- FMがまったく入らない。バンド切替スイッチを2~3回切り替えたら入った。
- カセットは一応回るが、音はひどい状態。回転ムラも大きい。
- 録音ボタンが押せない。
- ソニー自慢のフルオートシャットオフ(録音/再生だけでなく早送り/巻き戻しでもカセットが終わるとラジオの電源もろともオフになる)が作動しない。
- 録音レベルと電源状態を示すREC/BATTメーターがまったく振れない。
- 音量・音質調整は多少のガリはあるが問題なし。
- ダイヤルライトはちゃんと光る。
- 外見は年相応に傷も汚れもあるが、まあまあ。
コンポの分解は何度もやっていますが、ラジカセは初めてです。
小さなボディにカセットとラジオが搭載されているラジカセはコンポよりも構造が複雑です。果たして私にレストアができるか。ビクビクしながらのスタートです
最初に内部のゴミ・ホコリに唖然。油を吸って黒く固まりかけたホコリや老化して粉々になったスポンジの成れの果てが底にいっぱいたまっています。電気掃除機とピンセットと綿棒を駆使してこのホコリを取るのに2日ほどかかりました。
最近のキカイは合理化設計で、軽量ボディに少数のメカやパーツ類が取り付けられているものが多い。それからするとCF-1480はえらく頑強です。厚手のプラスチックのボディは単なるシェル(殻)で、大量のメカ・パーツ類は頑丈な内部シャシに取り付けられています。スイッチ類やスピーカーもシャシに取り付けられており、ボディに付いているのはREC/BATTメーターと内蔵マイクだけです。
ボディを外した内部シャシ。奥がメカデッキ(カセット)部、手前がラジオ部。
シャシも頑丈ですが、金具類がまた頑丈。最近のキカイでお目にかかれないような厚手のしっかりした金具がふんだんに使われています。スピーカーも12cmと大型。こういう時ばかりは「昔は良かった」と言いたくなります。ただのモノラルのラジカセなのに重さは3kg以上あります。
初めて扱うキカイの分解作業は文字通り「恐る恐る」です。
配線を切ったりパーツを壊したりしないように注意しないといけない。組み立ての時に困らないように、内部構造を頭に入れつつ、取り外したネジや部品は整理して並べておく。特に面倒な場合はメモや写真をとっておく。それでも分解が進んでくると「果たして元通り組み立てられるのかしら」と不安になってきます。
それよりも何よりも、内部構造を理解しないといけない。どのベルトが何を駆動しているか、どの金具が何の仕事を担当しているか、一つずつ確認して理解していく。でないと修理ができない。何だかよくわからない部分は怖いから絶対にいじりません。
メカデッキ不調の原因No.1はゴムベルトの劣化です。CF-1480のベルトもかなり痛んでいました。通販で汎用ベルトを購入して交換します。
いろんなサイズのものが数十本まとめて800円ほどと安価でしたが、かなり工作精度の悪い個体も混じっていました。まあオネダンからすればこんなもんでしょう。ちゃんとしたベルトは1本800円くらいしますから。今回は動けばいいということでこれでいきます。
とりあえず最低限のベルト交換だけして組み立て直し(ちゃんと組み立てられました)、動かしてみました。
しかし、あまり良くなりません。テープの終盤になると回転ムラがひどい。モーターの力に対して抵抗が強い感じです。
古いメカデッキはグリスが固くなって抵抗が強くなったり固着したりするものらしいです。やれるだけの分解掃除をやってみることにします。
シャシからメカデッキを取り外し、さらにモーターも取り外します。
こうなると普通の家電ゴミよりもはるかにガラクタっぽい感じです。TC-K222ESGのベルト交換作業中も粗大ゴミのような様相を呈しておりましたが、これにはかないますまい。作業している本人は2回目の分解なのでわりと慣れているのですが。
シャシの奥にあるスプレー缶はシリコングリス。メカの古いグリスをできるだけ拭き取りこの新しいグリスを塗ります。拭き取りは綿棒とボロ布と無水アルコールが大活躍します。
メカデッキはやはり以前ベルト交換したTC-K222ESGやTC-FX66よりもずっと複雑です。
メカデッキは得てして高級品の方が構造はシンプルです。K222ESGは3つのモーターが仕事を分業しているのでベルトやギヤ・カム類が少ない。CF-1480は1つのモーターですべての仕事をまかなうため複雑なメカが必要です。このメカを見ていると「からくり人形」のようでちょっとうれしくなります。
本来ならすべてのギヤからカムから全部バラしてグリスアップすべきですが、そんな腕がないくらいの自覚はあります。何とかなりそうな部分だけを取り外して手入れ。手で動かした感じではメカの抵抗はかなり減りました。
このグリスアップの作業中、フルオートシャットオフのメカニズムがようやく理解でき、同時に不具合の原因もわかりました。カムが一ヶ所外れていたのです。バネを正しくかけてカムの位置を直したところ、ちゃんと作動するようになりました。
と、かなり頑張ってメカをいじくったのですが、残念ながらカセット再生はあまり改善しませんでした。原因はモーターにありそうです。替えのモーターなどもちろんありませんから、ここいらで観念するしかなさそうです。
話が長くなったので、作業終了後のCF-1480については次回に譲ります。