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ssh754 社説の読み方〜甘利明辞任編(1)  [社説の読み方]

<2016>

 

 ようやく、ホントにようやく、辞任しましたね。甘利明サン。

 ここまでの展開は実にのったらくったらでありました。10年前なら即辞任&議員辞職勧告&検察の捜査です。

 そもそも「政治とカネ」っつーキャッチコピーが気に入りません。小沢一郎秘書の些細な書類記載ミスも「政治とカネ」、今回の甘利明はご本人の受託収賄疑惑であるのに「政治とカネ」。両者は過失傷害と強盗殺人くらいレベルが違うというのに。

 

 こうも文句を言いたくなるのも、この1~2年で中央メディアがすっかり鈍になってしまったこと。おしょくじのけんは実によく効くようで。

 そんな状況下でも辞任せざるを得なかった甘利明。安倍政権下の閣僚辞任は4人目という体たらくですが、安倍晋三の極右の源たる日本会議メンバーの辞任はこれは初めて、かなりデカい事件です。そのデカい事件に対する中央紙各紙の社説。さすがに5紙とも本日(1/29)に社説展開しています。

 

 今回は情勢の変化と各紙のスタンスをチェックすべく、6年前の小沢一郎秘書逮捕事件のときの社説と比較しながら社説の読み方をやってみましょう。

 

 

 まずはトップバッターは、この辞任会見の前日に安倍晋三がメディアのお偉いさんとミーティング(おしょくじのけん)をする会場を貸していた読売クン。なお全紙とも、紙幅の都合で段落分けはところどころ変えてあります。また太字はすべてshiraによります。

◆◆甘利経財相辞任 秘書の監督責任は免れない

 ◆政権とアベノミクスを立て直せ

 安倍政権にとって、大きな打撃である。国会審議や環太平洋経済連携協定(TPP)の署名を控える中、早急に態勢を立て直さねばならない。

 経済政策「アベノミクス」の司令塔役を務める甘利明経済再生・財政相が、違法献金疑惑の責任を取り、辞任した。秘書による政治献金の不適切な取り扱いなどに関する監督責任を認めたものだ。甘利氏は、「秘書に責任転嫁はできない。いささかも国政に遅滞があってはならない。政治家は結果責任だ」と説明した。

 ◆予算審議への影響考慮

 野党は、夏の参院選をにらんで、甘利氏の疑惑を厳しく追及していた。既に、2016年度予算案の衆院審議が予定より遅れるなど、様々な影響が出ている。予算案の審議をはじめ、国政への悪影響を最小限に抑えるために閣僚を辞任する、という甘利氏の判断はやむを得まい。甘利氏は記者会見で、13年11月と14年2月の2回、千葉県白井市の建設会社から計100万円の現金を自らが受け取ったことを認めた。そのうえで、その資金は、自分が支部長を務める自民党支部への献金として適正に会計処理したと説明した。

 現金入り封筒を自分の背広の内ポケットに入れたとする週刊誌報道については、「そんなことはするはずがない」と否定した。一方で、秘書が受領した500万円のうち、200万円は党支部や甘利氏に近い神奈川県議への献金として処理したが、300万円は秘書が私的に使ったという。秘書は、道路工事を巡る建設会社と都市再生機構(UR)の補償交渉に関与し、会社から多数の接待も受けていたとされる。建設会社が、主要閣僚である甘利氏の政治力に期待し、接近してきたことは否めない。口利きの見返りに献金を受け取っていたのであれば、あっせん利得処罰法などに違反する恐れがある。

 ◆最後まで疑惑の解明を

 甘利氏が秘書の辞表を受理したのは当然である。

 「政治とカネ」の問題に対する国民の視線は厳しい。閣僚を辞任しても、疑惑に関する説明責任が果たされたことにはならない。甘利氏は、きちんと調査を完了し、甘利事務所と建設会社の関係や現金授受の全体像を明らかにすることが欠かせない。

 甘利氏は12年12月の第2次安倍内閣の発足と同時に、経済再生相に就任し、3年余にわたり、菅官房長官らとともに、政権の屋台骨を支えてきた。金融緩和、財政出動、成長戦略の3本の矢によるアベノミクスの推進役だった。

 日米など12か国によるTPP交渉の責任者も務めた。農業の市場開放などでフロマン米通商代表部(USTR)代表と渡り合い、昨年10月の大筋合意に貢献した。

 それだけに、甘利氏の辞任は安倍政権の重大な危機と言える。第2次内閣以降、小渕優子経済産業相ら3閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任しているが、今回の影響は格段に大きい。安倍首相は、「任命責任は私にある。国民に深くおわびしたい」と記者団に対して語った。

 来週には、16年度予算案に関する衆院予算委員会の本格的な質疑が始まる。2月4日には、ニュージーランドでTPPの署名式も予定されている。首相は、甘利氏の後任に、自民党の石原伸晃・元幹事長を起用した。石原氏が、党政調会長や税制調査会幹部などを歴任し、経済政策全般に精通していることを考慮したのだろう。石原氏は第2次安倍内閣で環境相を務めた際、福島県の原発事故に伴う汚染土の中間貯蔵施設の建設を巡り、「最後は金目でしょ」と語り、物議を醸したことがある。緊張感を持って、経済再生相の職務を果たしてもらいたい。

 ◆「成長重視」は堅持せよ

 甘利氏は、金融緩和による成長を優先する「リフレ派」で、安倍首相とも一致していた。「財政再建派」と目される石原氏への交代に伴い、アベノミクスに変化が生じるかどうかが、政策面の一つの焦点とみられる。

 日本経済は、緩やかに回復を続け、長年のデフレからの脱却に向けて、重要な局面を迎えている。経済を最優先し、成長を重視する安倍政権の基本政策は堅持することが大切である。

 民主党など野党は、国会審議で、甘利氏の疑惑の追及を続ける構えを崩していない。疑惑解明も重要だが、内政、外交両面で建設的な論戦を挑むことが求められる。◆◆


 

 一方、読売クンの6年前の社説はこちら(抜粋

◆◆ゼネコンによる違法な政治献金に捜査のメスが入った。東京地検特捜部が3日、民主党の小沢代表の公設第1秘書らを政治資金規正法違反容疑で逮捕した。

 「政治とカネ」にかかわる疑惑である。小沢氏は公党の党首として自らしっかり説明すべきだ。 

 検察当局は、小沢氏周辺はもちろん、他の政治家に対する資金の流れについても、全容を解明していかなければならない。 

 献金などを受けた政治家が、それぞれ説明責任を果たすべきことは、言うまでもない。◆◆

 

 6年前の社説にあって今回の社説にないもの。それは検察による捜査の部分。

 6年前は検察が動いたのだから当然として、今回の事件に関して検察や捜査にかかわる記述がまったくないのはどうしたことでしょう。読売クンはあっせん利得処罰法(受託収賄の一歩手前でも処罰できるように後から作られた法律)に違反する可能性があることを認めています。なれば、なぜ検察による全容解明を主張しないのか?ここは大いに疑問があります。

 さらに気になるのは、今回の社説の終盤にある「日本経済は、緩やかに・・・」の部分と、「疑惑解明も重要だが・・・」の部分。日本経済は全然回復していません。これはデータから明らかに右肩下がりです。さらに疑惑解明よりも内政・外交が大事とは、つまりこの件はもう幕を引けと言っているわけです。

 結論。

 読売クンの姿勢は小沢一郎と甘利明でまったく違います。こういう一貫性のない意見に説得力はありません。それもこれも安倍政権に甘すぎるからです。今回の社説は0点です。

 

 

 お次は毎日クン。

◆◆甘利氏辞任 説得力を欠いた釈明だ

 「政治とカネ」がまた、内閣を直撃した。甘利明経済再生担当相が口利きの見返りなどで自身や秘書が現金を受領したとされる疑惑をめぐり、辞任を表明した。アベノミクスの経済政策や環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の司令塔だった政権の要を失った影響は大きい。

 甘利氏は記者会見で自らの2度にわたる現金授受や秘書による300万円のヤミ献金受領を認めており、辞任は当然だ。だが、説明にはなお多くの疑問があり、説得力を欠く。国会は事態の解明を急ぐべきだ。

 「閣僚としてのポストは重いが、自分を律することはもっと重い」。甘利氏は記者会見でこう述べ、「けじめ」と引き際を強調した。だが、本当にそうだろうか。

 疑惑は千葉県白井市の建設会社側が「都市再生機構」(UR)とのトラブル解決の口利き依頼や見返りとして、甘利氏や秘書に合計約1200万円を提供したというものだ。建設会社の総務担当者の告発に基づき「週刊文春」が報じた。

 甘利氏は2013年11月に大臣室で50万円、14年2月にも地元事務所で50万円を受け取ったとの指摘に最初は「記憶があいまいだ」と語っていた。

 記者会見で甘利氏は2度の授受を認め、政治資金として適正処理を指示したと説明した。「紙袋に入ったのし袋」「菓子折りの入った紙袋と封筒」など、甘利氏が認めたのは旧態依然とした不明朗な金銭の授受だ。甘利氏は2度目の現金授受の際、総務担当者と産廃をめぐるトラブルが話題になったことも認めた。時期の違う政治献金を一括して処理したとする説明は不自然で、違法の疑いもある。

 事務所や秘書の関与に至っては、あきれるような実態である。甘利氏は総務担当者から秘書が500万円を受領していたことを認め、300万円は秘書が使い込んでいたと説明した。秘書が総務担当者から飲食などの接待を受けていたことも認めた。自ら進んでけじめをつけたと言うよりは、辞任に追い込まれたというのが実態だろう。

 URからは建設会社に多額の補償金が支払われている。政治家や秘書が口利きで報酬を得ることを禁じる「あっせん利得処罰法」に違反する疑いも指摘されている。秘書はUR側に係争の状況を確認したことは認めたものの、働きかけは否定したとされるが、徹底した究明が必要だ。

 「政治とカネ」をめぐる閣僚辞任は第2次安倍内閣発足から4人目だ。安倍晋三首相は甘利氏の続投を容認するような答弁をしていたが、これでは事態の認識が問われる。首相の責任は重大である。◆◆

 

 毎日クンの6年前はこちら。 

 ◆◆企業や業界との癒着につながる不明朗な政治家とカネの問題はこれまでも再三指摘されてきた。小沢氏もかつて、自らの資金管理団体が巨額な不動産を取得していた問題で与党から追及されたこともあった。 

 もちろん、今後の捜査の進展を慎重に見極めなくてはならない。だが、小沢氏は「古い自民党政治」と決別するため、自民党を離党し、政権交代を目指してきたはずだ。その小沢氏と自民党政治の象徴といえるゼネコンとの不透明な関係が今回明るみに出た。有権者の間には「小沢氏も古い体質から逃れられない」とのイメージが広がるだろう。 

 小沢氏の政治的な責任が大きいのはそこだ。今後、小沢氏の進退問題につながる可能性がある。野党優位で進んできた国会情勢も大きく変わるかもしれない。 

 民主党内には総選挙が近づく時期の逮捕に「政治的意図があるのではないか」と反発する声もある。だが、まず党を挙げて事実関係を確認し、国民に説明する方が先だ。◆◆

 

 読売クンと比べると甘利には厳しく小沢には若干同情的です。ネトサポくん(自民党ネットサポータークラブのメンバー)が見たら逆上しそうです。

 しかし、結果として2つの社説はかなりバランスが取れています。どちらも捜査の必要性を認めているし、どちらも道義的責任と説明責任を求めています。読売クンが完全にシカトしていた甘利の説明不足を、小沢の説明責任同様に指摘している。

 毎日クンの姿勢には一貫性があります。これは評価していいでしょう。読売クンも足の爪の垢でも煎じて飲んだらいいんじゃないですかね。

 

 

 長くなってきたので、今回はここまでにしましょう。日経クン・朝日クン、そしてsshのアイドル産経クンには次回以降登場していただきます。 

 



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