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ssh1058 ポストセンター試験てんやわんや [教育問題]

<2017>


 在学生の大半が大学進学するような高校の教員にとって、今もっとも頭の痛い問題は大学入試のリニューアルです。

 現在の中学3年生が高校3年生になったときに受験する大学入試、つまり2021年度入試から、センター試験の後釜テストがスタートします。

 高校としては、来年度新入生からポストセンター試験に対応できるように準備しておかないといけない。当然準備はもう始まっています。始まっているんですが、その進捗状況は実に心もとないものです。はっきり言って手探り。なぜかと言うと、テストの全体像が相変わらず不明確だから。

 ポストセンター試験については、報道を通じてちょこちょこと情報が流れています。が、もちろんあれではまだまだよくわからない。一般の方々にはさっぱいわからないでしょう。

 高校は当事者の中の当事者なんだから、文科省なり入試センターなり都道府県の行政なり、あるいはベネッセやらどこやらの受験産業から新聞報道やTVニュース以上の情報を得ているんだろう − と思う人はきっといますよね。私だって部外者ならそう思います。


 しかし。学校現場には、新聞報道以上の情報は来ていないのです。

 私は進路指導室常駐ですんで、大学・受験産業その他いろんな外部の方に会うチャンスがあります。ポストセンターについては、かなり頻繁に話題になります。文科省への愚痴や加計学園問題の次くらいには頻繁に。

 で、そこから新しい情報は、ほぼ手に入りません。せいぜい「◯◯の可能性がある」という程度。




 
 なぜこうも情報が流れてこないのか。

 政権が政権だけに情報統制が敷かれてるんじゃないか、とか邪推をしたくもなりますが、どうも現実はそんなに複雑なものじゃない。文科省の準備そのものが進んでいないようなんです。文科省内でも具体的なやり方がまだまだ固まっていない。だから歯切れの悪い断片的な情報しか流せないらしい。文科省も大変なんでしょう。加計学園の件もあるし。


 相手が何をしてくるか決まっていない以上、高校としても限定的な準備しかできません。差し当たり、はっきりしていることと確率が高いことに対して、後手に回らないようにしておく必要がある。

 「探求的な学び」なるものが求められるのは確定です。そういうことがやれるように、カリキュラムや時間割を下ごしらえしておく必要があります。

 「マークシートから記述式」というのがずいぶん言われています。が、これは大したことありません。少なくとも私の地元では高校の定期テストは記述式ですし、マークに特化した授業なんてものはやりようがありません。

 英語の外部検定試験利用は頭の痛いテーマです。外部検定はゼニがかかる。試験によっては地方には受験会場が近くにない。放っておけば東京など都市部の金持ちの子どもばかりが有利です。検定試験として広く普及しているのは実用英語技能検定(STEP)です。勤務校でもSTEPの対応を強化しました。現在ベネッセが自製の英語テストであるGTECの学生向けバージョン(検定料が安い)を外部検定として認定してもらえるように文科省に熱烈プッシュ中のようです。

 けど、個人情報漏えいで大問題起こしたあのベネッセが文科省とくんずほぐれつになるのはどーなんでしょーかねえ。すでに全国逆ギレテスト、じゃなくて全国学力テストはベネッセと国の完全癒着事業になってますが。



 文科省が目指す学力像そのものは、なかなか美しいものです。文面的には否定しにくい。文面はいかにも官僚さんっぽくて好かんですが、目指すものそのものは悪くはないです。

 それを認めた上で、ひとつ言っておきたいこと。

 人間が作ったもので、人間に対策できないものはありません。


 クルマの窃盗団や空き巣のプロに言わせると、人間が作った錠で、人間に開けられないものは一つもないそうです。人間が作ったものは人間には必ず壊せる。

 スポーツの世界でも、ルールの抜け道的なものを狙って結果を出す選手orチームは必ずいます。すると新しいルールが生まれる。しかしどんなにルールを変えても、そのルールの下で最高の結果を出すべく対策してくる選手orチームは必ず出てきます。

 ペーパーテストの点数だけで合否が決まるのは良くないということで全国の都道府県の高校入試で調査書(内申書)の重視・推薦入試・複数入試などが行われてきました。中学生は塾の力を借りて調査書のスコアを上げるにはどうすればいいかを対策し、推薦や複数入試をいかに有効利用するかの対策をしました。部活動が過熱したのは地区や方式によっては入試対策として有効だからです。


 文科省の目指す新しい学力観にしても、ポストセンター試験にしても、当初は混乱もあるでしょうが、いずれ必ず「対策」は講じられます。探求的な学びで高評価を得るにはどんな分野をどのように取り組めば有利か。英語の外部検定試験で高評価を得るなら、いつ・どのテストを受けるのがお得か。そんな「お買い得情報」はすぐに拡散するでしょう。


 そもそもセンター試験のご先祖様である共通一次試験からして「改革」として導入されたものじゃないですか。

 いろいろ悪口も言われるオールマークシートのセンター試験ですが、あれなかなかよくできたテストですよ。出題範囲は完全に高校の教育課程の範囲内。進学を志す高校生にとって、センター試験はよくできた基礎学力テストです。年度や教科によってバラツキはありますけど、高校の教育課程に則ったこの基礎学力テストで8割以上取れる受験生は少数です。85%以上取れれば東大をはじめとして日本中の難関大学に入学できるレベルにある。マークで測りきれない部分は各大学が個別試験で問うんですから、不足はありません。


 19811979年度国立大学入試からスタートした共通一次試験は、いろいろ批判を受けて19851983年ころから毎年コロコロとシステムを手直ししました。複数回受験の導入・自己採点禁止など。あまりに毎年変わるのでくじ引きのようだと揶揄され、バブル景気の影響もあって「国立離れ」が進んだりしました。ゼニさえあれば面倒なことはしたくないのが人情です。

 センター試験はそういう苦い経験の上にできたシステムです。ベストには程遠いにしても、よく錬られています。


 そういうセンター試験を廃して、まったく新しいテストを導入しようというのですから、相当な大事業です。恐らく、混乱が起きるでしょう。共通一次の混乱は10年近く続きました。まったく新しいシステムというのは定着するのに時間がかかります。

 ただ、共通一次は国立大学受験者だけのための試験だったんで、国立をあきらめてしまえば無関係だった。今回はすべての受験生に関わる大変更です。単純計算でも10年以上の混乱は起きると考えるべきじゃないでしょうかね。

 

コメント(2) 

コメント 2

bashy0322

初年度は問題易しくないと困りますね。
by bashy0322 (2017-11-11 18:49) 

shira

 bashyさんtyuuriさん、ご訪問ありがとうございます。
 これまで大学入試で大きな変更があった時、初年度は常に易しい問題でした。最近だと英語リスニングが導入されたときの問題はかなり易しいものでした。今回もそうせざるを得ないとは思うんですけど、さてどうなりますか。
by shira (2017-11-11 21:33) 

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