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ssh1079 教員の仕事はどこまで代行できるか [教育問題]

<2019>


 ブラック部活てな言葉が報道でも流れるようになってきました。生徒のみならず教員・保護者までもが過剰な部活動で疲弊しているという指摘。

 教育行政も重い腰を上げまして、わが勤務校にもお達しが来ました。まずは運動部関係で、今すぐは無理でもゆくゆくは平日1日+土日1日の週2日のオフを設け、土日も基本3時間くらいに留めるように改善していくべしと。文化部についてはまだ来てませんが、まもなく同様のものが来るでしょう。部活問題を調べている記者や学者のみなさんは吹奏楽部が一番ブラックだって見抜いてますから。


 どの職場もラクじゃないですけど、学校もラクじゃないです。教員の疲弊はモロに生徒の不利益に繋がります。部活だけじゃなく雑務に追われてドタバタしてると本業たる授業や生徒指導が後手に回ります。準備不足の授業やいい加減な生活面の指導しか受けられれない生徒はいい迷惑です。

 対策として一番いいのは、もちろん教員を増員すること。手が回らない現場にテコ入れするには増員がベスト。はっきり言って教員を5割増員すれば学校のトラブルはほとんど解決すると思います。

 しかしそういうのはなかなかゼニが出ないのですよね。教員も一応大卒の公務員ですから賃金はそこそこ必要で、財源とやらの問題であまり気楽には増やせないんでしょう。その割には財源を問われることもなくじゃんじゃかゼニ使ってる部門もありますけど。


 教員がドタバタしてるのは、学校の仕事は基本教員(教諭・講師)と行政職(事務職員・校用技師)と管理職(校長・教頭・事務長)だけでやってるからです。集金だろうがモノを運ぶのだろうが、すべて学校で働く人たちの仕事です。

 それが当然だと私達は思ってますけど、そうでしょうかね。企業なんかけっこう外注してますよね。アーティストだって板前だって弟子にあれこれやらせてます。タレントやエグゼクティブのスケジュール管理はマネージャーや秘書のお仕事です。我々は教材費の徴収でも自分たちでやりますけどアーティストが自分でチケット売ったり会場の手配したりってのは駆け出しならともかくフツーしないですよね。もちろん演奏を他人にやってもらうわけにはいかないでしょうけど。


 今回は、教員の仕事はどのくらい他の人に回せるものなのかを考えてみたいと思います。教員免許状を持たない人でもやれる仕事をもし外注なり何なりできれば、教員は今より本務に専念できるんじゃないでしょうか。校務をヘルプしてくれる人を雇うにしても、たぶん教員そのものを増やすよりも人件費もかからんはずです。



<教科指導>

 ・授業: これは代行不能です。説明は不要でしょう。

 ・テスト作成: 代行できる部分とできない部分があります。定期考査は代行不能です。定期考査は単なるテストではなく自分たちの授業がどれだけ効果があったかを教員がフィードバックするものでもあります。一方、小テストや実力テストや模擬試験は代行可能で、実際に業者のものを使うケースが多いです。

 ・テストの採点: 業者に外注したテストはもちろん採点も外注できます。自製の定期考査の採点を代行してもらうのはちょっと難しいですが、マークシートなど形式を選べば代行は可能でしょう。

 ・テスト監督: アルバイトでもできます。

 ・教材の選定や作成: 教科書選定は教育委員会が勝手に代行してる市があるようですが、たいてい問題になってます。教材の選定は現場の人間がやるべきことで代行は不向きです。教材作成は既成品を買うことで代行可能ですが、どの教材をいつどんな風に使うかは教員の判断が必要なので代行者にお任せというのは無理。

 ・補習など: 学力向上のための補習は塾や予備校での代行がすでに普及しています(費用の問題はありますが)。高校だと学期末・年度末に単位認定に関わる補充指導が必要になるケースがありますが、これは生徒の事情など理解していないとできないので代行してもらうのはちょっと無理です。

 ・個別指導や教科学習に関する質問への対応: 代行できないこともないですが、こういうのは教員の本務でしょう。

 ・成績処理: 評価そのものは授業を担当する教員がやらねばなりません。データの処理は機密の問題をクリアすれば外注可能です。


<生徒指導>

 ・日常的な指導: 遅刻やら服装面やらものの使い方のルールやらを守らせる仕事は教員でなくてもできます。実際海外だと遅刻切符を切るのがお仕事という人がいたりします。ただ代行してもらうにしても任せっきりというわけにはいきません。生徒指導には授業に関わる部分もあって、それは授業担当者がやるしかありません。

 ・問題行動があったときの指導: 代行してもらうことは一応可能ですが、きちんともののわかった人でないと危険です。現実的には教員がやるべきでしょう。犯罪レベルのトラブルは警察にお願いするしかありません。なお重大な問題が発生したときに生徒を処分などするのは学校長の仕事です。


<保健関係>

 ・健康診断・ケガや病気の対応など: 医療従事者が学校に詰めてくれればすべてお願いできます。健康管理や食事関係の指導も教員でなくてもできます。

 ・カウンセリング: すでに都道府県市町村のカウンセラーにお願いしています。


<部活動>

 ・技術指導: 100%外注可能です。実際に外部コーチにお願いしている学校はたくさんあります。

 ・引率: よほど無責任な人でなければ誰でもできます。

 ・安全管理: 学校の施設を使うにしても手続きを定めれば教員が張り付く必要はないでしょう。


<行事>

 ・遠足や修学旅行: 企画や事前学習は教員がやるべきでしょう。引率は全部は無理でも一部は外注可能です。集金はたいてい業者に任せます。

 ・運動会や音楽会など生徒を活動させる行事: これは代行不能です。この種の行事には生徒に集団生活を教えたり成就感を与えたりする教育的使命があります。運営にあたっての細々とした準備等を代行してもらうことはもちろん可能です。

 ・入学式や卒業式などのセレモニー: 来場者の誘導とか会場準備とか外注できる部分は結構ありますが、挨拶だの証書授与だのは職員がやらんわけにはいきません。


<生徒会>

 生徒会は重要な教育活動ですので外注は不可です。ただ教員以外の大人がアドバイザー的に加わるのは可能だし有益でしょう。


<学級>

 ・ホームルームや学活: 海外の高校だとホームルームどころか学級そのものがなく、クラス=授業の講座で授業ごとに変わるというのが普通です。何でも学級でやろうとしなければいいのですが、問題は日本の学校は校舎でも生徒の定員でも職員定数でもすべて学級単位で設計されているということです。それでもホームルームや学活を予備校のチューターのような人がやるのは可能だと思います。

 ・懇談会や家庭訪問: 懇談会はチューターでも可能です。家庭訪問はそれ自体不要じゃないかと思います。

 ・家庭への連絡: 子供の使いのような人でなければ誰でもできます。


<PTA・同窓会>

 合理化という一点から論ずればPTAはそれそのものがリストラ対象です。同窓会の窓口役はたいてい教員がやってますがこれは誰でも代行できます。


<清掃>

 生徒が学校の清掃をすることには教育的な意義があると私は思っていますが、もちろん業者に委託してしまえば生徒も職員もやる必要はありません。ゼニの問題だけ。


<教務の仕事>

 ・時間割: 外注した方がいいものが作れるくらいでしょう。

 ・年間計画: 同上です。

 ・物品の管理: 本来教員のすべき仕事じゃないと思います。

 ・カリキュラムの作成: カリキュラムはその学校の教育方針に関わりますから教員がやらざるを得ません。アドバイザーに入ってもらうのはアリです。

 ・校務分掌: 職員の任務分担を決めるのは学校長の仕事と定められています。

 ・校舎の管理: 戸締まりや解錠などは誰でもできます。


<日々のあれこれ>

 ・学級費などの集金: 100%代行か外注でやれます。

 ・印刷物の発行: 秘書のような人がいれば必要な情報を伝えてやってもらえばいいです。

 ・書類の発行: 調査書・成績証明書・各種の届けを書くのは教員でなくてもできます。

 ・文書の作成: 行政に提出する書類は誰かに作ってもらって教員が決済すれば済みます。



 教員がやってる仕事はまだまだたくさんありますが、とりあえず思いついたのはこんなところ。

 こうして見ると、教員免許状を持った人間でなくてもやれる仕事はいっぱいあります。

 教職員の増員が無理でも、例えば各校にアシスタントが1-2名いるだけでもずいぶんよくなるのじゃないかという気がします。

 あとはやっぱ部活ですね。学生のスポーツや文化活動の指導をやりたい人はたくさんいるはずです。何かいいシステムができれば教員にとっても生徒にとっても指導をしたい人にとってもWin-win(winwinwin?)になるんじゃないでしょうかね。

コメント(2) 

コメント 2

さとうろくぞう

「ブラック部活」のキーワードでピンとくるものがあったのでコメントします。
30年近く前、サッカー強豪校滝川二高にドイツ人指導者エンゲルス氏がコーチに就任した時に感じた違和感が、
「日本の生徒たちは練習休みと聞くと大喜びする、ドイツだと皆ガッカリするのに」
「日本人は義務と趣味のバランスが悪いのかもしれない」
「試合に勝つのも結果だけど、好きになってもらうのも立派な結果だ」
その滝川二高は今やサッカー日本代表を輩出する強豪校。

私も中高6年間吹奏楽部におりまして、最近話題になっている「吹奏楽部=ブラック」の風潮について調べてみました。「吹奏楽部あるある」的な否定できない部分も多々ありましたが、報道や三文雑誌の情報に対しては「ネガティブな部分を切り取り強調している」印象を受けました。いつぞやの「ロンドン五輪強いぞニッポン」の記事のような。

中学校の時、コンクール前なんかは夏休み返上で練習が当たり前でしたから、部活引退後は自由になったことに不安を覚えましたね、最終的にはそのエネルギーを勉強に充てましたけど。
私も中学卒業とともに吹奏楽を引退するつもりでしたが、結局高校でも続け、高校では巷で言われるブラックとは正反対のスチャラカっぷりに「ナンジャコリャ?」。
なんだかんだで24歳まで楽器を続け、いまでも楽器こそ吹いておりませんが、作曲編曲したり、ホラを吹いたりと音楽が染み付いております。

部活の顧問の場合「勝つこと」か「楽しむこと」か、それとも違う答えがあるのかもしれませんが、それによって教師、生徒、もしくは双方が不幸になることもあればいい方向に向かうのかもしれません。


by さとうろくぞう (2019-01-21 18:42) 

心如

平成30年度男女共同参画基本計画関係予算額(総括表)を見ると、「男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直し」という意味不明な項目に、5兆7,567億円の予算がついている。

毎年、5兆円以上の予算が、男女共同参画の視点に立った社会制度・慣行の見直しという意味不明なことに使われているのが事実のようです。5兆円あれば、一人1000万円で50万人を雇用出来ます。
防衛費よりも、こういう意味不明な予算を問題にすべきなのですけどね。、、
by 心如 (2019-06-18 14:28) 

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