ssh1144 「教育の敗北」という敗北宣言 [教育問題]
ssh1079 教員の仕事はどこまで代行できるか [教育問題]
ssh1070 プロデュースされる高校生 [教育問題]
ssh1058 ポストセンター試験てんやわんや [教育問題]
ssh1041 貸与奨学金も持ち家政策も終身雇用が前提 [教育問題]
奨学金は貸付ビジネスとしては成立しない、なぜなら借りるのは貧乏人の子どもたちだからもともと返済能力は期待できない。奨学のための奨学金は給付型にせざるを得ない―というのがssh1040「貸した奨学金は返らない」の論旨です。
この意見には今でも変更はありません。貧乏人にも教育の権利を認めるなら、なんとか財源を作って奨学金を給付型にせざるを得ない。それがイヤなら純粋に教育ローンとして運営し、「貧乏人は学校へ行くな」と国家レベルで教育権の否定を宣言することです。
まあ、教育権を認めないとなれば、もう先進国とは言えないから、非先進国宣言をしてOECDから脱退した方がいいでしょうね。そうすればPISAテストも参加しなくていいから、順位低下を気にしなくていいかも。っと、これは言い過ぎか。
ご存じの通り、日本は貸与型奨学金中心のシステムで長くやってきました。で、1980年代くらいまでは、それで一応うまいこと回っていました。
なぜうまく回っていたのか?理由として考えられるのは以下のようなこと。
1 貸与型とはいえ、免除職(教育職に就くと返還免除)や特別奨学金(全額を返す必要のない奨学金)など、実質的に給付型のシステムが併用されていた。
2 大学の学費が現在に比べはるかに割安だった。我が国の大学の学費は、物価スライド率をはるかに上回るハイペースで値上げされてきた。本年の消費者物価指数は1975年の約2倍だが、国立大学の授業料(入学金含まず)は年額535800円と、1975年(年額72000円)の7倍以上である。
3 経済が発展段階にあり、まじめにやっていれば卒業後の就職はほぼ確実であった。
4 これが本題だが、終身雇用制度であったため、収入がそれほど大きくなくても、時間をかけて借りたゼニを返すことが十分に見込めた。
ssh1040 貸した奨学金は返らない [教育問題]
ここ2〜3年ほど、奨学金返還の滞納が話題になっています。例えばこんなの。
◆◆
日本学生支援機構によると、平成20年度の奨学金の滞納者は計31万人で、滞納金の総額は723億円に上っている。機構では、正規の返済猶予手続きをせず滞納を続ける場合には延滞金を課すなどの措置を講じているが、それでも滞納者は4年前より6万1千人増えている。「返したくても返せない」という人も多い。(中略)
奨学金制度に詳しい千葉大の三輪定宣名誉教授は「卒業後も定職につけず、派遣やバイトで稼いだ少ない収入から奨学金を返済する人も多い。だから、延滞してしまうケースもある。貸与ではなく、給付型奨学金が早急に導入されるべきだ」と訴える。
民主党政権はマニフェスト(政権公約)で「給付型の検討を進める」としているが、国の財政は厳しさを増している。川端達夫文科相は6日の閣議後会見で「マニフェスト的には非常に意識しているが、最終的にはお金がネックになっている」と明かした。
同機構では「給付型の導入はどうなるか分からない。しかし、返済金の半額軽減で滞納者が減ることを期待している」としている。<MSN産経ニュース 4月11日>
◆◆
実は産経クン、3月には「奨学金滞納 借りたものを返すは常識」というタイトルのかなり手厳しい社説を書いていました。理由のない滞納は許されないと。
別に産経クンだけなじゃいんですが、世の中、奨学金と教育ローンをごっちゃにしてる人が相当いるようです。
世界の奨学金の主流は給付型(返済義務なし)で、貸与型(返済義務あり)が主流の日本はなかなか珍しい国です。
私も奨学金が「奨学」金であるためには、給付型がベストだと考えています。なぜなら、奨学金を貸与しても、返ってくるアテはないからです。
もっとはっきり言えば、貸した奨学金は返らない。
奨学金は、貸し付けビジネスにはなり得ません。
ssh1038 受験生を持つ親の心構え、というお話 [教育問題]
「受験生を持つ親の心構え。」雑誌やら新聞記事やらTVやら流言でいっぱい流れてますね。子どもを信頼せよ、あまり干渉するな、大事なことはよく話し合え、などなど。このようにして見事○○大学合格なんて実例も紹介されてたりして、ご立派なことです。だけど、ああいうとこに出てくる成功例って、やたらデキのいい子の話ばっかで、あんまし参考にならんのですよね。
***
自分が受験生だった時、受験が苦しくてたまらなくて逃げ出したいと思ったことはありませんでした。そりゃ受験勉強は大変でしたけど(特に大学入試は)、まあやるしかなかったですからね。
そんな時代もあったよね、時は流れて今や長男が中3生。私も「受験生の親」です。高校入試だけど。(注:長男は無事高校に進学しました。引き続きただいま年子の次男が高校受験生、はあ〜。)
まーしかし、実に落ち着かないものですね、受験生の親って立場は。期待と不安と怒りが1:60:39くらいに入り混じって、ホント気分がよろしくない。こんな思いをするのも愚息のボンクラさ加減ゆえであるのは当然ですが、当のご本人は案外ノホホンとしていて。これがまたアタマ来るんだな。
いや待てよ。自分の受験生時代も、こんな感じだったのか。私の両親も日々苦汁を反芻するような気分だったのかも。子を持って知る親心、親の心子知らず、ですか。
受験生本人が意外と余裕があるのは、彼ら彼女らは「受験勉強をする」ことができるからでしょう。自分の力で不安を弱めることができる。やれば1ミリでも目標に前進するわけだし、集中してる間は余計なことは考えないものです。学校に行けば相談相手はいっぱいいるし。
対する親は、基本的に何もできません。テスト結果に一喜一憂(一喜百憂?)させられながら、せいぜい食事や生活に気を遣ってあげるくらい。それに親は相談相手を探すのが難しい。こういう話題は相手を選びます。親って無力です。無力だから不安になります。
で、人間、不安になるとじっと黙っていられなくなります。
「あんた、勉強してるの?大丈夫なの?間に合うの?」なんて、強い口調でつい言っちゃう。さらに不安になってくると、しまいには「お願いだから○○よりいいとこに受かって」なんて子どもに懇願しちゃったり。(カギカッコ内が女言葉なのが気に入らない方は男言葉に変換してお読みください。)
大丈夫か?間に合うのか?って言われたって、返事のしようがないですわね。んなもん本人だってわからないし。ましてや懇願されたって困りますわねえ。
ssh1011 学力は本当に低下しているのか [教育問題]
小論文入試は医療系と教育系で特によく出題されます。
当然、医療問題と教育問題は、よくテーマになる。
でもこれが、けっこう危ない。
特に教育問題は、マスメディアでもちまたでもかなり適当に語られている。
たとえば「学力低下」。
学力低下という言葉を耳にしたことがないという人はいないでしょう。
ここで質問。
日本の学生の学力は低下していますか?
もしそうであると考えるなら、その根拠は、何ですか?
ssh677 内部進学 [教育問題]
<2014>
先日、私の地元で進学相談会が開かれました。
こういう会があると、それに併せて高校訪問をしてくれる大学がたくさんあります。せっかくイナカに足を運ぶのだからと、縁のある高校にも顔を出して頂けるということでしょう。ありがたいことです。
ところで、私は「馴染みの薄い」大学の方のお話を聞くのが大好きです。自分がよく知らない大学の関係者に直に話を聞けるというのは大チャンス。ここぞとばかりに、自分の知らないこと・知りたいことをあれこれ聞かせてもらいます。
今回、いくつかの私立大学の方をお話をするチャンスがありまして、そこで私がいままでほとんど意識していなかったことについて聞くことができました。
いわゆる「内部進学」のお話です。
内部進学というは、大学の付属高校から(推薦枠で)進学することです。ウチの長女が大ファンである櫻井翔は慶應義塾高校から慶應義塾大学に進んでますけど、その種のケースのことです。
名門と呼ばれる大学の付属初等中等学校に我が子を通わせるというのは、都市部の富裕層(およびそれに憧れる人たち)にとって極めて重要な意味があるようです。順調に成長してあわよくば東大、それがダメなら内部進学というのが、たぶん極上のサクセスストーリーなんでしょう。
酒井順子は、自らも立教女学院から立教大学に進んだ内部進学生だったのですけど、そのエッセイの中で、ある種の母親たちにとって名門私立小学校に通う我が子というのは最上のアクセサリーだと指摘しています。サクセスストーリーが約束された(ように見える)幼な子を連れて歩くアタシというのは、えも言われぬ幸福感があるのかも。
その内部進学ですが、大学としては、必ずしも「いいこと」でもないようなんです。
ssh675 あのころ日東駒専は高嶺の花だった〜ssh669の余白 [教育問題]
<2014>
ssh669「安近短」とは言うけれど は、昨今の受験生の進路選択について書いたものです。
昨今の大学受験は「安近短」、すなわちできれば学費の安い国公立大学か自宅に近い地元か近隣地区の大学へ、推薦AOセンター利用などを駆使して短期間に進学先を決めるのがを終えようとするのが大きな傾向であると言われています。
何と安易で夢のない若者たちだ、と、こういう傾向は世間様の批判を受けやすい。しかし、今日の経済状況と学費の高さを考えればむべなるかな、というのがssh669の主張でした。
先日、某有名予備校の方から、ちょっと納得できる話を聞きました。
「安近短」を読み解くヒントに、受験生の保護者の経験を考えるといいというんです。
一口に受験生の保護者と言っても幅がありますが、一番多いのは40~50歳くらいの方々でしょう。生まれ年で言うと1965~75年あたり。つまり昭和40年代生まれ。
彼ら彼女らが高校を卒業したのは1983~93年ころ。Japan As No.1などともてはやされたバブル時代とその前後です。大学進学率も上昇していたし、何よりも空前の好景気で教育費は相対的に低くなっていました。
女子大生という言葉が女子大に通う学生という意味から、大学生のオンナのコという意味に変わったのもこのころ。青山学院在学中の川島なお美が時代のアイコンでした。秋元康センセイが「女子大生」をプロデュースして大ウケして現在の足場を築いたのもこのころ。「女子大生=バカ」というのは時代のトレンド。でもそんなのカンケーない。バブル景気の日本では、就職に困ることなどありませんでした。
そういうご時世だったので、世の若者たちは楽しい大学生活をエンジョイするためにこぞって華やかな大都市(特に東京)の大学へと進みました。地方の大学なんてダサくて行ってられない。大学の人気はキャンパスの立地条件で大きく左右されました。
当時、東京の一等地にキャンパスを持つ私立大学は、軒並み競争率が高く、なかなか受かりませんでした。
日東駒専などと呼ばれる日本大・東洋大・駒沢大・専修大すら相当な難関。
それが、受験生の保護者の経験的価値観なんです。