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ssh1077 社説の読み方〜辺野古土砂投入編 [社説の読み方]

<2018>


ー2018.12.16.追記ありー


 結局、強行しましたね。辺野古の土砂投入。中央紙は軒並みトップ扱い。TVでも映像が流れました。石やコンクリートのブロック類でなくいきなり赤土を放り込むというのもずいぶん乱暴な話です。これにはさすがに沖縄のみならず各地で抗議運動が起きています。


 ということで各紙も社説展開しています。久しぶりに社説の読み方と参りましょう。今回はまず批判派の2紙から読み、その後推進派を見てみます。(太字はすべてshiraによります)


 まずは批判派の2紙を。予想通りの毎日クンと朝日クンです。


◆◆辺野古の土砂投入始まる 民意は埋め立てられない(毎日)


 わずか2カ月半前に示された民意を足蹴(あしげ)にするかのような政府の強権的姿勢に強く抗議する。


 米軍普天間飛行場の辺野古移設工事で、政府は埋め立て予定海域への土砂投入を開始した。埋め立てが進めば元の自然環境に戻すのは難しくなる。ただちに中止すべきだ。


 9月末の沖縄県知事選で玉城デニー氏が当選して以降、表向きは県側と対話するポーズをとりつつ、土砂投入の準備を性急に進めてきた政府の対応は不誠実というほかない。


 名護市の米軍キャンプ・シュワブのゲート前では移設反対派が抗議活動を行ったが、土砂の搬入に抵抗しようにも手出しのできない海路で事前に運び込まれていた。そのために民間の桟橋を使う奇策まで講じ、力ずくで工事を強行したのが政府だ。


 そこまでして埋め立てを急ぐのは、来年2月の県民投票までに既成事実化しておきたいからだろう。反対票が多数を占めても工事は進めるという政府の意思表示であり、国家権力が決めたことに地方は黙って従えと言っているのに等しい。


 政府側は県民にあきらめムードが広がることを期待しているようだが、その傲慢さが県民の対政府感情をこわばらせ、移設の実現がさらに遠のくとは考えないのだろうか。


 実際、移設の見通しは立っていない。工事の遅れに加え、埋め立て海域の一部に軟弱地盤が見つかったからだ。県側は軟弱地盤の改良に5年、施設の完成までには計13年かかるとの独自試算を発表した。


 それに対し政府は2022年度完成の目標を取り下げず、だんまりを決め込む。工事の長期化を認めると、一日も早い普天間飛行場の危険性除去という埋め立てを急ぐ最大の根拠が揺らぐからだろう。10年先の安全保障環境を見通すのも難しい。


 結局は県民の理解を得るより、米側に工事の進捗(しんちょく)をアピールすることを優先しているようにも見える。


 沖縄を敵に回しても政権は安泰だと高をくくっているのだとすれば、それを許している本土側の無関心も問われなければならない。


 仮に将来、移設が実現したとしても、県民の憎悪と反感に囲まれた基地が安定的に運用できるのか。


 埋め立て工事は強行できても、民意までは埋め立てられない。◆◆


 

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ssh1063 社説の読み方〜伊方原発差止仮処分編 [社説の読み方]

 


<2017>

 愛媛県の四国電力伊方原発3号機の運転差し止め仮処分を広島高等裁判所が決定というニュース。市民と国・企業が争うとたいてい後者が勝つ、それも上級審に行くほど市民不利という我が国の司法のあまりよろしくない状況からすると珍しい判断です。

 日頃足並みが揃わない中央5紙が足並み揃えて社説展開してます。sshとしては待ってましたの展開。さっそく餌食、いやネタにさせていただきましょう。今回は交際判断を評価するものから批判するものの順番に行きます。まずは(予想通りの)朝日クン。

◆◆伊方差し止め 火山国への根源的問い

 火山列島の日本で原発を稼働することへの重い問いかけだ。

 愛媛県の四国電力伊方原発3号機の運転を差し止める仮処分決定を、広島高裁が出した。熊本県阿蘇山が巨大噴火を起こせば、火砕流が伊方原発に達する可能性が否定できない、との理由だ。

 周辺に火山がある原発は多く、影響は大きい。国の原子力規制委員会電力会社は決定を真摯(しんし)に受け止めるべきだ。

 新規制基準の内規である「火山影響評価ガイド」は、原発から160キロ以内に火山がある場合、火砕流などが及ぶ可能性が「十分小さい」と評価できなければ、原発の立地に適さないと定めている。

 また、巨大噴火の時期や規模の予測はできないというのが多くの火山学者の見方だが、これについては、規制委は予兆があるはずだとの立場をとり、電力会社に「合格」を与えてきた。

 広島高裁は、巨大噴火が起きることは否定できないとする火山学者らの見解を踏まえ、伊方原発から約130キロ離れた阿蘇山で9万年前と同規模の噴火が発生したら、原発が被災する可能性は「十分小さい」とはいえないと指摘。規制基準を満たしたとする規制委の判断を「不合理」だと結論づけた。

 火山ガイドに沿った厳正な審査が行われていない、という判断である。

 司法からの疑義は、今回が初めてではない。

 九州電力川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)をめぐる昨年4月の福岡高裁宮崎支部の決定は、巨大噴火の発生頻度は低く「無視し得るものと容認するのが社会通念」として運転差し止めを認めなかった。だが、ガイドが噴火を予測可能としていることは「不合理」と断じていた。

 火山リスクの審査のあり方の不備が、繰り返し指摘されている事実は重い。規制委は、火山学者の意見に耳を傾け、根底から練り直すべきだ。

 数万年単位の火山現象のリスク評価が難しいのは事実だ。決定は、社会は自然災害とどう向き合うべきか、という根源的な問いを投げかけたといえる。

 巨大な災厄をもたらす破局的噴火が起これば、日本列島の広範囲に壊滅的な被害が及ぶ。原発だけ論議してどれほど意味があるか、という見方もあろう。

 しかし福島第一原発の事故の教訓は、めったにないとして対策をとらなければ、取り返しのつかない被害を招くというものだった。再稼働を進める政府は教訓に立ち返り、火山国で原発が成り立つかも検討すべきだ。◆◆

 朝日クンは交際高裁判断をほぼ全面支持です。川内原発についての判断も差し止めを認めなかった部分ではなくガイドには予測はできないという意見部分に焦点を当てています。

 朝日クンの最大の論拠はフクイチ事故です。そんなことは滅多に起こらないということが実際に起きたではないかと。これは重たい、重たーい事実です。マグニチュード9を超える地震・数メートルの津波なんて滅多に起きるものではありませんが、起きる時は起きます。実際に起きました。

 朝日クンの社説は意見文としてしごくまっとうです。ただし新鮮味はない。この論点で意見を述べるなら、フクイチ事故の対策が天災を甘くみたことで後手に回ったことを掘り返すべきでしょう。そこいらへんが食い足りないので、評価は100点満点の70点。

 

 では2本目。これまた予想通り、毎日クン。

 

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ssh1057 社説の読み方〜ユネスコ世界の記憶編 [社説の読み方]

<2017>


 2017年10月31日に本年のユネスコ「世界の記憶(旧:記憶遺産)」登録が発表されました。

 日本関係では、群馬県の古代石碑群である上野三碑(こうずけさんぴ)と、日韓の民間団体が共同申請した朝鮮通信使に関する記録が登録。2次大戦で国の方針に逆らい多くのユダヤ人の脱出を援助した杉原千畝の通称「杉原リスト」は落選。また、日中韓の民間団体が共同申請していた慰安婦関係の関係資料も落選。


 今回の件については(例によって)日経クン以外の中央紙4氏が社説展開。トーンは真っ二つに分かれていて、ssh的においしいネタになってます。では、賞味させていただきましょう。



 まずはハッピーな印象の朝日クンと毎日クン。


◆◆朝鮮通信使 交流の記憶を未来へ(朝日)

 ユネスコ(国連教育科学文化機関)の「世界の記憶」(旧・記憶遺産)に、群馬県の古代石碑群「上野三碑(こうずけさんぴ)」と、江戸時代に朝鮮王朝から日本に派遣された外交使節団「朝鮮通信使」に関する記録が選ばれた。

 「世界の記憶」は、歴史的な資料を後世に引き継ぐ趣旨で、2年に1度、各国や民間が申請した資料をもとにユネスコが審査する。日本からは前回までに5件が登録された。次代に残す貴重な記録が、新たに加わったことを歓迎したい。

 とくに注目すべきは、日韓の団体の共同申請で初めて認められた朝鮮通信使である。

 朝鮮通信使は、豊臣秀吉の朝鮮出兵で断絶した両国の国交を回復するため、朝鮮国王が派遣した使節団だ。1607年にはじまり、約200年で12回を数えた。最大で500人規模の一行は対馬や瀬戸内海、陸路をへて江戸へ入り、朝鮮国王の親書にあたる「国書」を届けた。

 今回登録された記録物は330点を超す。外交文書や日記のほか、朝鮮の文人や画師が日本の風景などを題材に筆をふるった漢詩や絵画など。寄港地や沿道で、日本人が行列のもようを描いた絵画も含まれる。

 共同申請は韓国の釜山文化財団が5年前、NPO法人・朝鮮通信使縁地連絡協議会(長崎県対馬市)に提案して実現した。協議会にはゆかりの地の自治体や民間団体が加わっている。

 だが朝鮮通信使には当初、秀吉の朝鮮出兵で日本に連行された捕虜を連れ戻す目的もあり、韓国では名称が異なる。申請時にどちらの名に合わせるかや、どの記録を対象にするかをめぐり双方で意見の違いもあった。

 話しあいを重ねて昨年、4年がかりで共同申請に至った。作業を通して関係者の交流が深まったことも意義深い。

 双方が心がけたのが、朝鮮通信使に随行した儒学者の雨森芳洲(あめのもりほうしゅう)が説いた「誠信の交わり」という。芳洲は対馬藩主に宛てた外交指針書「交隣提醒(こうりんていせい)」で、「互いに欺かず、争わず、真実をもって交わる」と説いた。相手を尊重し、対等な立場で接するという先人の教えは、いまの外交や交流にも通用する。

 同時に登録が決まった「上野三碑」は飛鳥~奈良時代前期に立てられた。石碑の碑文からは、地元の豪族と朝鮮半島にルーツをもつ渡来系の人々が共存していたことがうかがえる。

 朝鮮半島とは、古くから海を越えた交流があった。戦争や侵略の歴史を含め、互いに行き来し、重ねた歴史の記憶を刻み、未来の交流にいかしたい。(2017.11.1.)◆◆

 

 

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ssh755 社説の読み方〜甘利明辞任編(2) [社説の読み方]

<2016>

 

 ssh754の続きです。今回は残りの3紙を6年前と比べながらチェックします。太字や改行の改変についてはssh754同様shiraによるものです。

 

 最初は朝日クン。

◆◆甘利氏の辞任 幕引きにはできぬ

 大臣室での現金授受疑惑が報じられた甘利経済再生相が、辞任した。

 甘利氏はきのうの記者会見で、大臣室と地元事務所で50万円ずつ2回、計100万円を受け取ったことは認めたが、政治資金として適切に処理したと説明した。一方で、地元秘書が寄付として受け取った500万円のうち、300万円を個人で使い込んログイン前の続きでいたことを明らかにし、「国会議員としての監督責任や閣僚としての責務」などに鑑み、辞任を決意したという。安倍首相が続投させる考えを繰り返す中での突然の、そして釈然としない辞任劇である。

 疑惑の発端は、千葉県の建設会社の総務担当者が、独立行政法人都市再生機構(UR)との補償交渉にからむ「口利き」を甘利事務所に依頼、見返りとして現金や接待で1200万円を渡したとする証言を、週刊文春が掲載したことである。甘利氏や秘書に「口利き」の意図がなかったのかどうか、実際にURにどんな働きかけをしたのかなど、きのうの甘利氏の説明では、多くの部分がなお未解明のままだ。告発者の言い分との食い違いは、なお大きい。甘利氏にはさらに調査を進め、結果を速やかに公表する責任がある。

 国会の役割も大きい。甘利氏側と告発者の双方を招致して、それぞれの言い分を精査すべきだ。URや、URを所管する国土交通省とのかかわりも調べる必要がある。

 疑惑のさなかに、自民党の中から気になる声が聞こえた。党幹部から「わなを仕掛けられた感がある」といった発言が続いたのだ。現金を受け取った甘利氏の側が、あたかも被害者であるかの言い分である。

 趣旨のはっきりしない多額のカネが、いとも簡単に政治家に提供される。そして、政治家の側はよく知らない相手からでも当然のように受け取る――。党幹部の発言は、一部の政治家の間では、こうした現金のやりとりが日常的に行われている実態をうかがわせたとも言えるのではないか。

 甘利氏には、難航を重ねた環太平洋経済連携協定(TPP)を、粘り強い交渉で合意に導いた功績があるのは間違いない。安倍内閣にとっても、大きな痛手であろう。だからといって、閣僚を辞することで疑惑に幕を引くことは許されない。真相解明とともに、「政治とカネ」の問題にどう襟を正していくか、国会にも安倍首相にも問われている◆◆


 

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ssh754 社説の読み方〜甘利明辞任編(1)  [社説の読み方]

<2016>

 

 ようやく、ホントにようやく、辞任しましたね。甘利明サン。

 ここまでの展開は実にのったらくったらでありました。10年前なら即辞任&議員辞職勧告&検察の捜査です。

 そもそも「政治とカネ」っつーキャッチコピーが気に入りません。小沢一郎秘書の些細な書類記載ミスも「政治とカネ」、今回の甘利明はご本人の受託収賄疑惑であるのに「政治とカネ」。両者は過失傷害と強盗殺人くらいレベルが違うというのに。

 

 こうも文句を言いたくなるのも、この1~2年で中央メディアがすっかり鈍になってしまったこと。おしょくじのけんは実によく効くようで。

 そんな状況下でも辞任せざるを得なかった甘利明。安倍政権下の閣僚辞任は4人目という体たらくですが、安倍晋三の極右の源たる日本会議メンバーの辞任はこれは初めて、かなりデカい事件です。そのデカい事件に対する中央紙各紙の社説。さすがに5紙とも本日(1/29)に社説展開しています。

 

 今回は情勢の変化と各紙のスタンスをチェックすべく、6年前の小沢一郎秘書逮捕事件のときの社説と比較しながら社説の読み方をやってみましょう。

 

 

 まずはトップバッターは、この辞任会見の前日に安倍晋三がメディアのお偉いさんとミーティング(おしょくじのけん)をする会場を貸していた読売クン。なお全紙とも、紙幅の都合で段落分けはところどころ変えてあります。また太字はすべてshiraによります。

◆◆甘利経財相辞任 秘書の監督責任は免れない

 ◆政権とアベノミクスを立て直せ

 安倍政権にとって、大きな打撃である。国会審議や環太平洋経済連携協定(TPP)の署名を控える中、早急に態勢を立て直さねばならない。

 経済政策「アベノミクス」の司令塔役を務める甘利明経済再生・財政相が、違法献金疑惑の責任を取り、辞任した。秘書による政治献金の不適切な取り扱いなどに関する監督責任を認めたものだ。甘利氏は、「秘書に責任転嫁はできない。いささかも国政に遅滞があってはならない。政治家は結果責任だ」と説明した。

 ◆予算審議への影響考慮

 野党は、夏の参院選をにらんで、甘利氏の疑惑を厳しく追及していた。既に、2016年度予算案の衆院審議が予定より遅れるなど、様々な影響が出ている。予算案の審議をはじめ、国政への悪影響を最小限に抑えるために閣僚を辞任する、という甘利氏の判断はやむを得まい。甘利氏は記者会見で、13年11月と14年2月の2回、千葉県白井市の建設会社から計100万円の現金を自らが受け取ったことを認めた。そのうえで、その資金は、自分が支部長を務める自民党支部への献金として適正に会計処理したと説明した。

 現金入り封筒を自分の背広の内ポケットに入れたとする週刊誌報道については、「そんなことはするはずがない」と否定した。一方で、秘書が受領した500万円のうち、200万円は党支部や甘利氏に近い神奈川県議への献金として処理したが、300万円は秘書が私的に使ったという。秘書は、道路工事を巡る建設会社と都市再生機構(UR)の補償交渉に関与し、会社から多数の接待も受けていたとされる。建設会社が、主要閣僚である甘利氏の政治力に期待し、接近してきたことは否めない。口利きの見返りに献金を受け取っていたのであれば、あっせん利得処罰法などに違反する恐れがある。

 ◆最後まで疑惑の解明を

 甘利氏が秘書の辞表を受理したのは当然である。

 「政治とカネ」の問題に対する国民の視線は厳しい。閣僚を辞任しても、疑惑に関する説明責任が果たされたことにはならない。甘利氏は、きちんと調査を完了し、甘利事務所と建設会社の関係や現金授受の全体像を明らかにすることが欠かせない。

 甘利氏は12年12月の第2次安倍内閣の発足と同時に、経済再生相に就任し、3年余にわたり、菅官房長官らとともに、政権の屋台骨を支えてきた。金融緩和、財政出動、成長戦略の3本の矢によるアベノミクスの推進役だった。

 日米など12か国によるTPP交渉の責任者も務めた。農業の市場開放などでフロマン米通商代表部(USTR)代表と渡り合い、昨年10月の大筋合意に貢献した。

 それだけに、甘利氏の辞任は安倍政権の重大な危機と言える。第2次内閣以降、小渕優子経済産業相ら3閣僚が「政治とカネ」の問題で辞任しているが、今回の影響は格段に大きい。安倍首相は、「任命責任は私にある。国民に深くおわびしたい」と記者団に対して語った。

 来週には、16年度予算案に関する衆院予算委員会の本格的な質疑が始まる。2月4日には、ニュージーランドでTPPの署名式も予定されている。首相は、甘利氏の後任に、自民党の石原伸晃・元幹事長を起用した。石原氏が、党政調会長や税制調査会幹部などを歴任し、経済政策全般に精通していることを考慮したのだろう。石原氏は第2次安倍内閣で環境相を務めた際、福島県の原発事故に伴う汚染土の中間貯蔵施設の建設を巡り、「最後は金目でしょ」と語り、物議を醸したことがある。緊張感を持って、経済再生相の職務を果たしてもらいたい。

 ◆「成長重視」は堅持せよ

 甘利氏は、金融緩和による成長を優先する「リフレ派」で、安倍首相とも一致していた。「財政再建派」と目される石原氏への交代に伴い、アベノミクスに変化が生じるかどうかが、政策面の一つの焦点とみられる。

 日本経済は、緩やかに回復を続け、長年のデフレからの脱却に向けて、重要な局面を迎えている。経済を最優先し、成長を重視する安倍政権の基本政策は堅持することが大切である。

 民主党など野党は、国会審議で、甘利氏の疑惑の追及を続ける構えを崩していない。疑惑解明も重要だが、内政、外交両面で建設的な論戦を挑むことが求められる。◆◆


 

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ssh732 社説の読み方〜違憲だ、いや違憲じゃない編(3) [社説の読み方]

<2015>

 

 安保関連11法案に対して社説展開してきたのは4紙だけだと思っていたら、珍しく日経が社説展開してきました。

 取り上げないのも不公平なので、第3弾として取り上げさせていただきます。


◆◆現実がもたらしてきた「憲法解釈の変遷」(2015.6.13.) 

 国会で審議中の安全保障関連法案の柱である集団的自衛権の行使容認をめぐって、憲法解釈の対立が続いている。衆院憲法審査会で自民党推薦の参考人として出席した憲法学者が違憲と明言したのをきっかけに、政府が統一見解を示す事態となり、与野党がそれぞれの立場から合憲・違憲の水かけ論を繰りひろげているものだ。

 この問題は9条解釈という戦後ずっと続いてきた政治の一大テーマで別に目新しいものではない。9条が抱える構造問題でもある。

 現実はめまぐるしく動いていく。本来であれば、憲法を改正して対応するのがいちばんいいのに、それができない。そこで解釈によって矛盾がないように知的アクロバットをしてきた。

 振りかえれば、憲法制定議会で吉田茂首相は自衛権を否定するような答弁さえしている。自衛隊について「憲法の容認するものとみなすのは、憲法の真意を曲げる論理の飛躍というべきである」(清宮四郎著『憲法1』)というのが憲法学の一般的な見解だった。

 しかし米ソ冷戦、朝鮮戦争で国際環境が一変、「戦力なき軍隊」として創設された自衛隊はどんどん大きくなり、存在を否定できなくなった。「違憲合法論」は憲法学の困惑の表現だった。

 冷戦後もPKO法、周辺事態法……状況の変化を踏まえ、政府はぎりぎりの線で憲法解釈をしてきた。そこに権力闘争である政治の駆け引きが絡まり合う。憲法解釈の変遷こそが戦後日本である。

 そして今、日本を取り巻く安全保障環境はたしかに大きく変化している。北朝鮮はいつ暴発するか分からない。

 中国の台頭で米国を軸とする国際社会の力の均衡が崩れたことも見逃せない。尖閣諸島の領有権をめぐる摩擦にとどまらない。中国の海軍力の増強、南シナ海での埋め立ては日本のシーレーン(海上交通路)に影響を及ぼさないのだろうか。かりにあの空域で中国が防空識別圏を設定すればいったいどうなるのだろうか。

 「9条の定める理想は理想として尊重するが、現実には、その時々の情勢判断によって、保有する軍備の水準、同盟を組む相手国等を、それらが全体として日本を危険にするか安全にするか、安全にするとしてもいかなるコストにおいてかなどを勘案しながら決定していくしかない」(長谷部恭男著『憲法』)。その通りである。◆◆


 

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ssh731 社説の読み方〜違憲だ、いや違憲じゃない編(2) [社説の読み方]

<2015>

 

 天下無敵の安倍内閣の様相を一転させた安保関連11法案。ssh730では法案を批判する毎日クンと朝日クンの社説を紹介しました。今回はその続編。法案を支持する2紙の社説です。

 

 まずは読売クン。(太字はshiraによります)

 

◆◆集団的自衛権 脅威を直視した議論が大切だ (2015.6.11.)

 日本の平和を確保するには、憲法との整合性を前提として、現実の脅威や安全保障環境を直視した議論が大切である。

 政府は、集団的自衛権の限定行使を容認する安保関連法案について、「従前の憲法解釈との論理的整合性が十分に保たれている」とする見解を発表した。

 1959年の最高裁の砂川事件判決は、日本の存立を全うするための自衛措置を可能とした。72年の政府見解は、国民の権利を守るための武力行使を認めた。今回の政府見解は、一連の「基本的な論理」が維持されると指摘した。

 一方で、日本の安保環境の根本的な変容を理由に、他国に対する第三国の攻撃でも「我が国の存立を脅かすことも起こり得る」とし、自衛の措置としての集団的自衛権の限定行使を容認している。

 妥当な内容である。日本を取り巻く関係国のパワーバランスの変化や、軍事技術の革新的な進展、大量破壊兵器の拡散などによって他国への攻撃が日本の安全を脅かすシナリオは十分あり得る。

 朝鮮半島有事が日本に波及する場合、弾道ミサイルや大量破壊兵器がなかった時代と比べて、今はその脅威が格段に増している。

 そもそも国民の権利が根底から覆される明白な危険がある「存立危機事態」に日本が陥った場合、自衛隊を動かさず、傍観しているだけで良いはずがあるまい。

 事態がより危機的な状況に発展する前に、早期収拾を図ることは合理的な対応でもある。

 疑問なのは、法案を憲法違反と明言する憲法学者の尻馬に乗るように、解釈変更による集団的自衛権の行使容認を「違憲」とする声が民主党内に出てきたことだ。

 民主党は4月にまとめた党見解で、「安倍政権が進める集団的自衛権の行使は容認しない」として、将来の行使容認に含みを残していたのではなかったのか。

 自民党の高村正彦副総裁が「憲法学者の言うことを無批判にうのみにする政治家」を批判しているのは、理解できる。

 憲法学界では、自衛隊についても、伝統的な解釈に沿って「憲法が保持を禁じる『戦力』に該当する」などと主張する向きが少なくない。現実の政治との乖離(かいり)が指摘されるゆえんである。

 中国の軍備増強や海洋進出、北朝鮮の核・ミサイル開発などを踏まえれば、憲法の範囲内で自衛隊の役割を拡大し、日米同盟と国際連携を強化して抑止力を高めるのは当然だ。国会でも、そうした観点の論議を展開してほしい。◆◆


 

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ssh730 社説の読み方〜違憲だ、いや違憲じゃない編(1) [社説の読み方]

<2015>

 

 弱っちい野党、頼もしいネトウヨ、アンダーコントロールのマスメディアと、向かうところ敵なし、素っ裸で歩いても「総理、素敵なお召し物ですね」と言ってもらえそうなくらいな様相だった人間のクズ安倍晋三とその一味の足下がにわかに怪しくなってきました。

 原因はもちろん、例の安保関係11法案。反対派が「戦争法案」と語気を強めるアレです。衆議院憲法審査会で3人の参考人が揃って集団的自衛権行使を「違憲」と断じました。日本国憲法は我が国の最高法規、この憲法に反するあらゆる法規は効力を持ちません。

 国会の論戦がこんなに緊迫するのも久しぶりな感じです。こんなにexcitingな論戦に限ってNHKが中継しないってのは、どういう了見なんでしょうか。籾井の差し金ですかね。

 

 

 さて、久々の緊迫した国会論戦を中央紙も社説展開で取り上げています。

 今回はまず、安保法制に批判的な2紙の社説を紹介します。(太字はshiraによります)

 トップバッターは、ここのところ立て続けにこの件を社説展開する、もっともリキの入った毎日クン。

 

◆◆社説:安保転換を問う 「違憲」の波紋(2015.6.9.)

 ◇逆立ちした政府の理屈

 集団的自衛権の行使を認めた安全保障関連法案は憲法違反だと、国会で憲法学者3人が指摘したことの波紋が広がっている。政府・自民党が違憲ではないと強弁すればするほど、論理の苦しさが浮かび上がる。

 菅義偉官房長官、自民党の高村正彦副総裁、谷垣禎一幹事長らは、憲法の最終的な解釈権が最高裁にあり、憲法解釈変更は、砂川事件の最高裁判決(1959年)の法理論の範囲内だと主張している。

 この判決は、最高裁が自衛権について憲法判断をした唯一の判決だ。憲法9条のもと、日本の自衛権を認め「自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛のための措置をとりうる」とした。

 菅氏は、記者会見で、判決のこの部分を読み上げ「違憲との指摘は当たらない。憲法の番人である最高裁が決定することだ」と述べた。

 だが、判決が認めたのは個別的自衛権であって、集団的自衛権ではない。昨年、憲法解釈を変更する過程で、公明党もそう主張した。そこで政府・自民党は、判決の一部を引用した72年の政府見解を根拠にする方針に切り替え、「自衛の措置」には集団的自衛権の行使が含まれると強引に結論づけた。

 今回、72年見解に基づく憲法解釈変更を憲法学者から「説明がつかない」と批判され、また最高裁判決に戻って反論を試みたわけだ。憲法の最終的な解釈権は憲法学者ではなく最高裁にあると言うためだろう。

 政府・自民党は、砂川事件の最高裁判決にはこだわるのに、衆参両院の「1票の格差」訴訟では、最高裁で「違憲状態」判決を受けても迅速に対処せず、判決を軽視するような態度をとっている。憲法に対して、ご都合主義と言わざるを得ない。

 日本の裁判所は、抽象的な違憲審査は行わず、具体的な争いが起きて初めて訴訟として認められる。政府や国会は、立法過程で法律が憲法に適合するかどうか、憲法学者らの意見にも耳を傾けながら、慎重な判断を求められるはずだ。

 政府・自民党の反論が苦しいのは、憲法違反の集団的自衛権の行使を無理に認めさせようとするからだ。

 中谷元防衛相は衆院の特別委員会で「現在の憲法をいかにこの法案に適応させていけばいいのかという議論を踏まえて閣議決定を行った」と述べた。憲法に適合するように法律を制定するのではなく、政府が制定したい法律に適合するように憲法の解釈を変えたということだ。

 憲法98条は、憲法に反する法律は無効と定めている。政府の論理は逆立ちしている。◆◆


 

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ssh711 社説の読み方〜邦人人質殺害事件編 [社説の読み方]

<2015>

 

 後藤健二さんの殺害映像が流されて1週間経ちました。

 今回の邦人人質事件についてしつこく記事をアップしてきたsshとしては、「社説の読み方」でもこの件を取り上げます。

 5紙の論調はかなり似ています。イスラム国を強く非難しているのは共通。当然です。到底許される行為ではありませんから。

 そこで今回は、それ以外の部分を太字にして見ましょう。


◆◆後藤氏殺害映像 「イスラム国」の蛮行を糾弾する(読売 2015.2.2.)

 ◆日本人標的のテロに警戒強めよ

 尊い人命を弄ぶ、卑劣な蛮行である。断固として糾弾する。

 重要なのは、「テロに屈しない」という国際社会共通の原則を堅持し、関係国との連帯を強めることだ。在留邦人の安全確保にも万全を期す必要がある。

 シリアでの人質事件で、過激派組織「イスラム国」は、拘束していた後藤健二さんを殺害したとするビデオ映像を動画サイトに投稿した。政府は、映像の信ぴょう性は高いと判断している。

 ◆国際社会の結束不可欠

 殺された湯川遥菜さんとみられる写真も既に公開されている。2人の犠牲が事実なら、痛ましい結末であり、強い怒りを覚える。

 安倍首相が「テロリストたちを決して許さない。その罪を償わせるために国際社会と連携する」と表明したのは、当然である。

 オバマ米大統領は「極悪な殺人を非難する」と声明を発表し、英仏首脳も足並みをそろえた。

 犯行グループのメンバーは映像の中で、後藤さんの殺害に関連して、日本がイスラム国との戦いに参加したことを一方的に非難した。

 黒装束の男は「勝ち目のない戦いに参加するという安倍(首相)の無謀な決断」と批判した。「このナイフは、あらゆる場所で日本人の虐殺をもたらす」とも脅迫している。

 身勝手な解釈に基づき、日本を一方的に「敵」と決めつける主張であり、決して容認できない。

 首相が表明した2億ドルの中東支援は、非軍事分野の人道援助だ。避難民向けの医療や食料支援、インフラ整備などに充てられる。

 そもそも国際ルールを無視し、虐殺、略奪、誘拐、占拠など、凶悪で非道な犯罪行為を重ねてきたのは、イスラム国である。

 イスラム国を封じ込めるには、国際社会の結束が欠かせない。米国主導の有志連合には約60か国が参加している。国連安全保障理事会も邦人人質事件に関し、イスラム国への非難声明を発表した。

 ◆自己責任にとどまらず

 日本が対イスラム国包囲網に参加することは、国際社会の一員として当然の責務である。

 人質事件は、最初の脅迫映像が流れた後、めまぐるしく事態が動いた。犯行グループは、2億ドルの身代金を要求し、その後、ヨルダンで収監されている爆破テロ犯の死刑囚の釈放に切り替えた。

 実現しないなら、イスラム国に拘束中のヨルダン軍パイロットと後藤さんを殺害すると脅した。

 ヨルダン政府は、パイロットの解放を条件に死刑囚を釈放するとして、ギリギリの人質交換交渉を進めたが、実を結ばなかった。

 日本政府は、「テロに屈しない」原則と「人命尊重」の観点の両立という困難な対応を迫られた。

 イスラム国は、インターネットを利用した「劇場型」の脅迫・殺害を繰り返す特異な集団である。「ヨルダン頼み」の手探りの交渉には限界があったと言える。

 ジャーナリストの後藤さんは昨年10月、退避勧告が出ていたシリアにあえて入国した後、「何か起こっても責任は私自身にある」とのメッセージを残していた。

 「自己責任」に言及したものだが、結果的に、日本政府だけでなく、ヨルダン政府など多くの関係者を巻き込み、本人一人の責任では済まない事態を招いたのは否定できない。

 同様の事態を避けるため、今後、危険地域への渡航には従来以上に慎重な判断が求められる。

 今回の事件により、日本人が海外で誘拐の標的となる危険が一層高まったことにも留意したい。

 過激派組織にとっては、日本の軍事的報復を恐れる必要はない。日本に圧力をかけ、中東各国などに間接的に要求をのませる手法を再び使う可能性もある。

 安倍首相が在留邦人らの安全確保の強化を閣僚に指示したのは、こうした事情があるためだ。

 ◆邦人救出の議論も要る

 首相は、海外での邦人救出に自衛隊を活用するための法整備を検討する方針である。領域国による自衛隊受け入れの同意など、様々なハードルもあろう。政府・与党で議論を深めることが大切だ。

 中東支援の強化も重要となる。首相は、「食料、医療といった人道支援をさらに拡充していく」と強調している。

 イスラム国の壊滅までには時間を要しようが、「テロとの戦い」の一翼を担い、その最前線に立つ中東諸国を支援するという現在の方針を変えてはなるまい。

 今後も、欧米や中東の各国との連携を強め、地域の安定とテロの拡散阻止に努めたい。◆◆


 


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ssh689 普天間は本当に還るのか?〜ssh686,687の余白 [社説の読み方]

<2014>

 

 ssh686,6872回にわたって沖縄県知事選に関する社説を取り上げました。辺野古推進派の論拠が代わり映えのしないものであったのに対し、慎重派はそれらへの反論が述べられており、意見文としてのデキは慎重派に軍配が上がるというのが結論でした。


 ところで、6紙の社説を読んでいて、一つの疑念が浮かんで来ました。 

 辺野古のきれいな海を埋め立てて基地を新設するという行為自体をすばらしい工事だと礼賛する人は、まさかいないでしょう。あれは「普天間返還のための唯一の選択肢」であるとされているからこそ忍従できることです。

 でも、辺野古に基地が完成したら、普天間は本当に返還されるんでしょうかね?


◆◆米国防総省当局者は15日、日本政府が目指す米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の2019年2月までの運用停止について、「日米が合意した22年度以降の返還が唯一の方策だ。日本政府から正式な要請はない」と述べ、米政府として受け入れる考えがないことを明らかにした。

 国防総省当局者は朝日新聞の取材に、「19年2月の運用停止について米政府は同意していない」と明言。「日米間でそうした話が出たとしても、日本側からの一方的な打診であり、正式な要請はない」と説明した。米政府は、日本政府から正式な要請は受けていないとの立場を示すこうした説明で、日本の打診を事実上拒否する意向を明確にしたと言える。

 普天間飛行場について、日米両政府は13年4月に合意した米軍基地返還計画で、名護市辺野古沖に建設する代替施設に海兵隊の航空部隊や司令部機能などを移設させた後、22年度以降に返還するとしている。(朝日新聞 1017)◆◆

 

 これ見ると、現政権の言ってることは「空手形(からてがた)」っぽいですな。

 それどころか、1026日の東京新聞によると、米軍は適当な名目をつけて2022年以降も普天間を使い続ける意思があるらしいんです。

 それはいくらなんでもひどい話じゃないっすか。それが本当なら「ふざけるな、約束が違うじゃないか、出てけ!」と一喝してやらんといかん。

 でも、日本政府に米軍を一喝する度胸なんか、ありますか?


 

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