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ssh523 定型句・定型表現〜小論キーワード(15) [小論キーワード]

<2012>

 

 今回の小論キーワードは「定型句」「定型表現」

 この言葉、手元の辞書の見出し語にはありません。あるのは「定型」と「定型詩」だけ。

 

 定型・・・一定のかた。決まったかた。

 定型詩というのは、短歌や俳句や漢詩の絶句みたいな、決まった型を持った詩のことです。

 

 文字通りには、定型句とは決まった形のフレーズ。定型表現とは決まった型の表現ということです。

 

 定型句・定型表現は、私たちの生活に必要不可欠なものです。

 手紙であれば、「拝啓」で始めて「陽春の候」とか時候のあいさつをして、「ますますご清栄のこととお慶び申し上げます」とか書いてから、「さて、・・・」と本題に入る。

 結婚式の祝辞なら「本日はお日柄もよろしく」と、別に日頃気にもしていない六曜を引き合いに出してから本題に入る。スピーチなら「ご指名でありますので・・・」とか始める。

 これらの定型句は、本題に入る前にお互いの共感を確認する重要な機能を持っています。人間、いきなり本題に入られたのでは面食らうものです。まずは型にはまった表現で始めると、本題にもスムーズに入れる。

 

 

 そんな定型句・定型表現が、なぜ小論キーワードなのか?

 実は、定型句や定型表現を多用するのは、小論の世界では批判の対象なのです。


 

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ssh426 同質化・同調圧力〜小論キーワード(14) [小論キーワード]

<2011>

 

 今回の小論キーワードは「同質化」と「同調圧力」。

 この2つは、特に若い世代が社会生活(学校生活を含む)で感じているストレスを考察するのに非常に有効です。

 

  実はどちらの言葉も、手元の辞書には載ってません。

 同質というのは、文字通り「質が同じ」ということ。

 「これらは同質の問題だ。」と言えば、これらの問題は何らかの違いがあるように見えても、実質的には同じような問題であるということです。学校だと「学習面の問題と生活面の問題は得てして同質だ。」なんて言い方があります。どちらも根は同じ、ということです。

 

 同質化というのは、言葉とおりに捉えれば、同じようなものになるという意味です。

 ただし。

 小論文のテキストでは、この言葉は大半が批判的な意味で使われます。つまり好ましくない同質化。

 

 例としては、

 ・グローバル化は、文化の同質化を伴う。

 ・画一的なカリキュラムは、生徒の個性を奪い、多様であるはずの生徒に同質化を促す危険がある。

 ・どの地方都市へ行っても全国チェーン企業の看板が立ち並び、風景が同質化している。  

などなど。

 小論テキスト的には、同質化というのは、没個性とか、多様性の衰退とか、オンリーワンを認めないという感じの文脈で用いられることが多いようです。

 

 教育関係だと、学校というのは生徒を同質化させやすいという指摘がよく行われます。

 同じ地区の同じ年齢の人間が集まる場である以上、どうしても同質化されやすい。

 しかも学校は、一定のカリキュラムに従って、1人の教員が40人かそこらの生徒に向かっている。どうしても「みんな同じ」にやろうとしがちです。

 みんなと同じようにするというのは、社会で生きていく上で大切なことでもありますが、度を超すとただのone of themとしてしか生きていけなくなります。

 学校のクラスは同質集団である、などとよく言われます。


 


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ssh397 文化資本〜小論キーワード(13) [小論キーワード]

<2010>

 

 今回の小論キーワードはちょっと耳慣れないものを選びました。文化資本です。

 高校生には聞き慣れないかも知れませんが、これは最近よく使われている言葉です。

 どんな場面で登場するかというと、格差問題・階級問題。そして、何より教育問題。

 お金持ちの家の子どもばかりが高学歴を得るのはなぜか?

 

 文化資本という概念を提唱したのは、フランスの社会学者ピエール・ブルデュー。

 裕福な家庭に育った子どもは高学歴を得やすい。どこの国でもそうですけど、現代日本はかなり露骨に家庭経済力が子どもの学力を握ってしまっています。

 ブルデューが提唱したのは、これが単なるゼニの問題ではなくて、子どもが育つ環境の文化レベルによるものだということ。

 まあたとえば、親がピアノやバイオリンを弾くのが上手で、それを日ごろから家で楽しんでいれば、子どもは親の楽器に早くから触れて、それらの楽器演奏ができるようになる可能性が高い。 

 親が読書好きで、書物がいっぱいあると、子どもも自然と読書に親しむ。

 親が芸術に造詣が深く、美術館やコンサートに行くことを常々楽しんでいれば、子どももそういうものとの親和性が高まる。

 親が高学歴であれば、子どもは学校教育のさまざまな場面で有利である。

 

 家にピアノやバイオリンや書物があるとか、親が書物や音楽や絵画を楽しむとか、親が高学歴であるとか、こういう、親の持つ有形無形の文化レベルのことを、文化資本と呼びます。

 

 


 

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ssh376 絶対/相対〜小論キーワード(12) [小論キーワード]

<2010>

 

 ごぶさたの小論キーワードです。第12回となる今回のテーマは絶対相対

 

 絶対も相対もかなりよく使う言葉です。絶対的・相対的・絶対評価・相対評価・絶対音感・絶対王政・相対速度・相対性理論などなど。特によく使うのは「絶対」です。小さな子どもでも「ぜったいイヤ!」とか言いますから。

 ただし。よく使うということは、何気なく使っているということです。

 小論文は「何気なく」読んだり書いたりするものではないです。意味と使い方をはっきりさせておきましょう。

 

・絶対: 1 他の何物とも比較されず、同等に並ぶものがないこと。「神は絶対の存在」
     2 どんな制約や条件もうけつけないもの。「絶対の信頼を得る」
      反意語: 相対

・相対: 1 向き合っていること。相対していること。
     2 相互に関係し合っていて、互いに相手方を切り離しては成り立たないこと。「相対評価」
      反意語: 絶対                              

(学研現代新国語辞典改定新版より) 

 相対には比べる相手が必要。一方、絶対は比べる相手が存在しない
 相対は、他者との比較によって決まる。周りが大切。
 絶対は、他者を必要としない。唯我独尊。

 相対的というのは「比較の問題として」ということ。
 逆に絶対的というのは「比較の問題じゃなくて」ということ。

 

 大学時代、サークルに身長185cmくらいの先輩がいました(男性です)185cmといえば、ずいぶん大きな人です。実際、サークルでも一番の高身長でした。
 ところが、高校バレー男子の強豪校だと、185cmというのはチームの平均身長です。アタッカーやブロッカーは190cm以上あるのがザラです。さらにこれがNBAともなれば、185cmなんてのはまるで小柄です。

 

 これを絶対と相対を使うと、こう表現できます。
 185cmという身長は、絶対的にはかなり高い。しかし高校男子バレーの選手と比べると相対的には平均であり、さらにNBAの選手と比べれば、相対的に低い方である。

 

 絶対的な尺度と相対的な尺度は、一致することもあるし、しないこともあります。絶対的に優れていても、相対的には大した事がない場合がある。もちろんその逆に、相対的には優れていても、絶対的には大した事がないという場合もある。また、絶対的にも相対的にも優れているということももちろんあります。


 

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ssh289 モチベーション〜小論キーワード(11) [小論キーワード]

<2009>

 

 今回の小論キーワードは、<モチベーション>。つまり、motivation です。

 

 モチベーションって、どんな意味ですか?

 はい、「動機」ね。

 一般的なお答えです。日常会話なら、それでいいでしょう。

 

 でも、実は、ちょいと違うんです。

 動機は  motive といいます。

 動機を与えるという動詞が motivate

 motivation は、その名詞形。

 つまり、動機を与えること、動機付け>がモチベーションの正確な意味です。

 

 教育畑では、モチベーションは今も昔も最重要課題です。いかにして生徒を動機付けるか?

 要するに、いかにしてやる気にさせるか、これが教育畑の課題たるモチベーションです。


 


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ssh255 奉仕とボランティア 〜 小論キーワード(10) [小論キーワード]

<2009>

 

 奉仕とボランティア。

 ふだんは割とごっちゃに使われているみたいですが、この2つ、案外と違いがあります。

 

 メイドカフェで、メイドさんがご主人様にしてくれるのはご奉仕。

 田中康夫が一躍名を馳せたのは、阪神淡路大震災でのボランティア。

 この2つは、入れ替えはムリでしょう。メイドさんのボランティアとか、震災の奉仕とか言うのは、かなりヘンです。

 

 奉仕とボランティアは、違うんです。どう違う?

 ボランティアは自発的でなければなりません。

 

◆◆ほうし(奉仕)

 1 社会や他人のために(個人的利害を無視して)つくすこと。「社会奉仕」など。

 2 商人が安い値段で品物を売ること。「奉仕品」など

 類義語: サービス◆◆ (学研現代新国語辞典 改訂新版)

 

◆◆ボランティア

 公共福祉などのために自主的に無報酬で奉仕活動をする人。篤志奉仕家。「ボランティア活動」「ボランティア精神」など。◆◆(同上 太字はshiraによる)

 

 

volunteerの英和辞典説明は、こんな感じ。

◆◆volunteer

()

 1  無償奉仕者 ボランティア

 2 有志 志願者

 3 志願兵

()

 1 進んで申し出る

 2 (自発的に)提供する

 3 (情報・意見など)を自発的に述べる

 4 志願兵になる

 5 ()に勝手に(・・・)を引き受けさせる◆◆(ロングマン英和辞典)

 

 


 

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ssh230 予定調和 〜 小論キーワード(9) [小論キーワード]

<2008>

 

 予定調和。 

 使われ始めたのはそんなに最近ではありません。私の学生時代、つまり四半世紀前にはすでに評論で使われていました。

 

 私が最初に予定調和という言葉に出会ったのは、音楽評論のジャンルでした。

 某地方都市で貧乏学生の身であった私は、文学部の学生のクセに本もロクに読まず映画もロクに見ず、なけなしのゼニはあらかたレコード(当時CDはまだ普及してなかった)に費やしておりました。で、毎日45時間は音楽聴いて過ごしていました。もちろんロクに勉強もせず。

 そういう偏った生活をしていたため、音楽評論にはけっこう敏感でした。そこで初めて、予定調和なる言葉を目にしました。

 

 さてさて、小論キーワードとしての「予定調和」。

 フツーの国語事典には載ってないんでネットで調べてみましたところ、意外や、もとは哲学用語。

 「はてな」にこんな記事があります。(注:リンク有効)

 http://d.hatena.ne.jp/keyword/%CD%BD%C4%EA%C4%B4%CF%C2

 

 ちょっと前半は理解がつらいけど、ご心配には及びません。チェックすべきは、以下の部分だけ。

 

◆◆これが転じて、小説やドラマなどの物語世界において決まった結末が定められ、物語がその結末へ向けて収束する事を予定調和と呼ぶようになったようだ。

 ミステリー小説においてはどのような形であれ事件は解決し、恋愛小説においては何らかの恋愛が成就する……というように多くの物語では一定の結末を迎える事が約束されており、何らかの予想可能な結末を迎える事になる。そのような意味から考えれば、物語は広い意味での予定調和の上に成り立っていると言えるだろう。

 ただし一般的には、時代劇において悪代官や腹黒商人が、民衆の味方である先の天下の副将軍や退屈な旗本によって懲らしめられるといった予め結末はわかっている物語において、その予定通りの結末が描かれる事を予定調和と呼ぶ事が多い。

 またゲームなどにおいては、どんな行動をとったかに関わらず一定の結末へ向かうようなベクトルが定められているものを揶揄する表現として使われる場合もある。◆◆


 

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ssh228 自己責任 〜 小論キーワード(8) [小論キーワード]

<2008>

 

 高校生だとピンとこない人も多いかもしれませんが、ある程度以上の年齢の人であれば、自己責任という言葉で真っ先に思い出すのは、2004年のイラク日本人人質事件。

 

◆◆イラク現地の武装勢力が、イラクに入国した外国籍のボランティア、NGO職員、民間企業社員、占領軍関係者などを誘拐する事件が頻発した。誘拐の要求の多くは、誘拐した外国人を人質に、彼らが本籍を置く政府に対して、イラクに派遣した軍隊(日本の自衛隊を含む)の引き上げを要求するものであった。

日本政府は、当時イラクへの渡航自粛勧告とイラクからの退避勧告を行なっており、被害者がそれを無視して渡航したことや、この拉致事件の解決を目的とし、被害者家族らが自衛隊の撤退を要求し、それがメディアで大きく報道されたことから、被害者とその家族に対する「自己責任」という言葉をキーワードとした批判、さらにそれに対する反批判などで国内政治家・マスコミ・世論が様々な見解をぶつけるなど、日本国内の注目を集めた。◆◆(Wikipedia)

 

 この自己責任論騒動は、海外のメディアでも報道されました。今回の人質問題で、日本では人質となった本人たちの自己責任を指摘する自己責任論が起きていると。

 ところが、ここで1つ、意外な問題が起きていました。

 

 「自己責任」という言葉が翻訳できなかったのです。「自己責任」を意味する語は、他国の言語にはあんまりないらしいんです。少なくとも英語にはありません。(*付記参照)

 手元の英語の辞書をいくつか調べてみましたが、やはりありませんでした。

 

 2004年当時の海外メディアも、self-responsibility という訳語を創って対応したようです。

 でも、self-responsibility と言われても、ぜんぜんピンとこないんですよね。

 で、仕方ないので、JIKOSEKININ とそのまま書いて、説明を付けるという記事もずいぶんあったようです。

 

 


 

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ssh224 マッチポンプ 〜 小論キーワード(7) [小論キーワード]

<2008>

 

 私の本職、つまり主な収入源は英語の先生のお仕事です。

 なんですが、カタカナ語を多用するヤツがどーにも好かんのです。ちょっと日本語にする努力を怠ってませんかねえ?

 

 んでもって、「マッチポンプ」という言葉を見た時も、ま~た、聞きかじりの英語使いやがって、とイラついたんですよ。

 

 イラついたのは、私の知識が浅いせいでした。マッチポンプって、1960年代生まれだったんですね。

 しかもメイドインジャパンの言葉。どーもすいませんでした。


◆◆ マッチポンプ・・・俗語。マッチで火をつけてポンプで消化する意から、他人の不正を暴露して騒ぎたて、陰で収拾工作を行って報酬をまきあげること。またはその行為者。英語matchpumpからの和製語(学研現代新国語辞典より 一部改変)◆◆

 

 「日本語俗語辞典」というサイトによると、1966年に自民党代議士田中彰治が国会である問題を話題にして裏で収拾工作をして金品を要求したという事件があって、このときに田中代議士についたあだ名がマッチポンプだったようです。 へえ、知らなかった。

 

 


 

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ssh212 矮小化〜小論キーワード(6) [小論キーワード]

<2008>

 

 「矮小化」という言葉は、小論文を書く時にはあまり使わないかもしれません。しかし、課題文には盛大に登場します。

 学生時代の私のごとく漢字の苦手な人なら、まずこの漢字の読み書きからして「?」かも。私も高2のころには矮小化を「わいしょうか」と正しく読めなかったですよ。

 

 矮小というのは、元来は「こじんまり」「小さい」というような意味です。だから、矮小化というのは、文字通りなら、ものごとを小さくすること。しかし、実際の用法は違います。

 

 論述文で使われる「矮小化」は、「本来大きな問題や複雑な物事を、意図的に小さく単純なものにねじ曲げること」と考えればいいでしょう。

 問題の矮小化なんて言い方が特によく使われます。

 

 例えば、在日外国人の家族がいて、種々の事情で差別的な環境で育ち、そこの子どもが学校ではいじめ、家庭ではDVを受けながら育ち、んでもってある日、見ず知らずの日本人の若者を通り魔的に襲ってケガをさせたとします。ありそうな話ですが、これはあくまで例です。何か具体的な事実を意識したのではありません。

 

 さて、そういう事件があったとします。たぶん、いろいろな考察がされるでしょう。

 もちろん通り魔犯罪そのものは断罪されるべきです。

 ですが、ある人は、日本社会の閉鎖性も指摘するでしょう。別の人は、いじめやDVの問題にも触れるでしょう。

 

 ところが、中にはこんな意見も出るかもしれません。

 「凶悪事件には断固とした処置をせよ。」

 

 まあ、それそのものは、まったくのデタラメではありませんが、それにしても、あまりにものの見方が単純すぎます。もちろん、通り魔は許されませんが、許されないというなら、差別だっていじめだって許されない問題です。

 

 


 

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