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ssh468 大阪府のタレント弁護士知事とそのお友達の考える「ルールとマネジメント教育」を要約してみる〜ssh457の余白 [教育問題]

<2011>

 

 ssh457「もし大阪府のタレント弁護士知事が教育をルールとマネジメントだけで語れると思っていたら」はおかげ様で好評をいただき、多くの方々に読んで頂くことができました。にほんブログ村の人気記事ランキングでもカテゴリー第1位を獲得できました。感謝申し上げます。

 

 さて、そんな大阪府のそんな知事センセイとそのお友達の大阪維新の会の府議センセイ方ですが、ずいぶんと大胆な条例制定を画策しているようであります。

 以下がその条例案の前文。

 

  ◆◆大阪府における教育行政は、選挙を通じて民意を代表する議会及び首長と、教育委員会及び同委員会の管理下におかれる学校組織(学校教職員を含む)が、法令に従ってともに役割を担い、協力し、補完し合うことによって初めて理想的に実現されうるものである。教育行政からあまりに政治が遠ざけられ、教育に民意が十分に反映されてこなかったという不均衡な役割分担を改善し、政治が適切に教育行政における役割を果たし、民の力が確実に教育行政に及ばなければならない。

  教育の政治的中立性や教育委員会の独立性という概念は、従来、教育行政に政治は一切関与できないかのように認識され、その結果、教員組織と教育行政は聖域扱いされがちであった。しかし、教育の政治的中立性とは、本来、教育基本法(平成18年法律第120号)第14条に規定されているとおり、「特定の政党を支持し、又はこれに反対するための政治教育」などを行ってはならないとの趣旨であって、教員組織と教育行政に政治が関与できない、すなわち住民が一切の手出しをできないということではない。

  地方教育行政の組織及び運営に関する法律(昭和31年法律第162号)では、第23条及び第24条において、教育委員会と地方公共団体の長の職権権限の分担を規定し、教育委員会に広範な職務権限を与えている一方、第25条においては、教育委員会及び地方公共団体の長は、事務の管理・執行にあたって、「条例」に基づかなければならない旨を定めている。すなわち、議会が条例制定を通じて、教育行政に関与し、民意を反映することは、禁じられているどころか、法律上も明らかに予定されているのである。

  大阪府における現状は、府内学校の児童・生徒が十分に自己の人格を完成、実現されているとはいい難い状況にある。とりわけ加速する昨今のグローバル社会に十分対応できる人材育成を実現する教育には、時代の変化への敏感な認識が不可欠である。大阪府の教育は、常に世界の動向を注視しつつ、激化する国際競争に対応できるものでなければならない。教育行政の主体が過去の教育を引きずり、時宜にかなった教育内容を実現しないとなれば、国際競争から取りのこされるのは自明である。

  我々は、我が国の未来を担う子供たちの適切な教育を受ける権利に対して責任を負うことを自覚し、この条例を制定する。◆◆

 

 さてさて、一体橋下センセイとそのお友達は、どんな教育を目指したいのでしょうか?

 この前文を要約してみると、それが見えてくるやも知れません。やってみましょう。読解トレーニングにもなるし。


 

 まず第1段落。これは簡単。要約すると、

 教育は政治介入が必要である。

 

 受験生のみなさん、こういう時に「民」とか「民意」とか「理想的」とかいう言葉を残してはダメですよ。この段落ではそんなことは述べていません。日本はどこでも民主主義的に選挙が行われているのであり、選挙結果が民意であるのは「あたりまえのこと」です。あたりまえのことを要約に盛り込む必要はありません。

 

 続いて第2段落。これも大変に簡単です。

 教育に政治が介入するのは違法ではない。

 解説は省略。

 

 お次は第3段落。あれ?これも簡単だ。

 教育への政治介入はどんどんやってよし。

 何か、似たような話ばっかじゃん。

 

 では第4段落。

 競争に勝てる人材を育てる教育をすべし。

 あ~良かった。やっと様子の違う内容だ。似たような話の繰り返しで飽きて来てたんで。

 とはいえ、これもラクな要約だなあ。

 

 ラスト、第5段落。

 これは要約の必要なし。特に内容はありません。カットしてよし。

 

 というわけで、全部合わせると、こういう要約になります。 

 「競争に勝てる人材を育てられるように、教育に政治が介入します。」

 日頃なにかとお忙しい大阪府のみなさん、これが「教育基本条例」前文の要約であります。

 

 

 こうなると、心配なのが大阪の公教育の将来。

 というのは、政治が教育を主導した例は歴史上山ほどあるのですが、そのどれもが失敗例だからです。

 今もっとも政治主導の教育が行われているのは北朝鮮でしょう。北朝鮮の教育は政治の意向が強力に働いています。

 あれが理想だ、という人はいますかね?

 他にも、スターリン時代のソ連、ヒトラー時代のドイツ、1930~45年の大日本帝国などは、政治の力が強力に教育を動かしていました。で、どこも失敗した。教育が失敗しただけならともかく、国そのものが崩壊や敗戦へとつながった。

 

 教育に政治が介入すると、ロクなことがないのですよ。成功例って、一つでもありますかねえ?

 

 今の大阪府の教育がダメなのかどうかも、よ~く考えてみた方がいいですよ。

 もちろん様々な問題はあるでしょう。けど、教育現場に問題はいつでもあります。どこにでもあります。

 とりあえずまずまずに動いているものを、欲をかいていじり壊してしまうのはもったいないです。

 金の卵を生むガチョウの腹を割いて殺してしまうという寓話みたいになるかも。

 

 

 で、私の予想。

 実は私は、わりと楽天的な予想をしています。たぶん壊滅的な状況にはならないだろうと。

 理由はssh457に書いた首都大の話と同じです。

 石原慎太郎は、それまで十分成功裡に機能していた都立の高等教育機関を、大した必然性もないのに統合改組しました。怒った多くの職員が職場を去りました。

 実は誕生直後の首都大の評価は受験関係者の間で懐疑的でした。

 実際、大学ランキングで都立大の頃より明確にランクがダウンしました。偏差値も大幅ダウン。

 つまり人気が下がったんです。

 あの大学先々大丈夫かいな?とみんなが思ったんでしょう。受験生はバカじゃありません。

 私もかなり心配でした。

 もし石原流が推し進められれば、間違いなくこの大学はぶっ壊れるな、と。そんなとこに生徒を送っていいのかと。

 

 でも首都大は壊れませんでした。なぜか?

 それは、石原が教育内容に関して興味がほぼ全くなかったから。

 彼が首都大設立を強行したのは、恐らく東京都立大学の自主独立精神が気に入らなかったからです。

 実際の教育の中身には、全然興味がない。だから実際の運営は放ったらかし。

 ほとぼりが冷めた頃に、旧都立大の職員は首都大に戻ってきました。

 おかげで首都大は人気を回復しました。

 

 彼のこの性向は、中等教育(高校)にも現れています。彼は都教組の職員がタテつくのがトサカに来ていたんですね。それと今もって東大コンプレックスが抜けない彼としては、都立高校から東大に進学する生徒が少ないのも感情的に気に入らなかったんでしょう。彼は君が代斉唱で職員に総攻撃を仕掛け、日比谷などの進学校に予算と人員を傾斜配分して東大合格者育成を狙います。

 彼の興味は、その先には全くないんですね。

 実際に各学校の各教室でどんな教育が行われているか、生徒や保護者や職員がどんなことを望み、どんなことをやっているのかには全然興味がない。服従して結果が出ればそれでいい。

 東京の各高校の各教室では、職員がさまざまな工夫を凝らして少しでもマトモな教育を行おうとしていることでしょう。どーせ行政は目立つところしか見てないのだから。日常は学校のものです。

 

 

 ssh457で、橋下センセイが朝日新聞のインタビューで、教育内容について全く言及していない旨を指摘しました。

 橋下センセイは、石原以上に論戦や世論での「勝ち」にこだわっている人です。戦術もかなりうまい。

 恐らく彼にとって、教育は自分の立場を優位にするための「ネタ」でしかないのでしょう。

 だって、彼が教育のことを口に出すようになったのは、つい最近のことです。これまでずっと気にしていた訳じゃない。

 

 だから。

 この条例が通ったとしても、彼はあんまり事細かに介入はできないんじゃないかと思うんですよ。

 興味のないことに関わるのは、楽しくないですからね。

 教員ってのは、案外しぶといんですよ。

 面従腹背で、教育の実を守るという作戦もアリです。

 

 

 もちろん、不安もあります。

 橋下センセイ、大阪市長選挙に出るつもりらしい。

 となると、府知事の方は、橋下直系の弟子というか飼い犬というか傀儡というか、とにかくお友達ノリの人が出てくることになる。今の大阪府民の民度からすると、その飼い犬が当選する可能性が大。

 2番手って、1番手よりもヘンであることが多いんですよ。

 小泉純一郎は教育に無関心だったけど、直系2番手の安倍晋三坊っちゃまは教育基本法改正を実行し、教育再生会議を立ち上げ本気で教育に介入しようとした(もちろんプラスの成果なし、これも教育への政治介入の失敗例)。

 

 

 晋三坊っちゃま的な人間が府知事になると、大阪の公教育は壊滅的な状況に陥ることになるやもしれません。

 もっとも、条例前文からすれば、それも「民意の反映」ということなるんですけど。


 

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