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ssh489 テレビの見過ぎです(3) [マスコミュニケーション論]

<2011>

 

 ssh487ssh488の続き。今回はTV的価値観をさらに挙げていきます。

 

11 TVは一極集中と相性がいい

 これはssh488で挙げた「TVは大衆に迎合しやすい」ことから必然的に導かれます。金銭的にも施設的にも規模の大きいTVにとって、一極集中の中央集権システムは非常に好都合です。対して、地方分権は相性が悪い。あちこちでバラバラにTV局があるという状況はあまり現実的ではありません。特に出演者の選定は難しくなります。ローカルアイドルのようなものが一般化しないと、TVの地方分権はおぼつきません。

 

12 TVは言葉を大切にしない

 これは1~8からくる必然です。言葉よりも音声、音声よりも映像、長い話はできず、キャッチコピーと親和性が高い。さらに、新聞などの活字メディアと違い、TV放送は録画しなければその場限りで消えます。

 新聞社には校閲という部署があり、記事の細かい字句をチェックしています。出版社もしかり。原稿が印刷されて出てくるまでに、言葉を細かく検証して誤字や誤用を直します。

 TV局には校閲にあたる部署はありません(最近知ったことです。驚きました)。だから次のようなあからさまな誤用もバンバン流れます。(以下すべて最近テレビで聞いた実例)

 「キラ星のようなスター」(キラ星は夜空のたくさんの星の意味なので複数に対して使う)

 「ドイツ・アメリカとの一戦」(一戦は1つの戦い。対戦の言い間違いでしょう)

 「リーグ戦の初戦を突破」(突破は勝ち抜いた時に使う言葉で、トーナメントの時に使うべきもの)

 「こちらが現物です。想像を超える大きさです。」(現物を見ながら想像はできない。「予想を越える大きさ」と言うべき)

 

13 TVは修飾語句を多用したがる

 一見12と矛盾しますが、これも1~8からくる必然です。

 キャッチコピーの成功のカギは修飾語句にあります。糸井重里の名を一躍有名にしたのは「おいしい生活」というコピー。ここでは「おいしい」という修飾語を用いたことがカギです。

 修飾語句は、言葉の響きをグッと刺激的にする魔力を持っています。で、実はその割に大した意味は持っていません。要約の実戦トレーニングを解説したssh482でも「修飾語句は90%以上不要情報」と断言しています。

 意味はないのにデコレーションとしては有効なのが修飾語句。修飾語句はあちこちで多用されていますが、特にTVとは相性のいい小道具です。多用の例としては、

 「アメリカとの運命の一戦」(バレーW杯中継でのセリフ。「運命の」はなくてもいい。実際この試合は消化試合だった)

 「懐かしの名場面」(懐かしいかも知れないけど、名場面かどうかは見る人の判断次第。懐かしの場面で十分)

 「あの感動の名作がついに地上波初登場」(要するに地上派での放映は始めてということ)

 「国民的アイドルAKB48(じゃあAKBに興味ないオレ達は非国民だな @私と息子たち)


 

14 TVは答えを提示する

 世の中には「わからない」ことが山ほどあります。誰もがよくわからないことをかかえてモヤモヤとしながら生きています。人間社会というのはそういうものです。

 しかし、TVはモヤモヤを極度に嫌います。TVは短時間()に話をまとめねば(10)なりません。視聴者をモヤモヤした気分にするとチャンネルを換えられてしまいます。とにかく「だから何なの?」「じゃあどうすればいいの?」にスパッと答えるというサービス精神が求められます。

 

15 TVは誠実な物言いと相性が悪い

 14の必然として15が出てきます。スパッと明瞭な答えを出すには、様々な可能性や但し書きはカットされてしまいます。ssh345「誠実な文章は歯切れが悪い」で指摘したように、 ものごとを誠実に論じようとすれば、どうしても断定はできなくなり、但し書きの多い歯切れの悪い文章になってしまいます。文章は長くなり、モヤモヤが残ります。誠実な文章はTV的には最悪です。

 TVと相性がいいのは、歯切れのいい、断定的な「◯◯を斬る!」的な物言いです。

 

 

 TVのクイズ番組や教養番組では、14と15が出題に大きな影響を与えています。

 昨今はTVタレントも学歴がけっこうなウリになっていて、ちょいと難しいクイズをタレント(や高校生)にやらせるというクイズ番組もあります。

 しかし、ああいう番組では、しょせん知識問題しか出せません。

 知識問題というのは、漢字とか地理歴史とか科学用語とか、まあそんなもの。(そう言えば英語は知識問題に好適なのにどういうわけかほとんど出題されません)

 思考問題とか論述問題はまず出せない。数学とか物理とか化学とか論理とか読解とかいうのは、まずダメ。

 理由は、思考問題や論述問題だと、答えを提示しにくいから。説明に時間がかかる。長い話はTVに不向きです。

 

 TVが学力を語ると、記憶力偏重になりやすいんじゃないでしょうかね。その知識すら薄弱なネエチャンたちがアナウンサーでございと活躍できるのも、またTVTVたるところですけど。


 

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