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ssh50 「小児科不足問題」攻略法〜実戦トレーニング(4) [小論実戦トレーニング]

<2007>

<医学科にテーマ型は少ない>
 いきなりで恐縮ですが、実は医学部医学科(以下、単に医学科と書きます)の小論文に、ssh49のようなテーマ型の出題はあんまりないんです。信州大学のように毎年テーマ型を出すのは少数派。多くは課題文型、それも、どえらい分量の課題文が課されるタイプです。

<なぜテーマ型は少ないのか>
 大学に出題意図を直接確認したわけではないですが(そんなこと普通できないけど)、大学の先生や予備校の話を総合すると、以下のような理由のようです。
 ①英文の課題文を読む力を見たい
 ②小論文という形で理科やリテラシー(読解力)を問いたい
 ③テーマ型のような問いは面接でも聞ける

<抄読会をご存じ?>
 かつて医学と言えばドイツ語の世界でしたが、今は何てったって英語です。それも、会話じゃなくて、とにかく読解力です。
 「抄読会(しょうどくかい)」というのをご存じでしょうか?
医師が毎週なり毎月なり定期的に集まって、世界中の学会や学術誌などで報告される最新の医療関係の資料を読む、いわば勉強会です。世界中のですから、もちろん、すべて英語です。誰かが訳してくれるのを待っていたのでは乗り遅れてしまいます。
 抄読会の持ち方もいろいろですが、よくあるパターンは、当番を決めて持ち回りで英文を読んで、その内容を要約解説するようです。当番でない人はそれを聞いてノートを取ったり質問したりして勉強し合うわけです。
 医師にとって、専門分野の英文の要旨を素早くつかむ能力というのは、従って絶対必需品です。①が多いのはそういう理由です。

<本当は理科は3科目やらせたいけれど>
 ②のカギは、理科にあります。
 医学生にとって一番重要な理科の科目は(もちろん)生物と化学です。この2つがわからないんじゃ、医学の勉強なんかおぼつきません。
 しかし同時に、医学生にはスーパーな学力が要求されます。単なる優等生じゃダメです。最新の医学を学んで医師となるためには、トップクラスの能力が必要です。(必要条件です。十分条件じゃありません。)
 で、スーパーな理系学生というのは、たいてい物理を選択しています。
 だから、医学学校のホンネとしては「物理を取っていて、生物も化学もわかる」学生が一番欲しいんです。そういうわけで、一部の大学は理科3科目受験を必修にしています。
 とは言え、そういう強気な要求ができるのは一部の名門だけでして、多くの大学ではあんまり強い要求をすると受験生が逃げちゃいます。
 そこで、「小論文」という名前で、理科3科目分の力を試すというテに出るわけです。例えば、ペーパーでは物理と生物を必修にして、「小論文Ⅱ」なんて名前で生物の学術論文を読ませて内容理解力を試す、というような作戦です。

<医学科の面接はシビア>
 ③ですが、医学科の面接は非常にシビアなものです。
 前述のように、医学生にとって、スーパーなオツムというのは単なる必要条件であって、十分条件じゃありません。秀才なのは当たり前、その上で人間的に医学を学んでいけそうかをチェックするのが面接です。だから、どんなにペーパーの出来がよくても、面接で「コイツに医者はムリだな」と判断されたら不合格です(排除型面接などと言うようですが)。
 人間的というと語弊がありますか。正確に言うと、ホントーに医師を志しているのかどうかを確認したいんです。「頭がいいから将来安定してるお医者さんになる」という程度のヤカラに、貴重な医学生の地位をあげるわけにはいかんのです。

<志=志望動機を確認するには?>
 では、限られた面接や小論文の時間に、どうやって志望動機の明確さを確認するのか?
 答えはこれです。
 「知識」。
 医学を本当に志しているのなら、社会的に問題となっている医療関係のトピックに無関心なはずはないのです。必ず、気になるはずです。そして、本当に本気なら、ただ気になるだけでなく、それについて自分なりに調べたり考えたりしているはずです。
 だから、医療関係の知識を聞けば、その受験生の本気の度合いは確認できるのです。
 だから、実はssh49は、小論文というよりは「医学部の面接」というテーマで書くべきものだったのです。

<ssh49攻略法>
 さて、以上を読んでもらうと、なぜssh49の出題が不親切でブッキラボーだったか、その理由もわかっていただけたと思います。知識の有無を聞くための問題で、ヒントなんか出るはずないからです。
 と、すっかり長くなったところで、ssh49の攻略法です。

 小児科医不足の原因としてよく取り上げられるのは、以下のようなものです。
・健康保険の評価法の問題:黙って素直に診察を受ける大人も、注射がイヤだと暴れる子どもも、保険点数の評価は同じ。(国民健康保険のシステムは、どこかで調べて下さい)
・上とも重なるが、子どもの診察は概して大人より手間がかかり負担が大きい。その割に得るものは・・・
・少子化で、患者が減少傾向。裏返すと、高齢化で老人医療の方が客(?)は多い。
・上とも重なるが、特に地方の場合は深刻。
・小児病棟の場合、大人以上に容態等に注意が必要。身体的精神的負担大。
・親とのトラブル(子どもを亡くした親が理不尽な訴訟に走りやすいのも人情)。
 こういったものの中から、自分にとって特に気になる観点から述べていくのが、ssh49の攻略法ということになります。(もちろん、上記以外の要因であっても、きちんとした根拠さえあれば使えます。)

P.S.
 英文課題文の対策としては、『Nature』や『Science』などの科学誌の記事をざーっと読んでおおざっぱな内容を取る練習をすると有効です。医学専門サイト『The Lancet』もお勧めです。

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