ssh226 トヨタがピンチって、本当? [マスコミュニケーション論]
<2008>
トヨタ、営業益74%減 <読売新聞 11月7日>
◆◆トヨタ自動車は6日、2009年3月期連結決算(米国会計基準)で、本業のもうけを示す営業利益が前期比73・6%減の6000億円になるとの見通しを発表した。
世界的な景気悪化の影響で新車販売の不振が続くとみているためで、5月時点の予想より1兆円下方修正した。国内製造業で売上高トップのトヨタが業績の大幅下方修正を迫られたことは、企業業績の悪化が深刻化しつつある現状を浮き彫りにした。
トヨタに限らないけど、この種の報道って、経済経営オンチの私は常に消化不良なんですよ。
このニュースにしても、営業利益が74%減とあるけど、トヨタの営業利益って、私、よくわからんのですよ。
私が一番印象深かったのは、純利益が1兆円を超えたという3年ばかり前の誇らしげなニュース。純利益と営業利益って、響きは似てるんですが、別物ですよね?
え~、例えばここに、年間の全事業の総支出が10億円で、総収入が12億円という会社があったとします。純利益は2億円ですな。
ところが、本業たる営業については支出が8億円で、営業売上が9億円だったとしたら、営業利益は1億円です。
で、この会社の営業売上だけが9億円から8億円に下がったとしますとですな、
総収入は9%減。
営業売上は11%減。
純利益は50%減。
営業利益は100%減。
発表の仕方によって、ずいぶん違った印象になります。
ま、本当のところは、発表されたデータだけからでもわかるんでしょうが、私はトヨタって会社にそんな労力をかける気はありません。
ただね、クルマ好きとしては、どうしても気になるんですよ。
<2008年10月の国内新車登録台数(軽自動車を除く)2008年11月7日発表>
1位 カローラ(トヨタ) 12,446台
2位 フィット(ホンダ)12,188台
3位 ヴィッツ(トヨタ) 9,851台
4位 フリード(ホンダ) 8,037台
5位 プリウス(トヨタ) 6,341
6位 パッソ (トヨタ)6,205台
7位 ヴェルファイア(トヨタ) 6,190台
8位 ヴォクシー(トヨタ)5,162台
9位 エスティマ(トヨタ) 4,572台
10位 ラクティス(トヨタ) 4,264台
11位 セレナ(日産)4,260台
12位 ノア(トヨタ) 4,229台
13位 クラウン(トヨタ) 4,226台
14位 デミオ(マツダ) 4,036台
15位 ティーダ(日産) 3,995台
16位 スイフト(スズキ)3,977台
17位 アルファード(トヨタ) 3,911台
18位 オデッセイ(ホンダ) 3,734台
19位 ノート(日産) 3,675台
20位 bB(トヨタ) 3,022台
自販連のホームページより
販売台数ベスト10中8つまでをトヨタが独占。ベスト20でも12車種までがトヨタ。
クルマに疎い方はピンとこないでしょうが、他社のクルマは比較的安価なものばかりなのに、トヨタはプリウス・ヴェルファイア・クラウン・アルファードなど、250~500万円クラスの車種すら数千台単位で販売しています。
誰がどう見ても、トヨタ、無敵です。これでなおかつピンチなんですか、トヨタ。
いや、もちろん私だって、輸出や現地生産という要素があることなんか、百も承知ですよ。減益の大きさが尋常じゃないのも理解してるつもりです。それに、トヨタほどの超巨大企業なら、関連会社への影響はべらぼうなものです。
んなことはわかってますよ。経済はオンチでも、クルマ界については一般の人よりは詳しいです。
私が気になるのは、次の部分。
・その1: なぜ純利益や売上高でなく、営業益のマイナスで発表をしたのか?
・その2: こんなに日本国内でクルマが売れているのにピンチだというなら、トヨタにとって日本市場はどーでもいい市場ということにならないか?
そして、最も気になるのは、実はここ半年ほど、トヨタはホンダ・フィットに苦汁をなめさせられてきました。
フィットは、王者カローラの販売台数をかなりの差でおさえての首位でした。
トヨタという会社、どんなに儲かっていても、ぜーったいに販売の手を緩めません。販売店には強烈な締め上げ、もとい、頑張りが指示されていたはずです。
で、この10月、ついにカローラがフィットをおさえて首位に立ちました。トヨタの販売関係者、きっとものすげー喜んでいるはずです。
販売ベスト10の8つを占めたのも、そうした頑張りの成果でしょう。4~9月トータルでは、トヨタ車はベスト10のうち6車種だけでしたから。(それでも60%だけどね)10月のトヨタの販売は、すごく頑張ってるんです。
私の気になるというのは、カローラ首位奪還、トヨタがベスト10の8つを独占という、このトヨタにとって喜ばしいニュースを、果たして大手メディアがどうするかということです。
普段なら文句なく流れるでしょう。トヨタ販売好調というのは、よく流れるニュースです。ましてやトヨタは超特大スポンサー、ご機嫌を取るには格好のネタです。
ところが、今回は、経営悪化のニュースが流れた矢先です。
もちろん、国内販売好調のニュースは、営業益74%減ニュースのショックをかなり和らげる効果が期待できます。しかし、同時に、トヨタとしては経営悪化を理由としたリストラなどはやりにくくなるわけです。
繰り返しますが、トヨタは超巨大スポンサーです。
ご機嫌を損ねるようなことはできません。メディアもしょせん一企業です。ゼニには勝てません。
さあ、どうする、大手メディア?
以前とあるブログのコメント欄に「日本トヨタ主義人民共和国」という皮肉を書いたことがあります。
果たしてこの皮肉がただの皮肉で終わるのか、それもと「やっぱりなあ」となるのか、
明日以降の報道に注目するといたしますか。
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