ssh223 社説の読み方〜橋下徹敗訴編 [社説の読み方]
<2008>
1ヶ月以上も昔の話になっちゃいましたが、橋下徹センセイ、敗訴しちゃったんですね。コトの成り行きは、世間一般的にはとてもよく知られていることらしいんですが、私、まったく知らなかったんですわ。
◆◆山口県光市の母子殺害事件を巡り、橋下徹弁護士が大阪府知事に就任前、テレビ番組で被告の弁護士への懲戒請求を視聴者に呼びかけた発言に対し広島地裁が名誉棄損を認め、橋下氏に賠償を命じた。◆◆(毎日新聞10月3日社説)
何せ光市の母子殺害事件すらあまり認知してないんですよ。
原因の一つは、私が大変に薄情な人間であるからですが(嫁サンの御墨付きアリ)、繰り返し報道されるトピックは拒絶するという回路が私の中にできちゃってるということもありまして。
従って、橋下徹センセイのことも、かなり最近まで知らなかったんですよ、私。もし彼が大阪府教育委員会をウンコ呼ばわり、じゃなくてクソ呼ばわりしなかったら、未だに知らなかったかも。(仮定法過去完了と仮定法過去の複合文型)
話を元に戻しますが、その光市のナニに絡んで、TVで何やらやたらと視聴者を煽るようなことを言ったんですか、橋下センセイ。それが名誉毀損だという判決が出たんですな。
現職の知事が「アンタのしたことは悪い」と司法に判断されたわけです(やったこと自体は知事当選前だけど)。
これ、結構デカいニュースだと思います。何せ、知事も公務員ですからねえ。(え、知事は公務員をやっつける民間人だと思ってた?ダメですよ。知事も公務員です。)
公務員が司法に断罪されるってのは、かなりマズいことです。私のような下っ端だと間違いなく処分か免職。
ところが。この件を社説展開したのは、全国5紙中2紙だけなんですよ。
毎日新聞 「橋下知事敗訴 判決は弁護士の自覚を促した」
◆◆今回の判決が弁護士の役割について「被告のため最善の弁護活動をする使命がある」と、改めて指摘したことを重く受け止めなければならない。
橋下氏がその思いを述べるのは自由だ。しかし、視聴者に向かって懲戒請求を呼びかける発言は、自ら弁護士の使命を否定する行為にほかならず、許されるものではなかった。
しかも、テレビ番組のコメンテーターとしての影響力を考慮すれば、その発言は多数を頼んだ魔女狩りに似た状況を作り出した。批判された側の反論が保障されていない以上、軽率な行為といわざるをえない。
さらに、橋下氏は視聴者をあおりながら、自らは懲戒を求めていない。その発言がどこまで思慮を重ねたものか疑わしい。
◆◆事件の裁判ではメディアのあり方も問われた。差し戻し裁判の判決前に放送された多くのテレビ番組について、NHKと民放で作る放送倫理・番組向上機構の放送倫理検証委員会が「一方的で、感情的に制作された。公平性、正確性を欠いた」とする意見書を出し、メディア側の自戒を促している。◆◆
毎日クン、なかなか手厳しいです。
「視聴者をあおりながら、自らは懲戒を求めてはいない」
はあ、そうだったんですか。そりゃあマズいわ。
他人に何かをやれって言っておいて、ご当人はそれをやってないってんじゃあねえ。
で、もう1紙の朝日クンは、タイトルが刺激的。
朝日新聞 「橋下TV発言 弁護士資格を返上しては」
◆◆(被告が控訴審で殺意や強姦目的を否認したのは弁護団の創作だとする発言について)こうした橋下氏の発言について、広島地裁は次のように判断した。刑事事件で被告が主張を変えることはしばしばである。その主張を弁護団が創作したかどうかは、橋下氏が弁護士であれば速断を避けるべきだった。発言は根拠がなく、名誉棄損にあたる—。極めて常識的な判断だ。
そもそも橋下氏は、みずから携わってきた弁護士の責任をわかっていないのではないか。弁護士は被告の利益や権利を守るのが仕事である。弁護団の方針が世間の常識にそぐわず、気に入らないからといって、懲戒請求をしようとあおるのは、弁護士のやることではない。
◆◆偏った番組作りをした放送局が許されないのは当然だが、法律の専門家として出演した橋下氏の責任はさらに重い。◆◆
◆◆橋下氏は判決後、弁護団に謝罪する一方で、控訴する意向を示した。判決を真摯に受け止めるならば、控訴をしないだけでなく、弁護士の資格を返上してはどうか。謝罪が形ばかりのものとみられれば、知事としての資質にも疑問が投げかけられるだろう。◆◆
言ってることはわりとフツーです。
要するに「あんた法律のプロでしょ、もうちょっとプロらしくしなさいと。」ということですね。
論理も一貫してるし、デキは悪くないですよ。
タイトルがちょっとキツいけど、別に知事をやめろって言ってるわけじゃないですしね。
ただね、私的には、とってもガッカリしてるんですよ。
なぜ私が全国5紙の社説ウォッチャーになったかというと、各紙の違いが面白いからなんです。違ってこそ面白い。
だから、とにかく、社説展開してくれてナンボなんですよ。
この前の伊藤さん殺害の件にしても、全紙が社説展開したからこそ、ああいう憎まれ口も叩けたわけです。
なのに。
日経クンと読売クンと産経クンは、とうとう社説展開してくれませんでした。
この記事がこんな時期になってしまったのは、3紙(3クン?)が遅れて社説展開するかも、と待ってたからなんです。おかげで朝日クンのリンク、切れちゃいましたよ。
まさか「なかったこと」にしたいわけじゃないですよね。特に、橋下センセイを積極的に応援している産経クンには、何か言って欲しかったんですけどねえ。
産経クン、日頃から「断固たる」とか「毅然」とか言ってるから、断固として橋下センセイを擁護するかと思ったんですが。
産経クンも、場の空気を読むんでしょうか。あんまり毅然としてねえなあ。
−以上ここまで、(2008年)10月11日作成−
さて、ただいま11月2日であります。
上記のように、この記事、10月11日に下書きがほぼ出来上がっていまして、あとは朝日クンの引用を入れるのみという状態になっていました。
ところが、ぐずぐずしているうちに社説のリンクが切れてしまいまして、さらにぐずぐずしているうちに日が過ぎまして、こりゃあもう話題として賞味期限切れだなと、ボツにするつもりでいました。
ところが、事態は思わぬ方向に発展します。
橋下知事「朝日新聞のような大人増えれば日本はだめになる」10月19日21時29分配信 産経新聞
◆◆大阪府の橋下徹知事は19日、兵庫県伊丹市の陸上自衛隊伊丹駐屯地で開かれた陸上自衛隊中部方面隊創隊48周年記念行事に出席し、祝辞の中で「口ばっかりで、人の悪口ばっかり言っているような朝日新聞のような大人が増えれば、日本はだめになる」と述べた。
その後、視察先の大阪府島本町のウイスキー製造所で報道陣の取材に応じた橋下知事は、朝日新聞の今月3日付の「橋下TV発言 弁護士資格を返上しては」と題した社説への批判だったと説明。「からかい半分や一線を越えた批判じゃないか。からかい半分の批判には徹底的に対抗する。怒りを感じる」と述べた。
報道陣からは「大人げない」との指摘もあったが、橋下知事は「いいんじゃないですか。朝日新聞も大人げないというか、何様か知らないけれど、ああいうことを言ったわけですから」と意に介さなかった。◆◆
橋下センセイ、くだんの朝日クンの社説がよほど気に入らなかったようでして、すっかりキレてしまいました。
まあ、私には「からかい半分」とも「一線を超えた」文面とも思えませんけどね。
朝日クン、ちょくちょく妙な社説を書きますが、これはわりとまともなデキです。繰り返しますが、知事をやめろと言ってるわけじゃないですし。
それにしても、東京といい大阪といい、大都市の知事はキレやすいですなあ。
有権者のみなさん、キレやすい人に権力を持たせるのは危険ですよ。ぜひ熟慮を。
ともあれ、橋下センセイがキレてくれたおかげで、この記事がリサイクル可能となりました。
センセイありがとう。
ところで橋下センセイ、毎日新聞はお読みではないですか?
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