LHR25 笑顔で太りましょう [ご挨拶&エッセイ]
<2008>
—僕らはみんな生きている 生きているから食べるんだ—
放課後35でも紹介した、戦時中のアサヒグラフの広告。
「笑顔で食べて、笑顔でふとる!」
いいっすよねえ、このコピー。
でも、確かにこの時期、赤ちゃんや子どもが丸々と太っているというのは、すごく幸せなことだったはずです。
乳幼児死亡率なんかかなり高かったですからね。
さて、2008年の年の瀬は、実にキツい状況になってます。
国際競争だ何だのと経営者の皆様が鼻息荒かったのが遠い昔のようにすら感じられます。
好況の頃から派遣労働者は冷たく扱われていたんですが、この不況でメチャクチャな扱いをされています。
一つだけ違うのは、好況の時はまるで報道されなかった彼ら彼女らの惨状が
今は報道されているということ。
不況でいいはずもないんですが、ものごと、ある程度までひどくならないと、人間なかなか目が覚めません。
高給取りのメディア人もようやく動き始めたということかもしれません。
貧困問題は、受験の小論でも今や頻出分野となっています。
これはある意味いいことです。
貧困はもちろん全然いいことじゃないですけど、受験生(大学受験が許されるくらいの状況にある若者)に貧困問題を真剣に考えさせるというのはいいことです。
食う寝る所に住む所。世の中に大事なことはいっぱいあるでしょうけれど、まず、メシが食えて居場所があって就寝できないと死んじゃいます。
大佛次郎論壇賞を取った湯浅誠氏によると、失業などでこの年末年始をとにかく生きて乗り切れるかどうか危ない人たちのことが心配だと。
ものごとのすべての基本はここにあるんじゃないかという気がしてます。
イデオロギー対立、自己責任論、大東亜戦争肯定論、愛国心論、教育論、経済論、政治論、エトセトラエトセトラ。とにかく。生きてなけりゃあ、すべて無意味です。
私の皮膚感からすると、ようやくそういう物言いが大手メディアからも出て来たなという感じがしています。
かつて授業料や給食費が払えない家庭が出てきた時、その反応はほとんどが「けしからん!」的な非難でした。
今、そういうアホウな反応はさすがに減りました。
私は、社会に対して、割合と楽観的です。
というのは、一旦絶望してしまったから。より正確に言うと、夢が覚めたんですな。社会は桃源郷になんかなりっこないと。
でも、ニヒルに走ることもなかった。それはたぶん、私の育ちがビンボーだからでしょう。
ニヒリストってのは、たいてい生まれ育ちがラクな人です。
ビンボー人は貧乏が身に滲みちゃってて、つい明日の暮しを考えちゃうから、ニヒリズムと相性悪いんだな。
とか何とか言ってるうちに、今年も年末を迎えられたのはありがたいことです。
正直、今年はもうダメだと思ったことが何回かありましたから。
社会には楽観的な私でも、自分にはえらく悲観的になることが(一応)あるんですよ。
そのストレスのせいでしょうか、秋から冬にかけて、飲食が妙に増えてしまいまして(特に飲の方)おかげで、人間がひと回り大きく成長いたしました。
あ、もちろんひと回り成長したのは腹回りです。
そういうわけで、冒頭の「笑顔でふとる!」につながります。
みなさん、よいお年を。
頑張れ、受験生。
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