SSブログ

ssh317 「ゆとり」を非難する人に、心のゆとりを [教育問題]

<2010>

 

 2010330日、7時のNHKニュースが流れる我が家の夕食。

 

◆◆

 来年春から小学校で使われる教科書の検定が終わりました。今回の教科書は、いわゆる「ゆとり教育」からの転換で学ぶ内容が増えるのに伴い、現在のものに比べてページ数が大幅に増えました。 

 教科書検定は、小学校から高校までの教科書について文部科学省の教科書検定調査審議会が行うものです。今回は、来年春から使われる小学校のすべての教科と高校の一部の教科の教科書、あわせて285冊が申請され、検定意見に基づく修正を経てすべて合格しました。このうち、大きな変化があったのは小学校の教科書です。おととし学習指導要領が改訂され、ゆとり教育からの転換で学ぶ内容が増えることになったのに伴い、ページ数は、すべての教科の平均で、現在の教科書より25%増えています。理科では、4年生の教科書に盛り込まれた「骨と筋肉の働き」など、いったん削除されていた記述が相次いで復活するとともに、観察や実験について詳しく説明するための写真やイラストも増えました。ページ数の増加率は37%と、すべての教科を通じて最も高くなっています。

NHKオンラインより引用)◆◆

 

 私「こういうものの言い方って、本当にやめて欲しいよなあ。」

 長男「なんで?」

 私「やってる本人たちは気にしてないだろうけどさ、今までの教育課程でやってきた子どもたちがいじけちゃうかも知れんだろ。『僕たちってバカなんですか?』とか言われたらどうすんだよ。」

 

 さらにニュースは続き、

◆◆

 また、算数でも、5年生の教科書に「台形の面積の求め方」(←ここで武田アナウンサーが「だいてい」と言う)などが復活するとともに、計算の練習問題も多く盛り込まれ、ページ数の増加率は33%となっています。ページ数の増加率は、国語で25%、社会で17%と、このほかの教科の教科書でも軒並み増えています。ただ来年春、新しい教科書が使われることになっても、土曜日が休みの「学校週5日制」は維持され、ゆとり教育の象徴とされる「総合的な学習」の時間も残るということで、教育現場にとっては、増えた内容を教えるための授業時間をどのようにねん出するかが大きな課題となりそうです。◆◆

 

 次男「あ、今、噛んだ!」

 私「音読の学習が足りねえなあ。」

 

 

***

 1980年代後半、日本中の都道府県で「学力低下論議」が起こりました。舞台は都道府県議会。熱弁したのは自民党の都道府県議員。ここは日本一学力が低い、こんなことでどうする、他の都道府県を見習え、教育委員会と教育行政はもっとシメていかんかい!と。

 

 面白いのは、これが日本中で起きていたこと。

 つまり、全国の自民党都道府県議が「当地こそ日本一低学力だ」と熱弁していたのです。

 ある所では、大学入試センター試験の平均点が低いというのが根拠でした。別の所では東大への進学者数が少ないというのが理由。また別の所では国立大学の合格者数だったり、難関大学の進学者数だったり、高校の中退率だったり、女子の進学率だったり、地元大学の合格者占有率だったり。実にいろんな理由で「おらが都道府県こそ日本一の低学力」であると、彼らは都道府県教育委員会を突き上げたのでした。

 

 私の地元ではFさんという県議が情熱的に「わが県の学力の低さは嘆かわしい」と県会で熱弁を奮っていました。彼の根拠は四年制大学への進学率。何でもわが県の高校卒業生が四年制大学に進学する割合がとても低いのだとか。

 進学率は景気に左右されるから(当時はバブル景気)大学に行かなくても困らないならそれでいーじゃん、という駆け出し教員(私)の声はもちろんメディアには流れません。地元紙とローカルTVF県議の指摘を大きく取り上げ続けました。

 ある日、勤務校で学級日誌にこんなことが書いてありました。

 「先生たちは勉強しろ勉強しろって言うけど、どうせオレたち日本一バカなんだから・・・。」

 

 この生徒の幼稚さを指摘して説教するのは簡単です。

 しかし、県内には同じようにイジけた高校生がいっぱいいたはずです。そして、彼ら彼女らをこんなふうにイジけさせた張本人たるF県議には、自分のしたことの罪深さは微塵も感じられていなかったでしょう。

 実はその後、本県の大学進学率は伸び続けまして、ここ10年ほどは難関大学も国公立大学もかつてとは比較にならないほどの生徒が進学するようになっています。が、F氏(すでに県政から引退)から教育関係者への評価やねぎらいの言葉は一言もありません。所詮は政治的思惑によるものだったということでしょうか。

 

 ゆとりゆとり、とけなし続けることによって、子どもたちの意欲をますます奪っているかもしれない。本来発揮できる力を潰しているかもしれない。

 そういう「かも知れない」の感覚が、教育問題には特に必要です。

 

 そもそも、大人から見て、教育の対象者は自分よりずっと下の世代じゃないですか。どうしてもっと思いやりを持てないんでしょうか?いい歳した大人のやることじゃないです。

 もうちょっと、心のゆとりを持って、子どもや教育を見た方がいいんじゃないっすかねえ。

***

 

 とか何とか言ってるうちに、TVは別のニュースへ。

 その後、武田アナウンサー、

 

◆◆先ほどの教科書関係のニュースで「原爆被害の図」とお伝えしましたが、正しくは「空襲被害の図」でした。おわびいたします。◆◆

 

 長男「原爆と空襲くらいすぐに分かるんじゃない?」 

 一同「(笑)お前らこそ低学力じゃい!」


 

nice!(1) 

nice! 1