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ssh470 「すごい」を禁句にしてみる [作文技術]

<2011>

 

 「すごい」

 この形容詞は、ホントに便利ですね。

 難関大学合格は「すごい」。

 毎日何時間も勉強する学生は「すごい」。

 オリンピック選手は「すごい」。

 大金持ちのセレブなお家は「すごい」。

 トヨタは「すごい」会社。

 台風や大地震の被災地は「すごい」被害。

 イチローは「すごい」プレーをする。

 非常識な行動を取ると「すごいことするねえ」。

 

 

 中学を出たばかりの高校1年生に、何かの感想文を書かせると、「すごい」のオンパレードです。

 まあ、ムリもないんですけどね。

 小学校でも中学校でも高校でも、学校が生徒に提示するもの=推薦図書やら映画やら講演やら何やらは、子どもたちにとって「いい意味で驚きのあるもの」を狙っています。

 その価値が本当に理解できれば、「すごい」という感想は素直に出てくる可能性があります。

 ただし。

 同時に、何でもとにかく「すごい」って書いときゃいいんだ、という生徒もいます。


 

 「すごい」というのは、一種のマジックワードです。

 マジックワードとは、それ以上の考察を停止させてしまう口当たりのいい言葉のこと。これについてはssh294をお読み下さい。

 何か自分にとってよろしいことは、とりあえず「すご~い」と言っておけば、それ以上のツッコミはあまりありません。日常会話やTVや中学までの感想文であればこれで十分です。

 

 しかし。

 もしアナタが大学進学を考えている高校生であれば、「すごい」に対するそれ以上のツッコミは必ずあると心しておかねばなりません。

 

 何がすごいの?

 どうすごいの?

 どういう理由で、すごいと思うの?

 キミにとって「すごい」と「すごくない」の境界って、何?

 キミの言う「すごい」って、どういう意味?他の言葉で説明してくれない?

 ・・・てな具合にツッコまれたら、答えられますか?

 

 便利な物には、毒があるのですよ。

 

 これから小論文の勉強をする人には、「すごい」を禁句にしてみることをお勧めします。

 「すごい」を禁句にする。すると、今まで「すごい」の一言で片付けていた部分を、別の言葉で表さなければならなくなります。

 冒頭の例で言えば、難関大合格者のすごさとセレブのすごさと被災地の被害のすごさは、それぞれ別の言葉で表現せざるを得なくなります。

 それらのすごさを、より具体的に述べざるを得なくなる。

 

 例えば、

 難関大合格者は、それほどの学力をつけるまで真剣に頑張ったその姿勢に頭が下がる、そういう意味で「すごい」。

 セレブは、自分の生活や貧しい人々の状況を考えると、そんな裕福な生活ができるというその境遇が信じられない、非常識、ちょっとおかしいんじゃないのこいつら、という批判混じりの「すごい」。

 被災地の被害は、自分の想像をはるかに越えていて、自然の力の前に人間は何て無力なのだろうと思ってしまうような「すごい」。

 

 「すごい」を禁句にすると、自分の感じた「すごさ」を、丁寧に分析して言葉にする必要が出て来ます。

 で、そういう分析と言葉にする作業こそが、自分の感じたこと・考えたことを明確にするために絶対必要な作業なんです。

 

 もちろん、面倒臭いですよ。

 最初のうちは、「すごい」という言葉が頭に浮かぶ度に、何十分も悩むことになるかもしれません。

 まあでも、仕方ないです。

 成長ってのは、できないことができるようになり、苦手なことがまあまあガマンできるようになり、やりたくないことでも一応やれるようになることです。

 面倒なことをやらないと、人は成長しませんです。


 

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