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ssh505 それでも、やる。 [教育問題]

<2012>

 

 2月になりました。私立大学の一般入試のハイシーズン突入です。

 私が勤務する県立高校の3年生も、いよいよ出陣です。

 この時期の3年生は特別編成授業という、補習のようなプログラムが用意されています。

 もちろん、それとは別に、個別指導もやります。特に面接・小論文は個別指導が命。

 

 と、ここまで読んで「は?」と思った方もおいででしょう。

 なんで県立高校の職員が、2月になって受験指導や個別指導をやってるの?と。

 そういう方はたぶん、東京とか横浜とか大阪とか、大都市部の住人でしょう。

 都市部の公立高校では、受験に関する事細かな指導はほぼまったくしないようです。そーゆーことは放課後に塾なり予備校なりでやってもらいなさい、と。

 ssh483で紹介した通りです。

 

 え?東京は以前とは違うって?

 はいはい、それは予算をドーピングしてもらっている日比谷など一部の都立高校のことでしょう。

 そーゆー高校はたぶん、あれこれケアしているんでしょう。

 

 でもね。

 んなもん、イナカじゃごくごく当たり前のことです。偉くもなんともないですよ。

 何せイナカにゃ予備校も塾もそんなにありません。

 何だかんだ言いつつ、最後は学校の先生が頼りです。

 頼られている以上、生徒達を何とかしてやらねばならんのですよ、イナカの教職員は。

 

 ここのところ、3年の担任のところには、ひっきりなしに生徒が来ています。

 それは出願の相談だったり、添削のお願いだったり、個別指導だったりですが、とにかくひっきりなしです。

 3年担任の先生方は、その生徒達に親身になって応対しています。

 厄介な過去問の添削は、家に持ち帰ってからこなして、翌日生徒に指導をしています。

 それはまさに、身を削るというか、大げさに言えば命の一部を削るような仕事ぶりです。

 疲れとストレスとその他もろもろと戦いながら、しかし担任は言います。

 

 「あー、何とかして受からせてやりたいなあ・・・。」

 

 

 断っておきますが、生徒達の受験結果がどうであっても、私たちにこれといって利益も損失もありません。

 たくさん合格しようが、その逆だろうが、私たちの待遇に変わりはありません。

 そもそも人事異動で10年以内に異動するんですから、何が起きようと教職員個人にはどうということもないのです。

 

 でも。それでも。

 私たちは、ヒーヒー言いながら生徒たちを最後まで面倒見ます。

 だって、放っておけないから。

 目の前に、進路実現のために苦労している生徒がいる。

 であれば、何とかしてやりたい。

 ただ、それだけです。


 

 ただし。

 それができない、やるわけにいかないというところもあります。

 例えば公立中学では(少なくとも私の地元のイナカでは)細かい学習面のケアは困難なようです。

 中学生は最も不安定な時期であり、生活面で様々な問題を起こします。加えて、中学は行政からのリクエストも多い。研究授業だのレポートだのなんだのと、やたらと「上」から宿題が出される。クラブもあるし、学習面でもレベル差が大きいし、クラスサイズも小学校より大きいしで、とても一人一人の学習を丁寧にケアしている余裕はありません。

 一言で言えば、中学校には、生徒に丁寧に勉強を教える余裕がない。ひどい言い方ですが、これが現実です。

 多くの中学では、個別指導は一切やりません。ある先生がそういう行為に出ると、他のクラスの保護者から「何であのクラスはやってるのにウチは・・・」とクレームが来るのは明白です。それは学校の秩序を破壊する。中学では、一番忙しい先生にできる仕事のレベルに合わせて、全体のレベルを下げて設定せざるを得ません。だから高校入試は塾が頼りです。

 

 

 今日もたくさんの3年生が添削や個別指導を求めてやってきています。

 それに応えるべく、職員も見ていて怖いくらいの頑張りで指導しています。

 

 その労力は、報われるのか?

 そんなこと、わかりません。というか、知ったこっちゃない。

 報われようが報われまいが、やるだけです。

 どれだけやったら報われるのか?そんなことを考えるヤツに、教育の仕事は向いていません。

 そういう人は、ビジネスの世界に行くのがよろしい。費用対対価の計算が効かないのが教育です。

 場合によっては、絶対に結果につながらないことのために全力で努力することすら選択するのが教育の世界です。

 

 

 だから。

 とにかく、やる。

 いろんな意見や批判や茶々や悪口雑言があるでしょう。

 それでも、やる。

 結果のことは、やっている最中は考えていません。

 結果よりも何よりも、とにかく、やる。

 結果が望めなくても、それでも、やる。

 ただ、それだけ。


 

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