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ssh525 社説の読み方〜沖縄返還40周年編(2) [社説の読み方]

<2012>

 

 では、1日遅れで社説展開した産経クンに登場していただきましょう。

◆◆沖縄復帰40年 安保激変乗り切る要石に

 沖縄の本土復帰40年を迎え、地元宜野湾市で政府・沖縄県共催の記念式典が行われた。

 沖縄は先の大戦で多大な犠牲を強いられ、今も在日米軍基地専用施設の74%が集中する。歴史的にも戦略的にも特異なその境遇に思いをはせつつ日本の平和と安全を見詰め直す機会としたい。

 とりわけ国民全体で考えたいことは、この間に日本の安全保障環境が激変したことだ。1972年の復帰当時はベトナム戦争末期に至り、冷戦下の日米にとって最大の脅威は北方のソ連だった。

 40年後の今、アジア太平洋の脅威の焦点は、北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の強引な海洋進出に変わった。必然的に尖閣諸島を含む沖縄の戦略的重要性も、ますます増大しているのが現実だ。

 加えて米国は巨額の国防費削減を迫られ、日本には「米国頼み」を脱して自らの安全確保と日米同盟への一層の貢献が求められていることを忘れてはなるまい。

 復帰当時96万人だった人口は140万人となり、本土で活躍するスポーツ選手、芸能人など人的・文化的交流も深まった。半面、本土との経済格差は小さくない。

 大戦時の沖縄戦の戦没者は18万8千人で、うち12万人以上が県民の犠牲者だ。戦後も長く米施政権下に置かれた。こうした歴史をもっと国民で共有すべきだろう。

 同時に、沖縄県民も悲しい過去を超えて未来にも目を向けてほしい。ルース駐日米大使も「沖縄は日米同盟の礎だ」と評価した。沖縄の位置や役割を冷静にとらえつつ、「安保も経済も」の両立を目指したい。日本の安全が守られてこそ沖縄の平和が維持される。

 普天間移設を含む米軍再編計画も基地負担削減と抑止力強化を目的とし、政府は地元振興を図ることが原点だったことを改めて想起することが必要だ。普天間の固定化を回避する道もそこにある。

 にもかかわらず、民主党政権下で迷走を重ね、国民の不信や亀裂を招いた責任は重大である。

 野田佳彦首相は式典で、同盟強化、基地負担軽減、振興を通じて「日本の安全を確保する」と約束した。その言葉を着実かつ速やかに行動に移してもらいたい。

 沖縄は返還されたが、北方領土はロシアに、竹島は韓国に不法占拠されたままだ。これらが返らない限り、戦後は終わらない。そのことも銘記しておきたい。◆◆

 

 まず、1日遅れで社説展開したことを批判しておきます。

 沖縄復帰40周年が2012515日であることはずーっと前からわかっていたのですから、あらかじめ準備して当日に掲載するのは簡単です。1日遅れの展開は、産経クンがこの話題にさほど重きを置いていないという意味を表しています。そういう意図であるなら許し難いし、意図がないのならあまりに無神経です。日経クンにまで遅れを取っては言い訳は効かんでしょう。

 で、内容がまた軽い、軽い。サラリと要約しますと、

  • 大事なこと・・・安全保障 日米同盟 経済振興 未来 民主党の責任 日本の安全 北方領土 竹島
  • 大事なことに比べて軽いこと・・・基地集中 沖縄の悲しい過去 沖縄の平和

 産経クンも東京目線丸出し。フジサンケイグループってもんです。

 で、そうやって沖縄にさらなるガマンを求めた上で守られた「日本の平和」の中、彼らは何をするのか?

 

◆◆AKB総選挙 フジテレビが生中継

 66日に東京の日本武道館で行われるAKBの選抜総選挙を、フジテレビが生中継することになった。実際の開票特番風にL字画面も活用、すべての開票結果を速報する。(以下略)(読売新聞 516)◆◆

 

 こういうのを見ると、竜巻がお台場を直撃してくれないかなと願ったりしたくなります。で、実際にそうなったら「天罰だと思う」とコメントして差し上げましょう。


 

 (ここで深呼吸を10回ほどして気持ちを鎮めます)え~、では、最後に模範答案の琉球新報社説を。

◆◆復帰記念式典/差別と犠牲断ち切るとき 沖縄に民主主義の適用を

 民主主義社会は世論を尊重することが基本です。なぜ、(日米)両政府とも沖縄県民の切実な声をもっと尊重しないのですか。

 復帰40周年記念式典で上原康助元沖縄開発庁長官はこう述べた。ほとんどの県民が共有する疑問だろう。なぜ政府は沖縄に民主主義を適用しないのだろうか。

 県民の願いは、ほんのささやかなことでしかない。米軍基地の移設を、拒否すれば強要されることがない他県の国民と同様に、沖縄にも強要しないでほしいということだ。沖縄の民意も、他県と同じ重みでくみ取ってほしい。

ー繰り返す二重基準ー
 差別の例証としてよく取り上げられるのが、国土の0・6%しかない沖縄に全国の74%の米軍専用基地が集中するという点だ。だが、より問題なのは政府の態度である。

 2005年の在日米軍再編協議で米側は、沖縄の海兵隊の九州、北海道など本土への移転を打診した。だが日本側は検討しようとすらせず、打診自体をひた隠しにした。
 防衛庁(当時)首脳はその理由を「本土はどこも反対決議の山」だからと説明した。実際には正式に可決した自治体議会はなかったにもかかわらず、だ。

 政権交代後もそうだ。普天間飛行場の徳之島移転案は正式打診もしていないのに、反対の空気をくんで断念した。だが沖縄は知事も地元市長も反対で、県議会が全会一致で反対決議をしたにもかかわらず、押し付けようとしている。

 同様の二重基準(ダブルスタンダード)は、米海兵隊の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備でも繰り返している。政府は当初、本土の米軍基地に一時駐機し先行運用することで安全性をアピールする予定だったが、地元の反発で断念した。

 しかし沖縄では猛反発をよそに、今夏にも配備を強行しようとしている。よりにもよって世界一危険とされる普天間飛行場に、だ。しかも県都那覇で組み立て、市街地上空で試験飛行するという。政府は都心の新宿や銀座の上空で同じことを許すだろうか。

 野田佳彦首相は復帰記念式典で「沖縄の基地負担の早期軽減を具体的に目に見える形で進める」と述べた。政府が今まさに進めようとしていることとの、あまりの乖離(かいり)に言葉を失う。

 閣僚は来県するたび「沖縄の民意に耳を傾ける」と口にする。今回の首相もそうだ。だが耳を傾けた結果、実行したためしはない。

 

低姿勢の「演出」

 沖縄の民意をくむ意思などないのに、低姿勢を演じる。そして「政府がこれほどお願いしているのに、受け入れない沖縄はわがままだ」という国民世論を喚起しようとしている。そう見るのはうがちすぎだろうか。

 美辞麗句はもういい。沖縄の意思をくむなら、首相はまず真っ先にオスプレイ配備を撤回させてもらいたい。その上で普天間・海兵隊の県外・国外移設に本気で取り組んでほしい。

 東日本大震災後、福島と沖縄の近似性が指摘されるようになった。危険は周縁部に負わせ、利益は中央が享受する構図がうり二つだ。国策を進めるため補助金を投じた結果、地域経済が国依存型になってしまう点も似ている。

 違うのは、沖縄では銃剣を突き付けられて土地を収奪された点だ。「誘致」などしていない。

 もっと大きく異なる点もある。原発事故後の福島に、政府が新たな原発を造るだろうか。県議会も知事も反対しているのに、原発を強要することなどできるだろうか。今、政府がしようとしているのはそういうことだ。

 差別を自覚した県民は、もはや分水嶺を越えている。もう犠牲を甘受するだけの存在には戻れない。政府はその重みを知るべきだ。次の世代に犠牲を強いることのないよう、今の世代で差別の連鎖を断ち切りたい。◆◆

 

 どうですか。美辞麗句ばかりのダブルスタンダードという指摘。民意を汲むと言いながら何ら実行しない歴代政府への批判。手続きの時点ですでに不公平な扱いがされているという指摘。福島との類似点と相違点の指摘。どれも中央紙に抜け落ちている視点です。

 この社説を「地元ゆえの切実さ」と総括するなら、アナタはまったく読解力がありません。この社説は、視点観点の独自性といい、論理の一貫性といい、純粋に論説文として中央5紙より優れています。

 感情の問題じゃありません。文章そのもののデキがまるで違うのです。

 これ読むと、朝日クンと毎日クンもまだまだです。ましてやあとの3紙はゴミクズ以下の有害無益社説です。

 

 今回の社説の読み方ではっきりしたのは、中央メディアこそ「沖縄差別」を実践しているという、実に情けない事実です。

 

 沖縄問題も原発問題も、とどのつまりは「地方に負担を押し付けて潤う中央と、中央からのほどこしで糊口をしのぐしかない地方」という、明治以来の我が国のシステムの矛盾が根っ子にあるようです。

 sshとしては、これからもしつこく東京至上主義を批判し続けることになりそうです。


 

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