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ssh514 十校十色〜教育ブログの読み方(4) [マスコミュニケーション論]

<2012>

 

 ブログを始めて良かったな、と思うことはいくつもありますが、その中に「同じ学校でもこうも違うものか」ということがわかったというのがあります。

 

 一口に学校と言っても、小学校と中学と高校と大学は全然違う。

 同じ高校であっても、私立と公立はかなり違う。

 同じ公立高校であっても、都道府県によって様子が全然違う。

 同じ都道府県の同じ公立高校でも、立地条件や生徒の違い(学力・運動能力その他)によってまるで違う。

 同一の学校内でも、担当する教科や部署が違うと、仕事の様子がまた違う。

 かと思えば、全然違う土地の全然違う学校同士が、すごく似ていたりもする。

 自校の常識は他校の非常識。所変われば品変わる。

 

 私の現任校には、職員室という部屋はありません。

 それぞれ教科ごとに「研究室」という部屋があり、職員はそこにいます。私は「英語研究室」常駐です。

 ところが、同じ県の公立高校であっても、職員室がある学校もあります。

 同じ県内でも、小学校と中学校はだいたい職員室があって、そこにほぼ全員の先生がいます。(芸術や技術家庭や体育など実技系の先生は別部屋)

 

 私はただいま1年生の担任をやっています。

 私の地元では、担任というのは3年間持ち上がりで、一度担任を持ったら、最低でも1年は担任を持たずに「休み」を入れます

 しかし、近隣のある県では、担任は必ずしも持ち上がりではなく、しかも担任を持たない年というのはないそうです。で、50歳くらいになると担任稼業はお役御免となり、主任や管理職となっていくと。

 

 かと思えば。

 近隣の私立高校は驚くほど県立高校と雰囲気が似ています。聞けば教員の給与は県の教員と完全に同一だそうで。(だから公務員の給与カットはとても困るということらしいです。)

 

 

 学校の状況ってのは、十人十色ならぬ「十校十色」です。


 

 教育評論家とか、教育学者という人は、(マトモであれば)数多くの学校に足を運び、数多くの事例を調べた上でいろいろな研究発表や意見表明をしています。だから一応、教育全体を語ることができる。

 どこぞの市長が「学者は現場を知らない」とほざいているようですけど、マトモな教育学者は現場の先生以上に現場のことを知ってます。少なくともタレント弁護士よりは知ってます。

 

 それはともかく。

 いろんな現場を知っているのは、そういう一部のプロだけ。

 現場の教員は、自分が経験した現場しか知らないんです。もちろん私もしかり。

 教育行政に関わった人なら一介の教員よりは広く知識があるでしょうけど、それでもやっぱり全国通津浦々のことは知らない。理解の中心は地元。

 

 ましてや、一般の人は、自分が生徒として通った学校での経験と、自分の子どもが通った学校でのPTA会員としての経験しかありません。他の情報はマスメディアを通じて仕入れた不完全なものだけです。

 

 

 教育ブログの書き手の多くは、プロの教育評論家でも教育学者でもありません。現場の教員か、市井の人間です。

 よほど意欲的に研究をしているのでもない限り、教育全体のことを語れるような土壌は持ち合わせていません。どうしても限定的な話しか書けない。

 

 これは非難ではありません。むしろそれをきちんと受け止めるのが、いい意見を語るコツです。

 

 自分には限定的なことしか語れない、と認識している人のブログは、示唆的で読む気にさせてくれます。

 逆に、限定的なことしか語れない立場なのに、大風呂敷を広げて「教育とは・・・でなければならない」みたいな話をしてしまい、気に入らないものをバッサバッサをぶった斬るような姿勢のブログは、実にアホくさいものです。(ただし、見出しも内容も刺激的なのでアクセスは多い。)

 

 

 教育ブログを読むときは、書き手の姿勢をチェックしてみると面白いです。

 「こんなことをやっている教員はクズだ」

 「教育とはこういうものだ、それがわからないようなヤツは教師失格だ」

 「こんなことを書いているような人間にマトモな教育ができるはずはない」

 てな風に、いかにも自分には教育の全体が見えているかのように断罪してくる書き手のブログは、読んでいてほぼ示唆がありません。読むだけムダ。

 十校十色なんですから。そんな大所高所から語れるほど、学校教育ってテーマは易しくないですよ。

 

 一方、

 「私にはわからないことがたくさんある」

 「私は教育すべてを語れるほど偉くない」

 「私にはせいぜいこのくらいのことしか言えない」

 「私はまだまだ未熟で、やるべきことがたくさんある」

 こういう謙虚な姿勢で書かれているブログが、実は一番説得力があります。

 十校十色なんですからね。どうしたって物言いは謙虚にならざるを得ないです。


 

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