ssh535 仕事を頼まれる人間になりなさい〜やりたいこと探しの前に [志望理由・進路選択]
<2012>
勤務校の本年度文化祭、終了しました。
3年生を中心に、生徒達はよく頑張りました。私の期待以上の頑張りでした。
文化祭は誠心誠意バカをやることに価値がある、とssh533で書きました。生徒達は、わずか数日の文化祭のために、骨身を削って、バカみたいに頑張りました。これぞ高校の文化祭です。
さて、文化祭のようなイベントをやると、教室や授業やクラブ活動だけでは見えてこない生徒のいろんな力量が見えてきます。
力量です。隠された一面とかいうレベルじゃなくて、その生徒の本当の力。
文化祭の表舞台は、いろんなイベントであり、展示発表であり、ステージでのパフォーマンスです。
しかし、それらを実行するには、企画を立てて準備をして計画を立てなければなりません。
特に準備は大変。私の顧問するダンス部であれば、ダンスの練習だけしてもダメです。会場の準備も全部、部員の仕事です。
それはまさに「仕事」。シートを敷く、机や椅子や教壇や照明器具などの物品を運ぶ、掲示や計時などをする、さらにその場で発見された仕事にその場その場で対応する。そういう地味な「仕事」をこなす人間がいて、始めてイベントは成立します。
そういう地味な「仕事」をしている時にこそ、生徒の力量が見えます。
地味な「仕事」をしなければならない時、人はおおざっぱに次のようなパターンを取ります。
- そもそもその場に来ない。どーせ成績には関係ないんだし、サボっちまえ。
- 一応その場には来るが、なるべく面倒な仕事をもらわないよう、上手に振る舞う。
- 自分からは動かないが、指示をされれば一応は動く。いわゆる指示待ち。
- 指示を待つだけでなく、自分から指示を仰ぐ。「何すればいいですか?」と聞いてくる。
- 自分から仕事を探そうとする。指示された仕事が終わると「次は何すればいいですか?」と聞いてくる。さらに「今やったところの隣もやった方がいいですよね」などと、自分から仕事を提案する。
- 自分が動くだけでなく、他人も動かす。「おい、一緒に持ってくれ」などと動く。
さて、もしみなさんが今、何か大事な仕事を頼まなければならないとします。
上の1.~6.のうちから、誰に頼みますか?
あるいは、今、みなさんが何か仕事をするためにチームを組まねばならないとします。
どのタイプは御免被りたいですか?
進路指導って言うとすぐに「やりたいことを探せ」だの「夢を持て」だのと言いますよね。最近はここに「学力を」なんてのも入ってきます。
でもね。
やりたいことが明確で、夢があって、学力も高いという1.や2.の人間を、アナタ仕事で使う気になりますか?
私ならゴメンですね。不器用で勉強がイマイチでも、私は4.~6.の人物と働きたい。
進路指導って、何だかんだ言いつつ、社会でどうやって食っていくつもりか、って話なんですよ。
やりたいこと探しは、やりたくないことよりはやりたいことの方が働きやすいからです。
夢探しにしても、夢があれば頑張りが利くということです。
でもね、その前に、仕事をもらえなけりゃ、どうしようもないじゃないですか。
仕事をもらえるということは、つまり、仕事を頼まれる人間であるということです。
この人に仕事を頼めば、ちゃんとやってくれるだろうと。
そういう人間にならなけりゃ、やりたいことも夢も学力もヘッタクレもありゃしませんよ。
まず、仕事を頼んでもらえるような人間にならなきゃ。
仕事の能力なんか、その後の頑張りで身に付きますよ。
ssh329「仕事の定義」という記事があります。書いたのは2年ほど前。
この記事で、私は仕事を「他者にとって価値のある行為」と定義しました。
ある行為が仕事であるか、仕事以外の趣味とか暇つぶしであるかは、他者が決める。他者にとって価値があるもの、それを(お金と引き換えにでも)やってもらいたいと思うようなことが仕事であると。
仕事を頼まれる人間と頼まれない(仕事をもらえない)人間の差というのは、つまりは、「あの人なら頼める」と思われるか、「とてもあんなヤツには頼めないな」と思われるかの差です。
今この記事を読んでいる高校生がいたら、ちょっとばかり胸に手を当てて考えてみて下さい。
学校で「もうお前には頼まないよ」と言われるような振る舞いをしていて、社会に出た途端に仕事をもらえるなんてこと、あると思いますか?ありっこないですよ。
学校でなら、仕事を頼まれない方がヒマでラクです。けど、社会で仕事を頼まれないのは、食いっぱぐれです。
え?ゼニがからめば話は別だ?金がもらえるならちゃんとやる?
そういう人は、やっぱり大した仕事はもらえませんね。もらえるゼニの分しか働く気がないんだもの。
目先のゼニの分だけしか働かない人間と、代価以上の仕事までついやっちゃう人間と、アナタならどっちの人に仕事を頼みますか?
高校生諸君、まずはゼニにも成績向上にもならない仕事を率先してやりなさい。もらった仕事は「え~何でオレが」とか文句言わずにやりなさい。指示を待たずに、自分から仕事を探してどんどん動きなさい。仲間を巻き込んでどんどん働きなさい。
文化祭を待たなくても、掃除の時間でも何でも、仕事はいくらでもあるはずです。それをやりなさい。
あちこちで使い古されている「信頼」という言葉は、そういう地味な仕事を率先してやる人間に対して与えられるのですよ。アイツなら信頼できる、安心してこの仕事を任せられる、と。
勉強して、学力がついて、やりたいことを学べる大学に進学して、仕事がもらえなかったってのは、みなさんの望みじゃないでしょ?