ssh568 「想定読者」と字のお話(2)〜ノートの想定読者は誰か [教科学習]
<2012>
ssh567の続きです。今回はノートのお話。
人間が何かものを書くのは、誰かに読んでもらうためだとssh567で述べました。
では、ノートって、誰に読んでもらうために書くのでしょうか?
当然、ノートの想定読者は自分です。私たちは自分が読み直すためにノートを取ります。
だから読みやすいノートを作らねばならない。
ところが、この「当然」が、案外と落とし穴。
すごくキレイで丁寧なノートを作るのに、全然学力が伸びない生徒がいます。
多くは中学までわりと「いい生徒」だった人たちです。特に女子に多い。
これらの生徒のノートは、やたらとキレイです。すごく丁寧に書かれている。色ペンを使い分けてビジュアル的にもよくできている。先生の指示もよく守られている。
なのに。こういうノートを作る生徒は、成績が伸びません。中学では調査書(内申書)のスコアを稼いでくるので高校入試までは一応成功裡ですが、高校で全然伸びない。
なぜか?
彼女たちは、ノートの想定読者を間違えてます。
彼女たちのノートは、先生に見せるためのノートです。だから自分にとって不要な情報でも、先生にホメてもらえるように、懇切丁寧にノートに記録する。
当然時間ばかり浪費して、勉強の役に立っていない。自分のノートを読み返しても、丁寧過ぎて役に立たない。情報過多で、何が自分にとって一番盲点なのかが見つからない。
小中学校を批判するつもりは毛頭ありませんけど、「提出ノートを評価する」ことが「先生ウケのいいノートを作る」という姿勢を内在化させてしまっているのでしょう。
こういう生徒は根が真面目だけに、姿勢を変えさせるのがなかなか大変です。
ノートの想定読者に関する落とし穴は、もう一つあります。
ノートの想定読者は確かに自分ですが、今の自分じゃありません。
ノートの想定読者は、近未来の自分です。
ノートを読み直すのは、復習のためです。
今日読み直すのか、1週間後に読み直すのか、テスト前に読み直すのか、受験前なのか、とにかくそのノートを読み直すのは、現在形ではなく未来形です。
今わかったと思うことでも、来週までは覚えていないかもしれない。
今読める漢字や英単語でも、テスト前には自信ないかもしれない。
ある部分に引いたアンダーラインが、読み直してみたらどういう理由で引いたのか思い出せない、なんてこともよくあります。
ノートは、読み直す自分=近未来の自分にとって、読みやすく、親切でなければなりません。
自分は勉強する上で、どういうことを忘れやすいか?
自分がテスト前に確認したいのは、どんなことか?
自分は、1週間後、1ヶ月後に、どんなことがノートに書かれていればありがたいか?
自分という人間が、勉強する上でのクセとして、どういうことが抜け落ちやすく、どういうことがノートに書かれていれば役に立つか?
そういう自己分析ができている人のノートは、実にいいデキです。
ムダな情報が少なく、要点はわかりやすく記録されている。
私は生徒によく「テスト前の自分に親切なノートを残しておきなさい」と言っています。
キザな言い方をすると、ノートは近未来の自分へのメッセージです。