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ssh651 社説の読み方番外編〜ソチは北カフカスです [社説の読み方]

<2014>

 

◆◆冬季五輪が始まるロシア南部・ソチについて日本メディアで誤解が横行している。「北カフカス地方に近い」などとされるが、ソチ自体が正真正銘の北カフカスなのである。

 おさらいしよう。カフカスとは「黒海とカスピ海に挟まれアジアとヨーロッパの境とされたカフカス山脈を中心とする地域(『ロシアを知る事典』)だ。ロシアに属するカフカス山脈北側を、グルジアなど独立諸国のある南部と区別し「北カフカス」という。

 ソチのあるクラスノダール地方が北カフカスに入るというのはロシア人の間では常識だ。カフカス地域に詳しい前田弘毅・首都大学東京准教授は「ナンセンスな話」とあきれる。「言語、文化的にもソチのあるクラスノダール地方は北西カフカスで、チェチェンやダゲスタンは北東カフカスです」

 誤解には理由がある。ロシア政府が二〇一〇年、初めて「北カフカス」と銘打った「連邦管区」をクラスノダールなど黒海側の自治体を除外して創設したからだ。日本にたとえると、仮に茨城県を除外した「関東管区」が新設され外国メディアが「水戸は関東地方に近接している」と書いたようなものだ。

 五輪都市ソチがあるクラスノダールを、紛争のイメージが強い「北カフカス」から切り離そうとする狙いがあるとすれば、日本メディアは、クレムリンの情報操作に見事に引っ掛かったことになる。(東京新聞「私説・論説室から」2014.2.3.)◆◆ 

 

 へえ、そうなんですか。

 意地の悪い私としては、どのメディアが「クレムリンの情報操作に見事に引っ掛かった」のかを確かめたくなりました。

 毎度おなじみ中央5紙でチェックしてみましょう。

 

 まずは読売クン。(太字はshiraによる)

 

◆◆冬季五輪の舞台となるソチに近いロシア北カフカス地方は、テロを引き起こすイスラム過激派の根城とされる

 一方、帝政時代からこの地方を守ってきたコサックの子孫も多く、テロ防止のため自警団による夜警を始めた。ソチ市内でも800人以上が警備にあたっている。(ロシア南部ピャチゴルスク 緒方賢一、ソチ 田村雄)

 「テロの後は毎日午後6時から午前1時まで地区内を歩いて警戒している」。ピャチゴルスク中心部から南に約20キロのタンブカン地区で、コサックの公務員ゲンナジー・クレシュノフさん(43)が強調した。(読売新聞2/7)◆◆

 

 あらま、かなり見事にクレムリンの思惑通りの表現となってます。読売クン、案外ロシアが好きなのかしら。完全にアウトですね。クレムリンの情報操作に引っ掛かったと認定。

 引用には載ってませんが、読売クンのこの記事は地図が付いてました。地図はロシア当局が定めた北カフカス連邦管区をそのまま書いてあり、ソチはその連邦管区北の外になっています。ロシア当局に対して最も忠誠心が強いのが読売クンです。

 

 

 お次は日経クン。


 

◆◆ソチはロシア南部の都市で、黒海沿岸の保養地。旧ソ連時代の1980年のモスクワ夏季五輪は、冷戦下での開催だったため、西側欧米諸国は参加をボイコットした。ソチ冬季五輪は旧ソ連、ロシアにとって欧米諸国も参加する初めての本格的な五輪大会となる。

 プーチン大統領は「歴史的なイベント」としているが、ソチに近接する北カフカス地方のイスラム過激派がテロの可能性を示唆。ロシア政府は警察や軍、情報機関など計7万人以上を緊急動員し、厳戒態勢を敷いている。(ソチ=田中孝幸 2014.2.8.)◆◆

 

 「近接」ですか。「近い」よりはマシかも知れんけど五十歩百歩ですな。これもアウトでしょう。

 

 

 3番手は、何かと心配にさせる産経クン。

 

◆◆【モスクワ=佐々木正明】ロシア治安当局は、7日に開幕するソチ冬季五輪の安全を確保するため、現地に約4万人の警察官や兵士を動員し、厳重な警戒態勢を敷いている。

 ソチに隣接する北カフカス地域のイスラム武装勢力が五輪の阻止を狙いテロ活動を行っているためで、昨年末の南部ボルゴグラードの連続自爆テロも、同地域のダゲスタン共和国の武装勢力が犯行に及んだことが当局の調べで明らかになった。すでに、ソチ一帯では人や車両の出入りが厳しく規制されており、ソチに登録されていない車両は約100キロ圏内にも入れない。(2014.2.3.)◆◆

 

 う~む、これもアウトですな。これで3者ならぬ3社連続アウトです。

 

 

 4番手は朝日クン。

 

◆◆史上最多の国と地域が参加するロシア・ソチ五輪が7日、開会式を迎えた。テロの脅威や性的少数者への差別問題がくすぶり続ける中、日本をはじめ40を超える首脳が駆けつけた。「五輪外交」の主役、プーチン大統領に会うためだ。ソチに連なる北カフカス地方の一部地域では、今もテロが相次いでいる。特にダゲスタン共和国では複数のイスラム系武装勢力が活発に活動。昨年末にソチから約650キロ離れたボルゴグラードで起きた連続自爆テロも、ダゲスタンの過激派が起こしたとされる。(2014.2.8.)◆◆

 

 「連なる」ですか。ソチは北カフカス地方の都市なんですから、何もこんな言い回しをしなくてもよさそうなもんです。ビミョーな言い回しですけど、まあアウトでしょうな。

 

 

 残るは毎日クンのみ。これもアウトだと全滅です。

 

◆◆[ソチ 11日 ロイター] -北カフカスを拠点とするイスラム系武装集団が支持者らに、冬季五輪開催中のソチでの地震発生を祈るよう訴えている。「ロシアの異教徒」との戦いで殉死したイスラム教徒のための報復だという。

 「地震の祈り」を呼び掛けているのは、イスラム国家の樹立を目指す武装勢力「カフカス首長国」の一派。インターネット上に10日投稿された文書で「(ソチは)無神論者や異教徒らの五輪だ。やつらは傲慢にも、我々の祖先がイスラムを守るために血を流した大地での開催を決めた」とし、 「この手紙を読める人は誰でも、全能の神がソチの大地を地震で壊すよう祈ることができる」と支持者らに訴えた。

 ソチはイスラム教徒の多い北カフカス地域の西端に位置し、今回の五輪では、先住民チェルケス人が19世紀に追放されるまで多く住んでいた場所でも競技が開催されている。(2014.2.12.)◆◆

 

 おお!これは正確じゃないですか。あー良かった。かろうじてクレムリンの情報操作に引っ掛からなかった中央紙が1紙のみありました。

 

 

 それにしても、この体たらくはどうしたことなんでしょうか。

 特に読売クンや産経クンは日頃から右派っぽい物言いが威勢良く、共産圏に対しては何かと批判的なはずなのに、なぜやすやすとロシア当局の発表を流用してしまったのか。読売クンなんかわざわざ当局発表の地図まで掲載しちゃって。

 

 昨今の中央メディアは、当局の発表をただ流すという仕事に堕しています。疑義を挟むとか、確認のために裏を取るとかいうことを全然やってない。読売クンは特にひどくて、ここのところ誤報を連発しています。

 察するに、いつもそんな調子で手を抜いてるもんだから、相手がロシア当局であっても、日頃のクセで全然疑うことも確認を取ることもしようとしなかった。裏を取らない新聞社を騙くらかすことなど、赤子の手をひねるようなもんでしょう。

 

 毎日クン以外の4紙は、ロシア当局の思惑を垂れ流したことをしっかり反省して頂かねばなりませんな。


 

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