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ssh657 「昭和の日」は授業日です [教育問題]

<2014>

 

 平成17年の「国民の祝日に関する法律」改正により、429日は「みどりの日」から昭和の非、じゃなくて「昭和の日」に改められました。その意義は「激動の日々を経て、復興を遂げた昭和の時代を顧み、国の将来に思いをいたす。」だそうであります。

 もともと429日は昭和天皇裕仁陛下の誕生日で、「国民の祝日に関する法律」が定められた昭和23年には「天皇誕生日」という名前でした。3つの名称を取っ替え引っ替えした祝日など、他にはありません。まさに激動を経た祝日であります。

 

 その429日は、授業日です。

 いえ、私の勤務校のことじゃありません。我が豚児たちの通う大学のことであります。

 

 長男は東京の国立大学の理系学部、次男は地元の私立大学の文系学部にこの4月から通い始めました。立地条件から何からずいぶん違う2つの大学ですが、429日が授業日であることは同じです。

 

 その昔、左翼系の学生運動がまだ活発だったころ、祝日で休業日の429日にわざわざ自主登校を呼びかける学生がいました。天皇の誕生日を国民の祝日とするなどけしからん、抗議の意味を込めて学校へ行こう、と。往時の活動家のタマゴたちが、今このブログを読んだら感涙にむせぶかも知れません。

 その感涙に冷や水を浴びせて恐縮ですけど、これはべつにイデオロギーの問題でも何でもありません。

 次男の大学の場合、429日だけでなく、7月の「海の日」も、923日の「秋分の日」も、1013日の「体育の日」も、113日の「文化の日」も24日の「勤労感謝の日」も授業日なのです。本年度は祝日がお休みなのは53~6日、915日、11日と12日、211日、321日だけなんです。

 

 なぜそんなことを?

 授業時数確保のためです。


 

 高校や大学で与えられる「単位」というのは、厳格なようないい加減なような、案外つかみどころのないものです。

 大学の場合、一般的に、901コマの授業を15回受講して、試験なり課題なりをパスすると2単位です。

 もし1週間に1コマだけ入っている授業を受けるのであれば、15回の授業を受けるには、15週の授業日が必要となります。

 今日日の大学は、この15週を半期で確保するために、祝日に授業をしたり、夏休みを短縮したりしているのです。

 

 かつてはこのへんはかなり大らかに解釈されていました。

 そもそも単位の概念はかなりおおざっぱで、高等教育(大学)の場合、授業時間1に対して自宅などでの学習はその倍の2は必要というタテマエで、そうやって計算すると勉強時間がだいたい45時間くらいになり、それが「1単位」ということらしいです。私の大学のシラバスにもそんなことが書かれていました。全然理解できませんでしたけど。

 そういう解釈に立てば、仮に授業日が12週とか13週しかなかったとしても、授業外での学習時間はあるのだから、単位認定してもそんなに問題はないわけです。

 そんな大らかな時代は今は昔。今やコンビニのいたずらをネットに投稿した若者がべらぼうな賠償を請求されるせちがらい世情です。文部科学省は各大学に授業時数を確保せい、さもないと補助金を引き上げるぞと要求しております。大学としては反論はあっても反旗を翻すわけにはいきません。


 時数確保は、後期の方が大変みたいです。

 というのは、2月以降は授業なんかやってるヒマがない。

 国公立なら受験は2月下旬以降ですけど、私大の一般入試は1月下旬から始まります。2月はまさに書き入れ時、各大学とも多様な入試制度で数多くの学生の受験を待っています。スタッフは日々てんてこ舞いしているはずです(たぶん)。在校生に授業や試験なんかやってるヒマ、ありません。

 夏休みは削れても、春休みはどうしても削れません。

 だから、後期の授業&試験は、1月までになんとか片付けておく必要がある。

 加えて、9月から12月は、毎月祝日があります。こうなると、夏休みを早めに切り上げて、祝日も授業を入れてやらないと、とても受験シーズンまでに15週の授業は確保できません。


 加えて、今はシューカツ(就職活動)のスタートが昔とは比較にならないほど早い。最近ちょっとだけ遅らせるような協定がされましたけど、それでも3年の3月にはスタートです。豚児たちが受験でヒーヒー言っていたころ、街中には着慣れない真っ黒けのスーツに身をくるんだ若者が大きなカバンを持って歩き回っていました。

 

 大学4年生は授業に出ているヒマがない。

 シューカツを成功させるには、3年までに主だった単位を取っておく必要があります。

 授業日が多い上に、4年分の単位を3年で取っておかないといけない。

 私のようにテキトーな学生生活を送った人間と比べると、今日の大学生は倍くらい学業が忙しいんです。


 大学生にそんなに授業ばっかやらせてどーすんだよ、と思う方もいらっしゃるでしょうけど、これも学力低下だの使える人材だの税金のムダ使いだのという世間の風当たりが必然的に生み出した状況なんですよ。

 某公立大学で教授の職にある友人が「研究をしているヒマがない」とこぼしていたのも、まあ道理です。


 

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