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ssh1061 パナソニック大型CDラジカセ復活プロジェクト [DIY記]

<2017>


 嫁サンが結婚前に買ったパナソニックのラジカセが寄る年波で妙な症状を起こすようになりました。例によって20年以上前の製品ゆえメーカーでの修理は不能。DIYの出番です。1週間ほどかけていじくって、何とか復活させました。


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 パナソニックRX-DT77は1990年発売。時はCDとカセットの幸せな共存時代、さらにバブルの余韻もあり、ラジカセと言えども高音質・多機能・凝ったデザインを盛り込んだ高価格巨大タイプが販売されていました。CD+ダブルカセット+ラジオという成り立ちは当時の標準仕様。カセットの倍速ダビング機能や、ラジオがTVの音声も受信できるというあたりも当時の標準。タイマー機能やリモコンも標準です。

 定価はよくわからんのですが、50000円以上のはず。当時としてもかなり高価。嫁サンも「高かったよお」とよく言ってました。寸法は幅710mm高さ293mm奥行264mmとジャンボサイズ。重さも8.5kgとヘビー級。一応乾電池でも作動しますが、単一乾電池10本を入れると総重量9.6kg。キャリングハンドル付きとはいえ、ポータブルとは言いかねます。

 こいつにはS-XBSという重低音再生回路があり、ラジカセとは思えない強力な低音を再生します。ソニーの「ドデカホーン」と並ぶ人気のアイテムでした。

 パナソニックラジカセの一番の売りは本体上部のディスプレイ部分が可動式になっている「コブラトップ」。これは大げさに言えば青少年男子の憧れでした。後に電動コブラトップなんてのまで出ます。ただしRX-DT77は手動開閉式。


 さて、我が家のDT77の妙な症状というのは、そのコブラトップに関わるものです。具体的には、

・コブラトップを閉じた状態で電源スイッチをオフにすると、数秒後に電源が勝手にオンになる。

・コブラトップを開閉すると、途中でビープ音が発声し、モード切替などが誤作動を起こす。

・そのせいかどうか知らないが、CDのトレイ開閉がうまく作動しない。


 ではヘタの横好きDIY修理と参りましょう。shira史上もっとも巨大な音響機器の分解修理です。


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 作業に入ったDT77。いや、デカい。幅110cm以上ある書斎の机の大半を占拠してしまいます。

 フロントパネルには4つのスピーカーとカセットのフタがついていて、これはコネクタを外すと簡単に取れました。以前分解修理したソニーCF-1480に比べると設計は合理的で、割と分解手順はわかりやすく、しかもコネクタで簡単に脱着できるようになっています。それでも昨今のラジカセのようにチープな作りではなく、筐体も中心部もかなりしっかりした作りになっています。私としてはムダに頑丈なCF-1480の作りの方が眺めていて面白かったですが、設計は明らかにこっちの方がよくできてます。


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 さて、問題のコブラトップ。トップと本体は写真のように2種類のごく薄いコードでつながっています。この右側がおかしい。通電状態でコードを軽く叩いたり触ったりしてみると、場所によってはピッピッとビープ音を鳴らしてモード切り替えが狂う。このコードはコネクタから1cmほど下のところで直角に折れ曲がっていて、ここがどーにも怪しい。電子回路のことはまるでわからないのだけれど、ここが接触不良を起こしているのは確かなようです。叩いたり触ったりのテストは、なんだか歯医者が歯や歯茎を叩いて「これ痛いですか?」と聞くアレをやってるような気分でした。


 このコードを何とかしないといけないのは確か。こういう時はDIYの味方、ネット検索。ところが、ここで、これまで経験したことのない思わぬ事態が発生。

 このコード、なんて名前なの?

 名前がわからないんじゃ、検索ができない。最新のiPhoneならカメラをかざして「ヘイ、シリ、これ何だ?」とか言えば教えてくれるんですかね。スマホ持ってないけど。


 で、3日間かけて画像検索やら何やらして、ようやく名前が判明。フレキシブルフラットケーブル、略してFFCというんだそうで。

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 ケーブルの断線を直すには、ケーブルごと替えるのがベスト。ところが、DT77のこのFFCは30ピンの幅39mmで、通販では見当たらない。町のパーツ屋にもない。ここで2日ほど途方にくれます。

 2日後、意を決します。どうせこのままではDT77は動かない。FFCをいじくってみようと。ダメならダメで考えようと。

 最初は断線した部分の前後の皮膜をはがして、ハンダと銅線でつなぐことを考えました。しかしこれは大失敗。ハンダはあふれるわ銅線はつかないわで、かえって傷を深くしてしまいました。ここでまたまた、2日ほど思案します。思案の末、荒療治に出ます。


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 FFCはごく薄いケーブルですが、構造は上の図のようになっています。端末はコネクタの抜き差しができるように平型の導体が端子になっていて、補強のためにPET材で補強されています。

 私が考えたのは、断線した部分を切り捨て、絶縁体を剥ぎ取り、補強材を貼り付けて即席の端末にして、コブラトップのコネクタに無理矢理突っ込んでしまおうという方法です。切り捨てた分だけFFCは短くなりますが、これはあれこれやってみたら何とかなりそうです。

 絶縁体の剥ぎ取りは紙やすりとカッターナイフを使いました。まずは通常の紙やすりでこすり、導線が見えてきたら800番の耐水ペーパーで慎重にこする。一番細かい部分はカッターナイフの刃先で慎重の上に慎重を期して剥ぎ取りました。補強材は切り取った部分から移植。幸いなことに簡単に剥ぎ取れました。

 新たに絶縁体を剥ぎ取った端末に補強材を両面テープで貼り付けて端子に接続。本来の規格じゃないのでなかなかうまくはまらなかったのですが、2度ほど失敗の後、なんとかうまいことはまりました。外れては困るので絶縁テープで固定しました。


 かくして作業は終了。

 作動状況は完璧です。コブラトップの開閉で異常は発生しません。カセットもラジオもちゃんと作動します。最後まで手こずったCDトレイの誤作動もなくなりました。完全復活です。

 実は不調になるまでDT77は寝室で使われていました。寝る前に音楽を聴いたりして。

 復活なったDT77を久しぶりに寝室で使ってみました。いやー、いい音しますわ。本当にほれぼれします。


 DT77のように大きくて重くてすごくいい音を出す音響機器のニーズは、今やほとんどありません。

 TVは薄型、パソコンはノート型、タブレットにスマホ。大きくて重いアンプやスピーカーを収められない機器からマトモな音を出す技術こそが現代のニーズ。エンジニアって本当にすごくて、あんなに薄いTVやタブレットがけっこうな音を出してみせます。1980-90年代のラジカセがかなりいい重低音再生をするようになった時オーディオマニアの私は随分おどろいたものですが、今やもっと厳しい制約下で相当なものをエンジニア達はやってみせています。仕事場にソニーのbluetoothスピーカーがあるんですけど、ヤキイモくらいのサイズのスピーカーが充電池作動でけっこうな音を出してくれて、感心することしきりです。

 まあ。それでもね。DT77みたいなでっかいラジカセや、私のメインシステムみたいなバカでかいステレオでちょいとボリュームを上げて音楽聴いてみると、やっぱ全然違いますよ。

 DT77のようなラジカセはバブルラジカセと呼ばれ、中古市場ではちょっとした人気機種のようです。実際、ちゃんと作動すればとてもいい音を出します。古い割にはいい、という意味じゃありません。新品よりもいいんです。そもそもモノがいいんです。デカいですけどね。


 

コメント(4) 

コメント 4

ayu15

うちにはいくつもCD部分の壊れたCDラジオがあります。

さらに、端子がほんと少ないのでほかの機器につなげにくく不便です。
by ayu15 (2017-12-02 19:04) 

shira

 tyuuriさん、あゆさん、ご訪問ありがとうございます。
 CDドライブは音響機器やパソコンで一番壊れやすい場所じゃないかと思います。故障の原因はゴミやホコリによるもの、ベルトなど機械のトラブル、制御回路のトラブルなどなどです。お掃除するだけで直ることは意外にあります。
by shira (2017-12-02 23:14) 

bashy0322

それ私も持っていました。でも、誰かにあげてしまいました。音は良かったですね。コブラトップ、懐かしい!
by bashy0322 (2017-12-14 06:50) 

shira

 bashyさん、ありがとうございます。元オーナーだったんですか。
 RX-DT77に関するネット記事はけっこうありますが、オーナーはどなたも最近になって中古で手に入れています。
 我が家のDT77は嫁サンが新品で買ってそのまま今日に至ってますので正真正銘のワンオーナー物です。「バブカセ」のワンオーナー物ってかなり珍しいんじゃないかと思います。
by shira (2017-12-17 14:55) 

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