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ssh1002 小論文のウルトラ基礎 [小論文]

<2017>

 ssh4〜8として2006年にアップした「小論文のウルトラ基礎」を再編して公開させていただきます。

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 小論文の入り口でつまづいている人には、まずとにかく、以下の形で1回書いてみることを進めます。

 原稿用紙の一番最初に自分の意見を書きなさい。
 あとの部分はすべてその「理由」を書きなさい。


 意見というのは「私はこうするのがいいと思います」ということ。理由というのはそのものズバリ、私がそう思う理由です。理由は「論拠」なんて呼ばれます。
 論拠に原稿用紙の大半、できれば80%以上を使いなさい。それ以外のことは一切何も書く必要はありません。

 こうすると、実にいろいろな困難が出てきます。
 まず、意見をはっきり言わねばなりません。ニュース番組のまとめよろしく「慎重な対応が求められます」なんて無責任な言い方はNGです。それでは意見になりません。
 意見というのはあくまで「私はこう思います」とはっきり言わねばなりません。これはふだんの学校のお勉強では求められないことですし、大人の世の中のおつきあいではむしろはっきり言うとカドが立つことです。
 しかし、小論文でははっきり言わねばなりません。
 もし小論文の出題で「あなたが先生で、どんなに注意しても物を壊すことをやめない生徒がいたとしたらどうしますか?」と問われたら、とにかくはっきりと「私はその生徒を殴り倒します」とか「私はとことんその子と話します」とか「私は何もしません」とか言わねばなりません。乱暴でも何でも、明確な意見のないものは小論文とはみなされません。
 
 意見はどんな内容でも構いません。「意見」に正解はありません。
 なぜ?
 小論文は「正解のない問いに答えようとする能力」を問うためにあるからです。
 入試の小論文では、いろいろな意見のあるような題材=正解なんかないと言う題材だけが選ばれます(これ重要)。
 先方が求めているのは、好ましい意見ではなく、「私はこれこれこういう理由でこう思います」という論拠をがっちりと組み立てられる能力です。
 「原稿用紙の最初に自分の意見を書きなさい。あとの残りはすべてその理由を書きなさい。」
 仮に800字の小論であれば、意見は100字以内、あとの700字以上はその理由ということになります。つまり、小論文の中身の大半は「意見の理由」すなわち「論拠」ということです。
 「起承転結」とか「導入と結論」とかは、不要です。

 今、小論の練習問題に取り組んでいて、担当の先生になかなかほめてもらえないという人がいたら、だまされたと思って「冒頭に短い意見、残りはすべて理由」で1本書いてみて下さい。
 この練習方法の狙いは2つあります。
 1つは、こうすると、1つの小論に1つの意見しか書けなくなります。いやでも1つに「テーマを絞る」ことになる。自分が本当に言いたい意見しか選べないはずです。
 そしてもう1つは、理由だけで700字も書くためには、相当いろんなことを考えねばならない。これが重要です。

 小論文のゴールは、読み手を「なるほど」「うん、あるある」と納得させることです。
 人に「なるほど」と思わせるのは「理由」の出来によります。「意見」そのものの出来不出来によるのではありません。
 だから、小論にとって、「理由」こそが最大の採点対象なのです。「冒頭に意見を、あとの残りはすべて理由を」というのは、一番大切な部分に一番たくさん字数を使うべしという意味でもあります。

 小論では意見に正解はありません。断じて、ありません。
 なぜか。
 正解のないテーマしか選ばれないからです

 小学校の道徳の授業よろしく、相手の望む答えを見抜いて答えてみせる能力は、大学でも社会でも重要ではありません。重要なのは、現実社会にいっぱいいある「正解のない問題」に立ち向かい、何とかしようとする力です。
 小論文入試は、その力を問うためにあります。よって、正解のない問題が出されます。
 原子力発電は必要か?貧困問題をどうするか?外国語教育をどうするか?選挙制度はこのままでいいのか?死刑制度は必要か?中学生の部活動はどうあるべきか?等々。現在進行形の社会問題がテーマとして平気で出題されます。
 もちろん唯一の正解などありません。あればこれらの問題はとっくに解決されています。
 解答者に求められるのは、「少なくとも私はこう考える。その理由はこうである。」と答えることです。
 まったく正反対の意見を書いた受験生がともに高評価で合格することもあります。それは論拠が優れているからです。


 そういうわけで、小論で苦労している人は、まずはこれを試してみてください。

 原稿用紙の一番最初に自分の意見を書きなさい。
 あとの部分はすべてその「理由」を書きなさい。
 
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