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ssh1011 学力は本当に低下しているのか [教育問題]

<2017>
<ssh114を加筆訂正削除の上再録>

 小論文入試は医療系と教育系で特によく出題されます。
 当然、医療問題と教育問題は、よくテーマになる。
 でもこれが、けっこう危ない。
 特に教育問題は、マスメディアでもちまたでもかなり適当に語られている。

 たとえば「学力低下」。
 学力低下という言葉を耳にしたことがないという人はいないでしょう。

 ここで質問。
 日本の学生の学力は低下していますか?
 もしそうであると考えるなら、その根拠は、何ですか?
 「新聞に書いてあった」「テレビで言っていた」「みんながそう言っている」
 そう答えた人には、小論文は書けません。これらは根拠にならないからです。

 大変悲しいことではありますが、我が国の新聞もテレビもみんなも、ウソ偽りを流します。悪意があろうとなかろうと、事実ではないことも伝えてきます。
 もし新聞やテレビやみんなが「学力は低下している」というのがあなたの情報源であるなら、あなたは新聞やテレビやみんなが学力低下を主張する根拠を確認する必要があります。

 あるいは、こんな意見もあるでしょう。
 「大学関係者が過去の学生より学力が低下したと言っている」
 「国際的なテストで学力低下が裏付けられた」
 しかし、実はこれらも、学術的にはあまり力がないんです。

 大学関係者うんぬんに関して言えば、特定の能力を過去何十年にも渡って定点観測したデータがあるわけではありません。多くは印象論です。
 国際的なテストというのは、多分PISAテストのことでしょうが、これも何とも言いにくい面があります。
 PISAのテストで問われたのはいわゆるリテラシー能力で、百ます計算や反復ドリルでは絶対に点数の取れないテストです。それに、PISAのテストは毎年なされているわけではありません。
 さらに言えば、PISAは実施するたびに参加する国と地域が増えています。日本の順位は確かに1位とか3位とかじゃなくなりましたが、ライバルが増えれば上位に入りにくくなるのは当然です。

 ついでに触れておくと、全国学力テストでは学力低下は裏付けられていません。
 全国学力テストは様々な弊害が指摘され1960年代に中止、再開したのは2007年です。この07年の試験では学力低下が裏付けられることが予測されていましたが、1960年代より得点はむしろ向上しているという逆の結果となりました。(その後は過去との比較ではなく都道府県同士の比較競争の道具になっています。)

 というわけで。
学力は、本当に低下しているのか?
 答えは「?」です。

 本当のところは、よくわからないのです。

 とにかく、学力低下を決定的に裏付ける根拠は、今のところ皆無です。
 学力低下は、今のところ「一つの仮説」でしかありません。

 この問題を深く掘り下げるためには、次の問いを考えねばなりません。
 今日、本当に必要な「学力」とは何か?
 少なくとも、30年前や50年前と全く同じ能力が求められていると断言する人はいないでしょう。時代が変われば、求められる学力も当然変化します。
 これが明確にならねば、つまり学力の定義がなければ、学力低下なんて論じることはできっこないです。


 なお、PISAでは日本の学生の特徴として、学力そのものよりも、学習意欲が低いことが指摘されています。他の国際調査でも日本の学生は自尊心が極端に低いという結果が出たりしています。が、これらを書き始めるときりがないのでこの記事はこのへんでおしまいにしておきます。
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