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ssh199 リスク〜小論キーワード(3) [小論キーワード]

<2008>


 


 「リスク」と聞いて、「何それ?」って人は今や少数でしょう。


 「リスクって、危険のことでしょ?」はい。正解です。


 


 もちろん元々は英語。手元の英和辞典によると、


 


 risk(名)1(危害・損害などの)危険、恐れ


      2(保険用語)危険率、リスク


   (動)(命・財産などを)危険にさらす、賭ける


 


 受験生だったら上記の意味だけでなく、at any risk(是非とも)at one's own risk(自分の責任において)at the risk of AAを賭けて)などのイディオムも知らないといけませんな。


 


 ところで、なんでこんなポピュラーな言葉を、小論キーワードとして取り上げるの?


 はい、もちろん、理由があります。


 上記、手元の英和辞典のriskの説明、一部カットしてあります。カットしたのは、こういう注。


 


◆◆ dangerと違って「危害・損害などにあう高い可能性」または「みずから覚悟して冒す危険」を言う◆◆


 


 リスクというのは、危害にあいそうな可能性か、自ら冒す危険のことなんですね。


 だとすると、以下のような使い方はマチガイということになります。


 


(1)日本は地震国で、常に地震のリスクがある。


(2)クルマの運転は、事故のリスクに気をつける必要がある。


(3)あの食品会社が偽装で告発された。あそこの製品には偽装のリスクがある。


 


 これらはすべて単なる危険=dangerです。


 


 

 一般的に、小論文の答案にカタカナ語を多用するのはよろしくありません。

 カタカタ語の多用は「こいつ本当に分かってるのか?」という疑いを誘発します。

 ヘンにカタカナ語をたくさん使う奴って、イヤミというか、好感持てないでしょ?あれと同じ。

 それに、カタカナは字数を食います。800字か1200字の小論では不利です。

 

 まあしかし、「リスク」なんてのはもはや一般的だし、たった3文字ですから、遠慮なく使っていいでしょう。

 ただし。使う以上は、正確に使わないと。

 

 要は上記の注から外れないように使って欲しいわけです。

 もうちょっと足すと、基本的には、リスクというのは

 「何かを得るためには、どうしても覚悟せざるを得ない危険」

 と考えておけばいいと思います。

 

 一番分かりやすい例は、ギャンブルです。

 ギャンブルは、儲ける可能性がある。そのかわり、損する危険もある。損する危険のまったくないギャンブルなんてありません。ギャンブルで儲けるには、損する危険も覚悟せざるを得ない。

 この「損する危険」こそが、ギャンブルのリスクであるわけです。

 

 リスクという概念が大活躍するのは、経済の世界です。

 経済の世界では、確実でしかも大儲けできるというものはありません。(もしそういう話があなたの身近にあったら、詐欺かマルチ商法の可能性大。要注意。)

 基本的には、大きな利益を得られる行為には、大きな危険が伴います。

 逆に、危険の小さなものは、得られる利益も小さい。

 これを「ハイリスク・ハイリターン」「ローリスク・ローリターン」などと言います。

 

 経済以外でも、リスクという概念は意外なところで出てきます。

 医療でも使われます。例えば、

 「この治療法はうまくいけば素晴らしい効果が期待できるが、リスクも大きい。」

 「今手術に踏み切ることは、リスクの大きさの割には得るものが少ないから、もう少し様子を見てはどうか。」など。

 

 最近、リスクという概念が面白い分野で使われている記事を目にしました。

 話題は子どもの遊具。

 ジャングルジムや回転ブランコなどで事故が起きると、「危険な遊具」という指摘がされます。

 で、過剰反応(と私は思う)した行政が遊具をさっさと撤去してしまう。

 すると今度は「危ない遊びをしなければ子どもは成長しない」という逆の指摘が出る。

 昨今ときどきある話です。

 

 で、私が読んだ新聞記事は、子どもの遊びの「危険」は、リスクとハザード(hazard)に分けて論じていました。

 それを冒すことで子どもの成長につながるような危険はリスク。

 そういう見返りのない、単なる危険がハザード。

 

 ジャングルジムや木登りなど、高いところへ登って遊ぶ時の危なさは、リスク。

 遊具が壊れて大けがをするような危なさは、ハザード。

 

 教育の観点からすると、ハザードはすべて排除すべきだが、リスクまで排除してはならない。

 遊びのリスクを排除すると、遊びによるリターン(利益)も得られなくなると、そういうことですね。

 

 リスクという言葉、身近な割には、案外と奥が深いでしょ?

 そういうわけで、小論キーワードとして取り上げた次第です。


 

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