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ssh255 奉仕とボランティア 〜 小論キーワード(10) [小論キーワード]

<2009>

 

 奉仕とボランティア。

 ふだんは割とごっちゃに使われているみたいですが、この2つ、案外と違いがあります。

 

 メイドカフェで、メイドさんがご主人様にしてくれるのはご奉仕。

 田中康夫が一躍名を馳せたのは、阪神淡路大震災でのボランティア。

 この2つは、入れ替えはムリでしょう。メイドさんのボランティアとか、震災の奉仕とか言うのは、かなりヘンです。

 

 奉仕とボランティアは、違うんです。どう違う?

 ボランティアは自発的でなければなりません。

 

◆◆ほうし(奉仕)

 1 社会や他人のために(個人的利害を無視して)つくすこと。「社会奉仕」など。

 2 商人が安い値段で品物を売ること。「奉仕品」など

 類義語: サービス◆◆ (学研現代新国語辞典 改訂新版)

 

◆◆ボランティア

 公共福祉などのために自主的に無報酬で奉仕活動をする人。篤志奉仕家。「ボランティア活動」「ボランティア精神」など。◆◆(同上 太字はshiraによる)

 

 

volunteerの英和辞典説明は、こんな感じ。

◆◆volunteer

()

 1  無償奉仕者 ボランティア

 2 有志 志願者

 3 志願兵

()

 1 進んで申し出る

 2 (自発的に)提供する

 3 (情報・意見など)を自発的に述べる

 4 志願兵になる

 5 ()に勝手に(・・・)を引き受けさせる◆◆(ロングマン英和辞典)

 

 


 

 志願兵もボランティアと言うんですな。志願兵というのは、自分から進んで兵隊になる人のこと。好きでもないのに呼ばれて兵役をやらされるの「徴兵」の対義語とでもいいますか。

 兵役はともかく、自分から進んでやらないとvolunteerにはならないということです。


 12種類の辞書だけでものごとを断ずるのは危険ですが、ざっと見ると、こういう整理はできそうです。

<共通点>

 ・奉仕もボランティアも、他者のための行為である。

 ・奉仕もボランティアも、自分の利益のためにやる行為ではない。

<相違点>

 ・ボランティアは自主的行為であるが、奉仕はその限りではない。

 ・ボランティアは無償(タダ)であるが、奉仕はその限りではない。


 一時期、生徒に奉仕を義務付けるべきだという意見がメディアで盛り上がったことがあります。結局一時的なものだったのですが、東京都は都立高校で<奉仕>を必修としました。

 今にして思えば、ここで「ボランティア」なんて横文字を使わなくて良かったですなあ。自主的行動を義務付けるなんて、できっこないっすから。


 奉仕は、他者からの働きかけや義務・命令を受けて行うことが可能です。さらに、奉仕には、報酬を与えることも可能です。

 だから、都立高校で<奉仕>を一生懸命やったご褒美として良い成績や良い進路(推薦とか)を与えたとしても、奉仕の原義には反しません。

 

 一方、ボランティアは自主的自発的行為ですから、他者からの働きかけだけでは成立しません。ましてや、義務化や命令はできません。命令した時点で、自発ではなくなってしまいます。

 さらに、ボランティアは無償でなくてはなりません。ボランティアによって他者から認められようとか、そういうスケベ心は無用です。


 以上を踏まえて、ボランティア活動を定義すると、<自発的に無償で行う奉仕活動>ということになります。

 自発的で無償という条件が付く分だけ、ボランティアの方が奉仕よりレベルが高いということになるでしょうか。


 ただし、もちろん、奉仕はボランティアより低レベルとか、奉仕の義務化などナンセンスだとか決めつけるのは早計です。

 報酬があるがゆえに、より質の高い活動ができるということもあり得ますし、義務であっても、奉仕活動を行うことで、それが結果としてボランティア精神を育むという可能性もあります。奉仕さえさせりゃあボランティア精神が身につくなんてもんじゃないのも事実ですが。

 

 本記事の主題は、奉仕とボランティアは違う、ということです。

 小論を書く時、課題文を読む時に、ちょっと気を付けることです。


 

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