ssh462 華麗なる加齢〜歳は取るものです [教育問題]
<2011>
2週間ぶりの休日で朝から自宅でゆったりしています。いや、しんどかったなあ、この2週間。
先週は保護者懇談会。今年は18日の月曜日が休日だったので、懇談期間は火~金の4日間。41名の担任クラス保護者と懇談するため、午前授業のあと午後の半日で毎日10人と懇談というのはなかなかハードでした。
土日はクラブと同窓会や家族の諸々で動きっぱなし。25日からは夏休みの補習。補習とはいえ実質は特別授業、毎日3コマ連続での授業はこれまたハードでした。
このスケジュールに身体がついていけず、終盤にひどい夏風邪をひき、29日は仕事を休んで寝込んでしまいました。
ようやく熱は下がりましたが、今日も病み上がりっつー感じで身体に力が入りません。
家族は長男と次男の学校見学のために上京しております。明日出張のある私は同行せず、今日は静養がてら校長先生(写真下)とお留守番です。校長先生、朝からリラックスムード。さすが留守番慣れしてらっしゃいます。
考えてみると、私もこの商売(高校の先生)を25年もやっておるのですね。「ど根性ガエル」の町田先生よろしく「教師生活25年」であります。ったって若い人にはわからないネタか。
で、この4月から1年生の担任を受け持っているわけですけど、今回のクラスは5回目の担任。25年で5回目というのは小中学校と比べるとえらくのんびりした感じですが、本県の高校ではこれが標準的なペースです。
ということは、担任を持つたびにこちらは5~8歳ほど加齢しているわけです。
初めて担任を持ったのは25歳の時。高1生とはちょうど10歳差。生徒の方が身近で、保護者というのは自分よりずっと年上の、自分の親に近い年代です。
そんな時代もあったよね、私も来年いよいよ五十路突入。
今回の担任クラスは、保護者がほぼ同年代です。って、当然だわな、自分の子どもが高校生なんだから。
「若い頃は保護者と話をするのが本当に苦手でさあ、だってあっちの方がずっと年上なんだから。保護者と同じ年齢になって、ようやく落ち着いて話せるようになったよ。」こうおっしゃる先生、とても多いです。たぶんこれが普通なんだと思います。
ところが、私は正反対。
駆け出しの頃の私はあまり保護者と話すのが苦手じゃなく、割とズケズケとあれこれ言っていました。怖いもの知らずの若造だったんですな。でもあまり怒られた記憶もないので、たぶん保護者のみなさん、とても心の寛い方々だったんでしょう。
最近は、保護者の方と話すのにちょっと緊張します。我ながら意外でした。歳が近いのに、なぜ?
思うに、若い頃の私は、親という立場に対して部外者というか傍観者というか、よそ者だったんでしょう。
よそ者は気楽です。責任ないし、アラはよく見える。しかも一応大卒だから、現実は知らなくても一端の理屈は並べられる。他人に要求するだけで、自分は何もしなくていい。
口だけ達者な自己無責任論者。sshで日常的にけなしている中央メディアと同じようなもんです。
ところが、自分も保護者と同じ立場になってくると、親の労苦は経験として実感している。
理屈はわかってても、思うように行きっこないのが親業。同じように育てたつもりでも全然違う人格に育つのが兄弟姉妹。悪気なく子どもを傷つけたり壊したりしちゃうのが親。同じやり方が吉とも凶とも出るのが子育て。一人目がうまく育ったからって、二人目が同じ用に育つとは限らない。他人の成功例を真似て壊滅的な失敗をすることもある。一人や二人育てたくらいで偉そうなことは言えないのが親ってものです。
子育ては、怖いです。
そういう怖さだけはあるものだから、どーも滅多なことは口走れないなというプレッシャーを感じちゃうんですよ。
前回担任したクラス(一昨年卒業)の入学式の日、ずらりと勢揃いした保護者を前に、私は突然頭真っ白のしどろもどろになってしまいました。あんな経験は初めてです。たぶん怖かったんでしょう。
親業の怖さが実感としてあると、子どもを見る目もかなり変わってきます。
何と言いますか、ものすごい貴重品に見えるんですね。
どの子も、いろんなことを通り抜けて成長してきて今ここにいるんだよな。そう思うと、何だか大変なものを預かっちゃたなと。
何しろ16年ほど前には、胎児どころか精子と卵子ですらない、まったくの無存在だったんですからね、この子たち。えらいことです。
いや、そんなことは、頭では判っていましたよ、若い頃も。でもね、全然実感として判ってなかった。
understandしていても、realizeできていなかったんですね。
若い頃、「生徒が可愛い」とか「生徒が好き」というベテラン教員のセリフが、まったく信じられませんでした。んなはずあるもんか。若造を教育するために方便使ってるだろ、と。
最近、私もだんだん「生徒は可愛いな」と感じ始めています。生徒だけじゃなくて、同年代の見知らぬ若者を見ていても、何となく微笑ましい気分になるんですよ。う~ん、ヤバいぞ。男子ならともかく、見ず知らずの女子生徒を見てニヤニヤしていたらただの変態オヤジじゃないか。
大学時代によく面倒を見てくれたクラブの先輩がいました。とても人柄が良かったので、彼の誕生日には男女問わずけっこうな数の部員からプレゼントがありました。
その時の先輩のセリフが、「いや~、歳は取るもんですねえ。」
加齢のつらさの一つは、身体のあちこちの性能が落ちることでしょう。
無理が効かなくなる、疲れが抜けない、足腰が痛む、見た目が老ける(女性はこれが一番深刻かな)、頭の回転が鈍る(私はこれが一番つらい)、新しいことに対応できない、等々。
でも、加齢して初めて判ることもいっぱいありますね。
ものごと、何でも悪いことばかりじゃない。デメリットはメリットと隣り合わせ。
今年の保護者懇談会は「いやあ、子育てってホントに難しいですよねえ」と保護者といっしょにこぼすことがやたらと多かったです。
学校の先生が保護者に何か有益なアドバイスをするのが保護者懇談の意義だとしたら、最低の懇談ですよね。何のアドバイスもしてないんですから。
でも、いいじゃないですか。どこかのテキストから引っ張り出してきたようなアドバイスなんかもらったって約に立ちゃしませんよ。親業は常に手探りです。一緒にため息つく人がいるだけで相当違いますよ。
どっかの府知事じゃないけど、ルールやマネジメントで片付く世界じゃないですからね、子育ては。