ssh553 熟年ビギナー [社会]
<2012>
LHR64で書いたように、先日、修復した自転車で往復10kmほどの距離を走りました。起伏もあまりないので、自転車で行くことそのものは大したことはありません。片道25分もあれば行けます。高校生ならみんな自転車で通学する距離。
でも、これは私にとっては大冒険。人間ドックでエアロバイクを漕いでいる途中でストップをかけられて大恥をかいた身ですから。その日からちょっとした体力作りを始めました。家族に見つかると茶化されるのでこっそりと。
かくして50オヤジが20年ものの自転車で市街地を走ったのであります。気分的には颯爽と。
で、走っている最中に、妙なことを考えました。
本当に久しぶりに自転車でけっこうな距離を走りました。市街地を走るのはほとんど初めて。
でも、私を見かけた人のうち、私がビギナーだということに気付いた人はどのくらいいたでしょうか?
50歳のオッサンが、嬉しそうに20年ものの年期の入った自転車に乗っていれば、大半の人は「ああ、この人は昔っから自転車に乗っているのだな」と誤解したんじゃないでしょうか?
熟年が何か新しいことを始める時は、たいてい「お買い物」から入ります。
熟年登山ビギナーはえらく本格的な靴やリュックや衣類を持っています。熟年写真ビギナーはゴージャスな一眼デジカメを複数持っていたりします。
私の地元はけっこうな観光地で、行楽シーズンにはたくさんの観光客がやってきます。すると、上記のような立派な道具で武装した熟年もたくさんいます。
こういう熟年のみなさんを、若い頃の私は、年期の入った趣味人たちだと尊敬の眼差しで見ておりました。
しかし、彼ら彼女らは人生のベテランではあっても、趣味はビギナーだったりするんですね。
熟年ビギナーはカッコよくもあり微笑ましくもあり、厄介でもありです。
新しいことに挑戦することはステキなことです。人間、歳を取ると決心する勇気も鈍りがちだからなおさらです。
それに、お金と時間があるのなら、それを存分に使って人生をエンジョイするのは結構なことです。経済も潤いますし。
厄介なのは、高年齢の初心者だということ。
熟年登山者の遭難や事故がよくあります。
かつの私はちょっと不思議に思っていました。高齢ならベテランのはずなのになぜ?と。
何のことはない。熟年登山家の大半はビギナーなんです。
高年齢の初心者ですから、経験も体力もない。
そりゃ遭難もするでしょう。
熟年ビギナーがカッコよくなれるか厄介者になるかの境い目は、ゼニ以外の部分じゃないでしょうかね。
趣味ってのは、知力体力が要ります。知識も必要だし、練習も必要。けっこうなトレーニングが必要な場合もある。
特に大変なのは知力を鍛えることでしょうね。つまり勉強。
勉強は大変です。歳取ると特に大変。でも、どんな趣味でも、その分野のことを勉強しないと、永久にビギナーです。歳を取ってから大学受験をしたとか、外国語の勉強を始めたとかいう人は、掛け値無しにカッコいいです。
ゼニで片付かない勉強やトレーニングの部分が、ゼニの投資に対してひどくお粗末だと、カッコだけの厄介者に成り下がっちゃうんじゃないでしょうかね。
昨今の熟年(私を含む)ってのは、なまじっか景気のいい時期に生きてきたもんだから、熱意でも愛情でもゼニの多寡で表したがるんじゃないかと思うんですよ。
でもね。やっぱ、人間「ゼニ」だけじゃないですよ。
たかが趣味と侮るなかれ。趣味だって、ゼニだけで幸せになれるような甘っちょろい世界じゃないですよ。