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ssh580 社説の読み方〜公務員の機関紙配布裁判編 [社説の読み方]

<2012>

 

 選挙シーズンたけなわです。

 私のような教育公務員の場合、選挙シーズンが近づくと当局からお達しがあります。公務員の政治活動は法的に制限されており、それに抵触するような行為はしないようにと。

 ま、実際に市町村や都道府県の首長選挙だと現職候補の応援に組織的に動いてお縄になったというケースもあります。ただそれは現職が落ちた場合の話で、現職が当選するとあまり摘発はされないのですね。私の地元でもそんなケースがありました。不可解なり、我が祖国。

 

 さて、国家公務員が休日に「しんぶん赤旗」を配布したのは違法か否かという裁判の最高裁判断が出ました。コトは2003年と2005年に、当時の厚労省課長と社保庁のヒラ職員がそれぞれ別個に赤旗の号外を休日に配布したというもの。最高裁の判断は、課長は有罪、ヒラは無罪。

 この件について即日社説展開した中央紙は3紙。しかも意見は真っ二つに割れております。意見が割れるのはssh的には大変ありがたい展開。ということで記事化させていただきます。

 

 

 今回はちょっと趣向を凝らして、私が3人の答案を順番に採点しながらあれこれ言っているという設定で行きたいと思います。私は多い時は300枚以上採点しますけど、2枚以上同時に読むことはできませんので、こんな風に11枚読んでチェックしているのだとお考えください。なお順番はまったく偶然によるものです。

 

 

 さ~て、それじゃ採点と参りますか。最初の答案はと・・・おお、読売クンか。

 

◆◆政党紙配布判決 公務員の中立を乱さないか(128日読売)

 法的に禁じられている国家公務員による政党機関紙の配布について、最高裁は、場合によっては罪に問われることはないとの判断を示した。

 国家公務員の政治活動の範囲が、なし崩し的に広がらないか、懸念が拭えない判決だ。

 過去の衆院選で、共産党機関紙の号外を休日にマンションなどに配布したとして、元厚生労働省課長補佐と元社会保険庁職員が国家公務員法違反に問われた。

 最高裁は、元厚労省課長補佐を有罪、元社保庁職員については無罪とする判決を言い渡した。

 国家公務員法は、職員の政治的行為を制限し、それに基づく人事院規則が、政党機関紙の配布を明確に禁じている。

 判決がまず、国家公務員について、「政治的に公正かつ中立的立場で職務の遂行に当たることが必要」と指摘したのは当然だ。

 だが、その先の最高裁の判断には疑問符が付く。

 今回の裁判で、最高裁が重視したのは、2人の地位だ。有罪となった元厚労省課長補佐は、管理職的地位にあり、政治活動をすれば、他の職員の業務にも影響を及ぼし得る、との見解を示した。

 一方、窓口相談などを担当していた元社保庁職員は管理職でなく、政治活動が職務に影響することはない、と判断した。

 この見方は、一面的ではないか。地位にかかわらず、職場に強い影響力を持つ職員はいるだろう。例えば、官公庁の労働組合の幹部は管理職ではない。

 どんな場合に政治活動が違法となるかについて、最高裁は、公務員の地位や権限を総合判断し、「行政の中立的運営に実質的に影響を及ぼす場合」との見解を示した。この線引きもあいまいだ。

 最高裁は1974年、国家公務員の政治活動について、「地位や職種に関係なく政治的行為を禁じることは憲法に違反しない」と判断した。この判例との整合性でも理解しにくい面がある。

 今回の判決により、管理職に就いていなければ、政治活動が許されるという解釈が広がる恐れもある。政権政党に、国の機関の職員がビラまきなどで協力するような事態も考えられる。

 教育現場への影響も心配だ。教員は国家公務員並みに政治活動が制限されている。民主党との癒着が批判された北海道教職員組合の政治資金規正法違反事件のようなケースが起こりかねない。

 やはり、公務員の政治活動は、厳格に規制されるべきだ。◆◆

 

 ん~、悪くないじゃない。


 

 論理の飛躍もないし、反論のために具体例も示している。論旨は「公務員の政治活動は厳格に禁止すべし」と実に明確。これは大変に結構。

 でも最後の教育現場云々の段落(北教組の話)は余計だなー。論点は絞らなきゃ。

 さて、ざっと目を通したから、引っかかった部分を読み直してみるか。え~と、あ、ここここ。第10段落だ。しっかし段落切りが多過ぎるなあ。これじゃかえって読みにくいじゃん。

 「地位に関わらず職場に強い影響力を持つ職員はいるだろう」か。これはイマイチだなー。公務員の政治活動が制限されるのは、まさに公務員という「地位」によるものだもんな。

 ま、でも全体としてはまずまずじゃないかな。60点くらいか。

 

 

 え~と、2本目はと、毎日クンか。

 

◆◆社説:公務員政治活動 過剰な摘発への警鐘だ(1208日毎日)

 国家公務員が休日に共産党機関紙「赤旗」を配った行為に刑事罰を科すのは適切なのか−−

 公務員の政治的中立性と憲法で保障された表現の自由がてんびんにかけられた2件の裁判。最高裁は「政治的行為として禁止の対象となるのは、公務員の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められる行為に限られる」との初判断を示した。

 国家公務員法は、国家公務員の政治的行為を罰則付きで制限する。同法に基づく人事院規則は、政党機関紙の配布など多くの行為を政治的行為として列挙している。

 国家公務員の政治活動に広範な規制をかけたうえ、刑事罰まで科す国は欧米には見られない。政治活動の規制がこれまで過剰に過ぎたきらいは否定できない。思想信条や表現の自由という基本的人権の核心に強く配慮した判決をまず評価したい。

 結論として旧社会保険庁職員は2審の無罪、厚生労働省元課長補佐は2審の有罪がそれぞれ確定する。

 無罪・有罪を分けたのは何か。

 旧社保庁職員については「地方出先機関に勤務し管理職でもない。職務の内容や権限に政治的中立性を損なうような裁量の余地はなかった」とした。一方、元課長補佐は「多くの職員に影響を及ぼすことができる地位にあった」と認定した。

 最高裁大法廷は74年、衆院選で勤務時間外に社会党の選挙ポスターを張ったり配ったりした郵便局員を有罪とした。いわゆる「猿払(さるふつ)事件」で、国家公務員の政治活動を、その職種に関係なく一律に広く禁止する法の規定を合憲とした。

 今回、旧社保庁の職員を有罪としない判断をしたのは、判例を事実上変更したものと評価できるだろう。

 旧社保庁職員については、警察が多数の捜査員を動員して長期間尾行を続けるなど、まるで狙いすましたような捜査手法も批判を浴びた。

 特定の政治団体を支持する公務員をやみくもに摘発するような捜査が許されないのは言うまでもない。

 ただし、最高裁判決は政治的行為に対する明確な基準を示したわけではない。禁止される政治的行為かどうかは、地位や権限、行為内容を総合判断するとの見解だ。依然、あいまいさは残る。

 公務員の行き過ぎた組合活動や、中立性に疑問を投げかける政治的行為はもちろん許されない。ただし、民主主義が根づき、国民の政治意識も変化している。衆院選を争っている各党の間には、地方公務員の政治的活動も国家公務員並みに制限すべきだとの意見もあるが、国民意識からかけ離れてはいないか。

 刑事罰を科すのは限定的にという最高裁の考え方に沿って慎重な判断が必要だ。◆◆

 

 

 んー、これはなかなかいいじゃないの。これを読むとかなり見劣りするなあ、読売クン。

 毎日クンはかなり視野が広い。海外の事情にも触れているし、警察の捜査にも疑問を示している。この視点は読売クンにはないもんなあ。こういうところで評価に差がつくんだよな。

 終盤の「最高裁判決は政治的行為に対する明確な基準を示したわけではない。」のくだりなんか、なかなかじゃないの。何が政治的で何がそうでないのかがはっきりしなければ、厳格に対応って言ったって難しいもの。

 毎日クンの論旨は「公務員の政治活動制限を過剰にすべきではない」だな。

 これは高評価だな。80点くらいあげちゃうか。

 

 

 さてとお次はと・・・あ、産経クンか。今回は大丈夫かなあ・・・。 

 

◆◆赤旗配布訴訟 最高裁判決は禍根を残す(12.8[主張])

 衆院選前に共産党機関紙「しんぶん赤旗」を配布して国家公務員法違反に問われた元社会保険庁職員と元厚生労働省課長補佐に対する上告審判決で最高裁判所は上告を棄却、一方は無罪で他方は罰金10万円の有罪という高裁判決が確定した。

 これはおかしい。公のために奉仕するという公務員の義務は、地位や身分、時刻を問わず、管理職か否かも関係ないというのが法の趣旨のはずだ。結果的に政治活動をなし崩し的に許しかねず、禍根を残す判決と言わざるを得ない。

 判決は政治活動を制限した国家公務員法の規定は合憲としたが、禁じられる行為は「政治的中立性を損なう恐れが実質的に認められるものを指す」という新たな解釈を示した。その上で被告は管理職でなく、休日の私的な行為で、公務員と明らかにしていないなどとして、一般職の元社会保険庁職員を無罪とした。

 だが、最高裁は昭和49年の猿払事件判決で、郵便局に勤める組合員が特定候補の選挙運動をした行為を「国家公務員法違反」と有罪判決を下し、これが公務員の政治活動の判断基準とされてきた。

 今回の判決は「猿払事件判決と矛盾はない」としているが、事実上、判例を覆す判断とはならないのか。実質的に中立性を損なう恐れが認められなければ罰を科せないというのであれば、公務員の政治活動が大幅に認められ、捜査機関の手足を縛る恐れすらある。

 公務員の政治活動への認識が甘いとしか言いようがない。前回衆院選で日教組傘下の北海道教職員組合(北教組)は民主党候補の陣営を組織ぐるみで応援した。

 教員は教育公務員特例法で、地方公務員は地方公務員法でそれぞれ政治活動が禁止されているが、いずれも罰則がなく、実態が野放しに近いことも問題といえる。

 北海道教育委員会の調査でも北教組組合員ら約4200人に不適切勤務が確認され、このうち約3600人の教員は調査に非協力的で本人証言すら得られなかった。自治労組合員は半ば公然と選挙運動を行っている。

 一向に改善しない状況の中で、公務員に対する国民の目は厳しくなっている。先生や地方公務員の政治活動に対しても適切な罰則を定めるための法改正はむしろ喫緊の課題だ。最高裁判決はこうした流れにも逆行している。◆◆

 

 あれ?北教組?これ、もしかして読売クンの答案をカンニングしたんか?

 いや、そうじゃないな。でもなあ、地方公務員と教員のことばっか書いてあるなあ・・・。論理そのものはちゃんとしてるんだけど、もっと論点を絞った方がいいな。

 文章がちょっと断定しすぎだな。「これはおかしい」とか、「法の趣旨のはずだ」とか「半ば公然と選挙運動をやっている」とか「国民の目は厳しくなっている」とか。こんなに威勢良く断定しちゃうと「国民の目って何だよ」とかツッコミいれられちゃうんだよなあ。これは指導して改善させないといけないわ。

 そんなに酷いデキじゃないけど、これは毎日クンはもちろん、読売クンにもちょっと負けるな。50点くらいかな。でも普段の産経クンからすると悪くないな。ちょっとホメてから「もうちょっと冷静な文体にするともっと点数が上がるよ」って励まして指導することにするか。

 

 

 って、あれ?3本だけ?朝日クンと日経クンのは?

 え?日経クン、またボイコット?まったくもう、政治が絡むとすぐ逃げるんだから。

 朝日クンは?誰か知らない?どうしたんかなあ、こういうネタは大好きなはずなのに。

 

 しょーがねーなー、他のクラスの答案を1枚見せてもらうか。ちょっと見せてね。え~と、東京新聞クンね。

 

◆◆政党紙配布判決 言論を封殺せぬように(128)

 政党紙を配布した国家公務員二人に最高裁が、無罪と有罪の分かれた判決を出した。ビラ配布を相次いで摘発した日本政府に国連が「懸念」を表明していた。自由な言論が封殺されぬことを望む。

 「憲法九条は日本国民の宝」

 そんな内容の新聞を配布しただけで、男性は逮捕された。共産党の機関紙「赤旗」で、男性が旧社会保険庁の職員だったからだ。公務員の政治的中立を求めた国家公務員法違反に問われた。

 逮捕は二〇〇四年だ。最高裁で「無罪」となるまで、実に八年間も要した。あきれるほど長い。

 捜査自体も異様だったといえる。男性は二十九日間も尾行された。多い時は十一人もの捜査員を繰り出し、四台の捜査車両を使い、六台のビデオカメラを回した。そんな人員と税金を投入するほど、重大な事件なのだろうか。

 当時は、自衛隊のイラク派遣に「反対」と書いたビラを配布した市民団体や、政党ビラを配った僧侶らも相次いで摘発された。いずれも政府批判の言論ばかりが、狙い撃ちされた印象だった。

 国連の自由権規約委員会は〇八年に「懸念」を表明し、日本政府に表現の自由への不合理な制限を撤廃すべきだと勧告した。

 欧米などの先進諸国は、勤務時間外や勤務場所以外の政治活動は自由である。公務と私生活を区別せず、全面的に政治活動を禁止し、反すると刑事罰を与えているのは、日本だけといわれる。今回の無罪判決は、国家公務員法の「政治的行為の制限」に風穴をあけた意味を持つ。

 二人の裁判は「政治的中立性を損なう恐れが実質的に認められるか」が、判断の分かれ目だった。厚生労働省の元課長補佐の場合は、その地位を重くみて、「行政の中立的運営に影響を及ぼす」とされ、有罪となった。

 だが、反対意見も付いている。被告が「一市民として行動している」と考え、「無罪とすべきだ」と述べたのだ。同じ政党紙配布という行為でありながら、無罪・有罪と食い違ったのは、説得力に乏しい。

 そもそも公務員を完全に政治的中立とすること自体が、虚構の上に成り立っていないか。法改正も検討するべきだ。

 言論ビラの配布は、表現の自由の一手段だ。政府への批判は、民主主義の栄養分である。国の行方が見えぬ時代こそ、モノを言う自由を大事にしたい。◆◆

 

 っと、あれ?これもカンニング?じゃないよな。しっかし、毎日クンの答案と似てるなあ。でもこれ、いいじゃん。え、他もこのくらいのデキなの?いいなあ、地方紙クラス。ウチの担任してる中央紙クラスはデキが良くないんですよ。クラスの担任代わってくれない?ダメ?やっぱねえ。

 

 

 (ノックの音)はーい。誰ですか?あれ、朝日クンじゃないの。どうしたの?答案出てなかったけど。

 え?今持って来たって?

 あのねえ、読売クンも毎日クンも産経クンもとっくに提出してるよ。3日も遅れてどうするの?休刊日がはさまった?そんなの理由にならないでしょ。

 はいはい、そんなに言うんなら、一応読んであげるよ。 

 

 

◆◆公務員と政治過剰なしばり解く判決(1211)

 評価が7割、疑問が3割、といったところだろうか。

 休日に、身分を明かさずに、支持する政党のビラを郵便うけに配る。同じことをして同じ国家公務員法違反の罪に問われた2人について、1人は無罪、1人は罰金10万円の有罪が、最高裁で確定することになった。

 判決が示した考えはこうだ。

 法律が禁じる「政治的行為」とは、公務員の職務の中立性を損なうおそれが、観念的にではなく、実質的に認められるものに限られる。それは、公務員の地位、職務の内容・権限、行為の性質や態様などを総合して判断すべきである――

 もっともな見解だ。これまで政治的行為は一律に禁止され、刑罰の対象になると考えられてきた。38年前の最高裁判決がそう読める内容だったからだ。

 私たちは社説で、この判例を見直すよう求めてきた。

 公の仕事はもちろん公正・中立に行われなければならない。

 しかし公務員もひとりの国民であり、政治活動の自由を含む表現の自由がある。刑罰をふりかざし、中身を問わずに行動をしばるのは間違っている。

 この当たり前の主張がようやく通った。制約の側に傾きすぎていたはかりを、あるべき位置にもどした事実上の判例変更と受けとめ、歓迎したい。

 だが、すっきりしない点は残る。せっかくの新たな判断基準も適用を誤れば意味がない。

 被告のひとりは厚生労働省の課長補佐だった。判決はこの点をとらえ、ビラ配布をゆるすと「政治的傾向が様々な場面で職務内容にあらわれる可能性が高まり、命令や監督を通じて部下にも影響を及ぼすことになりかねない」との立場をとり、二審の有罪判決を支持した。

 これこそ判決が否定したはずの「観念的」な理屈で、説得力を欠く。「一私人、一市民としての勤務外の行動で、職務の中立性を損なう実質的なおそれはない」とする須藤正彦判事の反対意見の方が常識にかなう。

 そんな問題をかかえるものの今回、最高裁が政治活動の自由を「民主主義社会を基礎づける重要な権利」ととらえ、公務員の政治的行為の禁止を「必要やむを得ない範囲に限るべきだ」と述べた意義は大きい。

 一部の労組活動のいきすぎを理由に、公務員が市民として当然にもっている権利まで抑えこもうという風潮がある。それで世の中はよくなるだろうか。

 私たちが本当に守るべき価値を見すえることの大切さを、事件は教えている。息苦しい社会に、発展や躍動はのぞめない。◆◆

 

 ほお、なかなか個性的じゃないの。エッセイっぽいというか。

 でもねえ朝日クン。もうちょっと具体例を入れた方が良いよ。ちょっと観念的だよね。朝日クンさあ、意見文は意見文らしく、論拠で勝負した方がいいよ。

 それと、繰り返すけど、遅れて出すのはダメだよ。


 

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