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ssh611 愛国督戦隊〜愛国者は自国民(だけ)を撃つ [リテラシー・思考力]

<2013>

 

 「SIGHT」に連載されている高橋源一郎と内田樹の対談で、内田が「督戦隊マインド」ということを言っていました。

 

 ◆◆督戦(とくせん)

 部下を監督・激励して戦わせること。また、後方にいて、前線の軍を監視すること。

 用例・・・「兵を督戦する」「督戦隊」◆◆

 

 人間、誰だって死にたくないです。できれば戦争になんか参加したくない。特にこっちが劣勢の時は逃げたくなります。それを「監督激励」するのが督戦隊のお仕事。「監督激励」って書けば見栄えはいいけど、実態は逃げないように脅すことです。

 督戦隊のお仕事は、前線で戦っている兵士の後ろで銃を持って待機すること。万一、戦線離脱して逃げようなどという兵士がいたら射殺。究極の脅しです。敵に撃たれて死ぬか、逃げようとして督戦隊に撃たれて死ぬか。進むも死、退くも死。そういう状況になりゃ、たいてい前に行きますわ。

 

 しかし、考えてみれば、もし軍隊内で仕事を選ぶことができるのなら、前線よりも督戦隊の方が断然いいお仕事です。後ろで離脱兵だけ狙ってりゃいいんですから。督戦隊員が逃げたら誰が撃つのかな。督戦督戦隊?

 

 

 さて、今の日本は、難題山積みです。経済にしても政治にしても教育にしても全然課題が片付いていない。フクイチも相変わらず危ない状況なのに原子力ムラは利権維持に必死です。被災地の復興も進まない。米軍は世界一よく落ちる輸送機をわざわざ市街地の基地に配備したがっている。外交なんかもうシッチャカメッチャカです。

 こんだけ課題があるのだから、とにかく少しでも何とかしないといけない。

 

 そんな状況であっても、誰が悪いのか言い当てるだけの人間がいます。たくさんいます。

 曰く、公務員はどーたらこーたら。

 曰く、教員はどーたらこーたら。

 曰く、市民運動はどーたらこーたら。

 

 こういうのが、内田樹のいう督戦隊マインドです。


 

 ネトウヨという言葉が発明されてから、どのくらいになるんでしょうか。今じゃ愛国者を自称する有象無象のウヨ君がウヨウヨしています。

 でも、本物の保守派には滅多にお目にかかれません。たいていただの反サヨクか反「反日」。何も保守してません。ただ攻撃してるだけ。

 

 「にほんブログ村」教育論・教育問題カテゴリーに、どう考えても教育ブログとは呼べないネトウヨブログが混じっています。で、珍しい虫か植物でも観察するような気分で時々そういうブログを覗くのですけど、まー彼らは本当に日本人がキライなんですね。中国も韓国もキライなようだけど、「反日」の日本人は本っ当に大っキライなようで。朝日新聞とか日教組とか民主党とか。どれも大した相手じゃないと思うんですけど。

 

 考えてみれば、不思議な話です。

 日本を愛するのであれば、叩くべきは外国でしょうに。アメリカやヨーロッパや中国やその他にこそ憎しみを向けるべきじゃないっすか。

 なのに、自称愛国者は常に自国民を敵に回すんですよ。

 

 かつての左翼系の過激派は「内ゲバ」というのをよく起こしました。簡単に言うと仲間割れ。あさま山荘事件を起こした連合赤軍は「総括」と称して仲間を何人も殺害しました。彼ら彼女らはホンキで革命を起こそうと思っていたらしいんだけど、外なる敵と戦う前に、身内に刃を向けちゃった。

 

 ネトウヨ君って、左翼過激派とよく似てます。敵と戦う前に、まず同胞から消そうとしちゃう。

 革命思想と愛国心は、根が同じなのかもしれません。

 

 

 考えてみれば、愛国心なる概念くらい、国民を分断したがるものはないのかもしれません。

 「愛国心」という言葉を口にしたとたん、一部の人は燃え上がり、一部の人は引いちゃって、一部の人はひどく反発し、残る大勢は「早くおわらねえかな~」と傍観者を決め込む。で、燃え上がる人はそうでない人にやたらと怒りを保つ。もー国民みなバラバラ。

 「分断して統治せよ」とは、反抗勢力を叩く時のもっとも有効な戦略を言い得たものです。一枚岩の団結は強いが、分断されれば弱体化する。

 そう考えると、愛国心という概念は、国を弱体化するマジックワードなのかもしれません

 なにしろ、これを一番口にする人間からして「督戦隊」なんですから。自国民しか撃たないんですから。

 愛国心は自国民を分断し弱体化する。

 

 怖いですな、愛国ってのは。

 

<参考文献>

 季刊誌『SIGHT(ロッキングオン社)

 鈴木邦夫『愛国者は信用できるか』(講談社現代新書)


 

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