ssh623 「とりあえず理系」はダメ [志望理由・進路選択]
<2013>
私の地元では、高2から文理別のカリキュラムとする高校が多いです。
従って、高1で文理選択をするわけです。
ところが、この時期がすごく早い。現任校の場合、9月には文理選択を決めます。
なぜこんなに早いのかというと、行政上の都合です。この時期までに講座数を確定して教員定数を決めないといけない。
中高一貫校なんてシャレたものがあまりないイナカでは大多数の生徒にとって高校入試が人生初の入試です。
その大仕事が終わってわずか半年後には文理選択をする。9月というのは締切ですから、文理選択の準備は6月くらいにはもう始まっているわけです。
文理選択をするには、ある程度の知識と自己分析が必要です。大学学部学科の知識と、自分がどういう方向に進みたいかがいささかわかっていないと、とても文理選択なんてできない。高校入試を終えたばかりのイナカの生徒に、そんなものはあまり期待できません。
高校はいろんな手だてを使います。大学学部学科調べをさせる、適性検査をさせる、進路志望調査をする、面談をする、etc.
最近けっこう厄介なのが、「とりあえず理系」という安直な理系選択者が多いことです。
「とりあえず理系」というのは、やりたいこと・方向性がはっきりしないのなら「とりあえず」理系を選ぶということです。
理系好きのクセに文系となった私のような人間からすると、この選択はあまりに無謀で驚きます。「とりあえず」ってこたあねえだろう、と。
どうも原因は保護者とか塾や家庭教師の先生らしいんです。それも本当に親切心からのアドバイスで。
親切心から「とりあえず」理系を勧める理由としては、次の2つでしょう。
- 理系のほうが就職に有利(と言われている)。
- 理系から文系への転向はできるが、逆はできない(と言われている)。
それそのものは間違いじゃないですよ。でも、世の中、そう甘くはないです。
理系の方が就職がいいというのは確かにそうです。この就職難の時代、就職がいいというのは魅力でしょう。
じゃあ、なぜ理系は就職がいいのか?
理系の勉強をキッチリやり切れる人間が少ないからですよ。
理系の勉強というのは、数学をIIICまでやり、理科を2科目IIの分野までやり、大学入試を突破し、大学の勉強について行って、大学院の修士課程くらいまでは学ぶということです。ここまでやり切れれば、そりゃ有能な人材と評価されますよ。
でも、やり切れるんですかねえ、「とりあえず」で。
ま、たいがいダメですね。まず物理でつまづきます。次に化学。とどめは数学IIIC。
こういうものが好きとか得意とかイヤじゃないとか、とにかく耐性がないと、とても理系商売は務まりません。
じゃあ、文系にシフトすればいいじゃん?
高校教育=受験であれば、それも可能でしょう。でも、残念ながら高校は受験のためだけにあるんじゃありません。
そもそも多くの高校は、簡単に理系から文系への転換(いわゆる文転)を認めてくれません。これは意地悪ではなく、講座編成の都合があるからです。特に公立のばあい、あまり融通は効きません。ましてや、学年の途中で変更したいと言うのは、100%ダメです。
文理選択や教科選択をするにあたって、ごくシンプルな(その割にやらない人が多い)アドバイスを1つ。
翌年度以降の教科書を見て下さい。
理系にしようかなと思うのなら、物理・化学・数学の教科書を。文系にしようと思うのなら、地理歴史の教科書を。見本は各教科の先生の手元にあるはずです。
見てみて、面白そうだなあと思うようなら大丈夫でしょう。
見た瞬間「ゲッ!」と思うようなら、相談した方がいいでしょう。
「とりあえず理系」は、本当にダメですよ。「とりあえず」で頼むのはビールだけで十分です。