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LHR78 国民的◯◯ [ご挨拶&エッセイ]

<2013>


 


 なんか最近、「国民的」ってコピーをよく見ますよねえ。


 国民的アイドルがAKB48。最近活動再開したサザンオールスターズは国民的バンド。2020東京五輪は国民的イベント。


 マスメディアって、ハヤリの同じ言葉ばっかりしつこく使いますね。芸がねえなあ。これがホントの「芸NO界」なんちゃって。


 メディア関係者のみなさん、もうちょっといろんな単語を使って下さいよ。同じ言葉を何度も使ってると、飽きるのも早いし、「こいつらバカかも」と勘ぐられますよ。


 


 それはそうと、「国民的」って、どういう意味なんでしょうかね?手元の辞書によりますと、


 ◆◆国民的(形容動詞) 国民全体に関係するさま。「国民的英雄」など。◆◆


 


 してみるとAKB48は国民全体に関係するアイドルと。承服しかねますな。


 ほんの誇張表現と一笑に付すのがオトナってもんなんでしょうけど、私はこういうことに大人げないのですよ。


 AKBごときが国民的と言うのなら、世の中にはもっと国民的なるものがあるはずです。


 探してみましょう。ニッポンの国民的◯◯。


 


 


<国民的クルマ>


 かつて国民車と言えばスバル360とかトヨタ・カローラなどの安価な小型車のことでした。


 様子が変わったのはバブル時代。1980年代後半から90年代前半にかけてもっともよく売れた「国民的クルマ」はトヨタ・マークII。当時250万円もする大型セダンが全盛期には毎月3万台以上売れました。


 で、2012年に最も売れたクルマはトヨタ・プリウス。その台数は堂々の317,675台。アベノミクスとやらが始まる前の民主党政権下でも毎月3万台近い販売を記録していました。プリウスは車体プラス追加装備で300万円コースのかなり高価なクルマです。


 そのプリウス、多くのオーナーが7年目の車検までに買い替えちゃうらしいです。ハイブリッドカーは大容量のバッテリーを積んでますが、こいつが5年を過ぎるとぼちぼち性能が落ちる(保証期間は5年または5km)。交換が必要だけれど、当然高い。だったらこの際新型に買い替えちゃおうということのようです。リッチなお話で。


 そういえば、かつてのマークIIもモデルチェンジ(4)ごとに新型に買い替えるオーナーが主流でした。デフレデフレと騒がれてはいますが、21世紀の「国民的クルマ」はエコにして意外とバブリーです。


 


 

<国民的スポーツ>

 メディアでよく「国技」と称されるのは相撲と柔道。でも、どっちも競技人口は大したことはない。少なくともサッカーや野球には負けます。(仮に)国技であっても国民的スポーツとは認め難い。

 日本人が一番よくやるスポーツって、もしかして水泳じゃないでしょうかね。野球もサッカーもほとんどやったことがないという人でも、水泳を全然やったことがないということはないでしょう。日本みたいにほとんどすべての小中学校にプールがあって、全員に水泳教育が行われているなんて国、あんまりないですよ。昨今は子どもの体力強化とアレルギー対策に水泳をやらせる親御さんも多いですし。

 この水泳教育強化は宇高連絡船紫雲丸が1955年に起こした沈没事故で修学旅行の小中学生108人が溺死したことから行われたようです。(ssh463「日本の鉄道事故」参照)

 

<国民的映画>

 渥美清が亡くなるまでなら、男はつらつ、じゃなくて『男はつらいよ』シリーズが文句なしの国民的映画でした。何せ毎年1月に新作が公開されて確実に興行益を上げていた。

 ポスト『男はつらいよ』としては『釣りバカ日誌』シリーズが有望でしたが、そこまでには至りませんでした。三國連太郎も亡くなったし。

 長らく製作されていて、しかも毎回ヒットしていると言えば、スタジオジブリのアニメでしょうか。ただ、これはシリーズではないし、肝心の宮崎駿が引退を発表してしまいました。

 長~いシリーズで、毎回確実にヒットして、今後も続く可能性大という映画はあるか?

 ありました。映画『ドラえもん』シリーズです。sshとしては『ドラえもん』を国民的映画と認定したいと思います。

 

 

<国民的テレビ番組>

 国民全体に関係するとなれば、短期的なヒット作ではとても国民的とは呼べません。『水戸黄門』はかなりいい線行ってたと思いますが、残念ながら終了。『NHK紅白歌合戦』も悪くないですけど、年1回だけですしねえ。

 となれば、国民的テレビ番組No.1はやはり『サザエさん』でしょう。

 

 この番組のキーパーソンは磯野カツオです。

 初期の『サザエさん』はかなり乱暴なスラップスティック(ドタバタコメディ)でした。その後キャラクターはみんな更生して品行方正になりました。派手にケンカして物や人が飛んでいたのも今は昔。わがまま跳ねっ返りだったワカメも今じゃすっかり優等生。

 しかし、ただ大人しく心温まるお話くらい退屈なものはありません。平和な物語には毒が不可欠です。

 その毒を一身に引き受けることになったのがカツオです。今やカツオだけが「悪いこと」を働き、波平さんにゲンコツを喰らう。

 『サザエさん』が終焉を迎える時があるとすれば、カツオがいい子になった時でしょう。物語が完全に除菌消毒された時、視聴者は離れていくはずです。

 ところで伊佐坂センセイんとこの甚六さんは、いつになったら浪人生活に終止符を打てるんでしょう。彼って30浪か40浪じゃないですか。これぞ「国民的浪人生」。

 

 なお国民的テレビ番組の次点は、19:00の『NHKニュース』。

 

 

<国民的政治家>

 これは難しいですねえ。何しろ昨今は総理大臣の賞味期限が1年程度と短い。国民的な知名度を持つ息の長い政治家って、あんまりいないんですよ。強いて言えば石原慎太郎あたりだけど、キャリアのうち12年が地方自治体の首長というのは果たしてどんなものか。業績はロクにないし、人間のクズだし。

 故人ではありますが、日本でもっとも知名度の高かった政治家って、実はキム・ジョンイルじゃないっすか?国内政治のニュースが流れない日でも、ジョン様の御尊顔がTVに出ない日は珍しかった。もし彼の存命中に、世界の首相やら大統領やらの顔写真を並べて「この人は誰?」というクイズをやったら、ジョン様の正解率は100%だったんじゃないでしょうか。日本人はジョン様に夢中だったのですよ。

 なお、北朝鮮の人々はジョン様のことを確かにチャングン・ニムすなわち「将軍様」と呼んでいたのですけど、これは別に特別な言い回しではなく、韓国でも目上の人に対してはサジャン・ニム(社長様)とかソンセン・ニム(先生様)とかごく日常的に使っているのです。

 韓流ドラマの吹き替えに「社長様」とか「先生様」とかの訳は使わないのに、ジョン様だけを「将軍様」って訳すのはえこひいきってもんでしょう。そういう点でもやっぱり、日本人にとってジョン様は特別な存在だったのですねえ。

 

 

<国民的テスト>

 小6と中3が毎年受けさせられる全国学力テストは現在はちょっとした国民的イベントです。学力低下を裏付けることが期待(?)されて2007年に再開したものの、1964年のテストよりもむしろ結果は良かった。これで学力低下の濡れ衣も晴れてテストは終わるかと思ったら、何故か翌年からは都道府県対抗ランキング合戦に(断りもなく)すり替わり現在に至っております。順位が低かった自治体の長がキレて妙なことを言い出すのも年中行事化しています。どーせ数字と結果しか目に入らないんだもんね、政治経済の世界のエラい人たちは。

 でも、受験者の数から言ったら、大学入試センター試験こそ国民的テストでしょう。毎年70万人くらい受験しますから。

 ちなみにセンター試験の平均点は常に東京都がトップです。お喜び下さい、東京のみなさん。ま、当然でしょうね。別に東京の教育が立派なわけでも何でもない、単に条件の問題です。イナカの秀才も東京の予備校に行ってますし。

 

 

<国民的英雄>

 ポーランドにはコシチュシュコ(昔の教科書だとコシューシコと表記されてました)という国民的英雄がいます。18世紀末の第2次ポーランド分割に抵抗して戦い、一時はかなりの戦績を収めたということで。

 日本にはそういう戦争にかかわる歴史上の国民的英雄がいません。日清日露で功績を上げた軍人はいましたけど、アジア太平洋戦争の無条件降伏ですっかり霞んでしまった。

 戦争ということだけに限って言えば、何世紀にも渡る内戦をストップして、その後200年以上の内戦ゼロ状態を実現したという点で、徳川家康は類い稀な政治家&軍人だと思います。ただ、彼は確かに偉人ですけど、国民的英雄かと言われると、ちょっと微妙です。

 思うに、国民的英雄って、そのときそのときでコロコロ変わってます。戦前なら山本五十六なんてのは大英雄でしょう。昭和30年代なら力道山あたりでしょうか。その後だと長嶋茂雄ですか。最近は本当に入れ替わりが激しいですね。ホリエモンだって一時は国民的英雄扱いでした。

 してみると、国民的英雄というのは、国民的アイドルと同じようなものでしょうか。AKBは意外と偉大なのかも。


 

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